9.森の古城⑬ 事の経緯は
皐さんと木ノ崎先輩がここに来た理由、それは今朝の出来事から遡って説明された。
事の経緯は俺たちがギルドを出た直後に皐さんたちがギルドにやってきて、そこで学たちと会ったところから始まる。
木ノ崎先輩と鹿央が少し体育祭の時の話をした後、学たちから俺たちがこの古城に向かったというのを聞いたらしいのだが……。
「は!? 皐、あそこにあいつが出るって日向は知ってんのか!?」
話を聞いた後、木ノ崎先輩がギルド全体に響くぐらいの声を上げて皐さんに聞いてきた。
「何よ? 突然大声上げたりして。多分知らないと思うけど……というか敢えて教えなかったし」
「はあ!? お前……お前……」
「ちょ! だから大声出さないでって……ああ、そういうことね……」
「あの……あいつって何ですか?」
2人のやり取りを聞いていた学が皐さんに訪ねてきて。
「あれよ、黒光りしてて素早い身のこなしで動き回るあれ……って冬木ちゃん?」
その“あいつ”について説明しはじめると冬木が異常に怯え始め。
「……それは……名前を出すのもおぞましいです……」
と耳を塞ぐように顔を青ざめさせたところで。
「ああ、思い出した! カサカサだ! あそこの古城ってカサカサが出るんだよ!」
という武井の言葉が止めになり、冬木はその場にうずくまって体をガタガタと震わしていた……らしい。
「ちょ……綾!? 大丈夫!?」
「だ、大……丈……」
「……じゃないね。すいません、この話は……」
「え……うん、そうだね……ごめんね、冬木ちゃん」
「い……いえ……」
そして、カサカサの名を口にした瞬間、冬木が異常に怖がっていたため、この話は終わりかけたらしいのだが。
「ちょっと待て! まだこの話終われねえだろ!」
「はあ? 何でよ? ていうか……あんたもカサカサは苦―――」
「いいから! ちょっとこっち来い!」
と、木ノ崎先輩は皐さんと学を手招きして冬木に話が聞こえないところまで移動して話を再開させ。
「……おい、長谷川とか言ったな」
「は、はい……何でしょうか……」
「日向のチームでカサカサが苦手なやつはいるのか?」
「え……えーとそれは……」
「どっちなんだ! ……ってえな! 急に人の頭引っ張たくな! ぶっ殺すぞごら!」
「急に大声出さないで! 長谷川君ビックリしてるでしょ!」
「だからって叩くことねえだろ!」
「あ、あの……」
「あ!?」
「ちょっと!?」
「ちっ……悪いな長谷川」
「いえ……それでなんですけど、南のチーム、カサカサが苦手なのがいるかはわかんないですけど、それっぽいのならいるかもしれないですね。一応女子も2人いるので」
「え!? そうなの!? 私、てっきり日向君のチームは男だけだと思ってたからカサカサいるのは言わなくてもいいやって思ってたんだけど……」
「おまっ……。カサカサはな、苦手なやつは男女関係なく苦手なんだよ! お前は馬鹿か!」
「はあ!? 豪にだけは馬鹿って言われたくないんですけど!? それに私はカサカサ平気なんだもん! そんな苦手な人の気持ちなんてわかんないし! ほんの悪戯心だっただけだし!」
「あの……2人ともすいませんけど、声が大きくてギルドの人たちがこっち見てるので……」
と、皐さんと木ノ崎先輩の言い合いがヒートアップしかけたところで、学がそう言うと、2人もそれに気づいて若干声を小さくさせる。
「……とにかくだ。もしカサカサ絡みで日向たちに何かあったらどうする気だ? カサカサは雑食。冒険者がカサカサに怯えてる間に群がられて補食されるなんてのも、ごく稀にだがあるんだぞ?」
「うっ……それは多分……大丈夫……だと思う……けど。ほら、日向君って強いし……ね? …………ああもう、わかったわよ!」
その後、木ノ崎先輩の視線に耐えられなくなった皐さんは、後から着いた他のチームの仲間に事情を話し、木ノ崎先輩とともに俺たちの後を追うようにこの古城へとやってきて、戦闘中の俺を見つけたということらしい。
「にしても、ギルドカードに森の古城での救助要請が出された時は流石に私も焦ったけど、無事で良かったよ……」
「全くだ。俺は最悪カサカサにやられてるもんかと……」
「無理言ってバスの運転手さんに飛ばしてもらうように頼んで正解だったね」
「というか、そもそもここに来るまでのバスの本数が少ねーんだよ。まあ、こんなところに来るやつなんて早々いないってのもあるけどよ」
「あは……ははは……」
この話は美穂には言わない方がいいかもな……。
あいつ、相当トラウマになってそうだったし。
……というか、救助要請出したのってきっと美穂だよな。後で礼言っとかないと。
「もう少し遅れてたらやばかったな。……悪かったな日向。皐の馬鹿がこんなところ進めたせいで危うく死ぬとこだったぜ?」
「……あんたに馬鹿って言われると異常に腹が立つんですけど……。でも、今回は本っ当にごめんね!」
皐さんはそう言って両手を合わせて俺に頭を下げる。
「いやいや……まあ、カサカサのことはともかくとして、あんなのはイレギュラーですよ。誰も予測できません」
結局、あの男の正体だとか、何が目的だったのか等は分からずじまいのままである。
あの鍵については何か知っていたみたいだが……。
「そうだね……何者なんだろうね」
「今度顔見たらぶっ飛ばしてやる」
「……で、日向君は動けそうなの?」
「無理っすね。でも、仲間に回復魔法使えるやつがいるんであいつらが戻ってくれば―――」
と、そこまで言いかけると。
「南!」
噂をすれば何とやらである。
外の扉から回り込んできたのか、美穂と晃太と紗奈が走ってやってきたのだが……。
「何やってんの? お前ら」
何故か晃太が紗奈のことをお姫さま抱っこで抱えていた。




