9.森の古城⑪ 隠し通路
▷▷神崎美穂
「南、大丈夫だといいけど……」
南が男を外に蹴り飛ばしてからすぐ、私は加勢に行こうとしていた晃太と疲労状態の紗奈を連れて、肖像画の下の隠し通路の中に突入し、薄暗い階段を急いで下っていっていた。
「……やっぱり俺が加勢しに戻った方が--」
「はあ……はあ……いや……南に任せておこう……。考えなしに……はあ……1人で……突っ込む……馬鹿ではない……はあ……」
「おい、大丈夫か紗奈?」
晃太が戻ろうとした矢先、後ろで紗奈が息をぜえぜえと切らしながら晃太を引き留める。
元々疲労していた上に、紗奈は運動が苦手なので大分辛そうに走っている。
「そうだね。今は南を信じよう。ギルドにも一応救助要請さっきしておいたし、そう簡単には南もやられないでしょ。……それより紗奈、走るの辛いなら待っててもいいんだよ?」
正直、今は南よりも今に倒れてもおかしくない紗奈の方が心配だ。
南が強いのはこの2ヶ月とちょっとでよくわかってるし、ハバネロも一緒なのだ。
何か策もあるって言っていたし、今は心配するよりも信じるしかない。
けど、紗奈は……限界そうかな……?
「ふっ……笑止である……! ……はあ、はあ……寧ろ、これから我の本領を発揮するところである……って、きゃあっ!?」
「ちょ……紗奈!?」
紗奈がいつもの感じで強がりを言っていると、紗奈の足が縺れて転倒しそうになる。
「っと! 大丈夫か?」
「ひゃあああああ!? な、何をするのだ晃太!?」
「お、おい、暴れるなよ」
だが、間一髪のところで晃太が紗奈を抱きしめるようにキャッチする。
おお……晃太もやるねー……。
晃太は紗奈を一旦離すと、その場にしゃがみこみ。
「ほら、おぶってってやるよ。もうフラフラだろ」
と紗奈に背中を差し出す。
「な、ななな何を言っている! 我は無敵! ピンピンしてるわいっ!」
「いや、そういう強がりはいいから。急がないと、ほら早く」
紗奈が顔を赤くしながらわたわたしていると、晃太が真顔で早く乗れよと紗奈に催促する。
「くっ……その……」
「何だよ?」
「おんぶだと……その……胸が……」
「…………」
紗奈の一言で何が言いたいのか察知した晃太は顔を赤らめて黙りこくる。
いや、まあ紗奈の気持ちもわからないでもないけどさ……。
「……紗奈ごめん、今そんなこと言ってる場合じゃないからさっさと晃太におぶさってくれる?本当に急いでるから……」
「しょんな!?」
「ほら! 晃太! ダッシュ!」
「ぐおおおおお! バランスが! 結構走りづらいぞこれ!」
「……はわわわ!」
現在、晃太は紗奈をお姫様抱っこして階段を走っている。
あの後、お互いに恥ずかしがり話が進みそうになかったので、私が「お姫様抱っこすればいいじゃん」と提案して現状に至った。
南がせっかく足止め役をしてくれているのに、いつまでもラブコメみたいな展開をやっているわけにもいかない。
「あ、階段終わるよ、足元気をつけてね!」
しばらく下っていた階段は終わりを迎え、その先は真っ直ぐな一本道が続いていてその先には……。
「よっと……ん? あれは……」
「……扉……だよね?」
道の先には3mはありそうな大きい鉄の扉が設置してあり、近くまで来ると鍵穴を差す場所が1つあった。
「この鍵穴って……」
「試してみるか」
紗奈を降ろしてポケットの中から白い鍵を取り出した晃太は、鍵穴に鍵を差し込む。
「……ダメだ。入るけど回らねえな」
鍵を差し込んだ後、何回かガチャガチャと鍵を回そうと試みるも、鍵はびくりとも回らなかった。
「じゃあこっちの鍵は……」
晃太が鍵を抜いた後、私は南から預けられた黒い鍵を鍵穴に差し込んでみる。
「あ、こっちも入るね…でも回らないか……」
白い鍵同様、黒い鍵も鍵穴には差し込めるのだが、鍵穴を回して解錠することができない。
「うーん、差し込めるってことはこの2つの鍵のどちらかは使えると思うんだけど……」
私は黒い鍵をもう一度鍵穴に差し込んで解錠を試みてみる。
「……うーん、……ってあれ?」
「どうした?」
「いや、よく見たら鍵穴に対して鍵が少し細いような気がして……」
鍵を何回も差し抜きしていると、鍵を横に動かしたときに中で少し余裕があるのか少しだけガタガタ動くので、よく見てみると、鍵穴の横の幅と鍵の横の幅が微妙に違うことに気づいた。
「……お、俺のも同じだな」
晃太が自分もと白い鍵と鍵穴を確認すると、白い鍵も同様に鍵穴に対して横幅が小さいという。
「……2つの鍵を合わせて入れてみれば?」
すると、落ち着きと体力を少し取り戻した紗奈がそう提案してきた。
今は考えるよりまず試してみるのが一番だよね……。
「……晃太、鍵貸して」
「はいよ」
私は晃太から白い鍵を借り、黒い鍵とピッタリになるよう、互いの鍵のエンブレムを外側にして合わせてみた。
「これで……あ! 入った!」
2つの鍵をピッタリ合わせたまま鍵穴に差し込んでみると、見事に差し込むことができ、そのままくるっと鍵を回すと、ガチャッと解錠される音が扉から聞こえた。
「やった! ナイス紗奈!」
「サンキュー紗奈!」
「べ……別にそんな大したことは……」
さっきの動揺からか、素の状態になっている紗奈は恥ずかしそうに、けど少し嬉しそうに顔を赤らめていた。
何この子……かわいいんだけど。
「さ、開けるぞ! ……って重っ!」
晃太が勢いよく扉を開けようとすると、大きい鉄の扉だけあって少ししか動かない。
「じゃあ全員でやってみよっか。“エンチャント・アームズ”!」
私は自分も含め、全員にパワー上昇の支援魔法を掛け、皆で鉄の扉へと手を着く。
「行くぞ! せーのっ!」
晃太のかけ声とともに一斉に扉を押すと、少しずつ扉が開かれていき、人が通れるぐらいの広さまでなんとか開けることができた。
「ふう……」
「……もう……限界……」
私が一息着くと、隣では紗奈がぜえぜえ言って息を切らしていた。
紗奈……そう言えばうちのクラスの女子の中でも特に非力だったような……。
“アームズ”はあくまでもその人個人のパワーを掛け算式で上昇させる魔法なので、元々非力な紗奈は大してパワー上昇しなかったのかもしれない。
……今度からはいざというときのために、“エンチャント”で上昇できる能力幅上げれるように練習しておこう。
扉の中に入ると、そこには六畳程の広さの空間が広がっているだけの殺風景な部屋があり、その中心には一目で宝箱だとわかるものが置かれていた。
「……開けるぞ?」
「慎重にね。何が入ってるかわかんないから」
宝箱の目の前まで来ると、晃太が宝箱に手を掛け、私の言葉に頷きながらそっと蓋を開ける。
「……ドキドキする」
隣で紗奈が少し不安げな表情をしていると、蓋が完全に開けられて中身が露になった。
「これは……!」
「おお……!」
「これって……」




