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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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9.森の古城⑨ 頼むぜ

「……いつから気づいてた?」

「さっき肖像画の方に目線を一瞬だけ向けただろ。その時にな」


 まあ、気づいたというよりは勘的なものと言ったほうが近いんだけどな。


 ……さて、ここからどうするか。

 この状況では、隠し通路を見つけたところであまり意味がない。

 まずはあの男をどうにかしないといけないわけだが、相手は〈ライズ〉を使うレベルの実力者だ。

 まともに戦っても負ける可能性の方が圧倒的に高いし……。


「さて、これを見られた以上、意地でも鍵は渡してもらうぞ」


 男はそう言いながら攻撃体勢を作る。


「させぬわ! “ヘヴンズヘル”!」


 すると、いつの間に詠唱を唱えていたのか、紗奈が“ヘヴンズヘル”を男に向かって放ち、男の足元と上空から闇と光が襲いかかっていく。


「なっ……! 何だこの魔法は!?」


 紗奈の魔法に驚きの表情をする男。

 その間に光と闇に男は挟まれ呑み込まれていく。

 これでやられてくれればいいが……。


「はあ……はあ……今のは少し危なかったぜ……」


 “大音壁”を使ったのか、男の周囲の空間だけ“ヘヴンズヘル”によって巻き上がった砂埃が避けるように舞い上がっている。


 まあ、そんな上手くはいかないよな。

 けど、紗奈のおかげであいつの体力を削ることができた。

 俺は着ている服の中に隠れるように着けているペンダントを取り出してペンダントに付いている紅色のクリスタルを右手で握る。


「ハバネロ!」

『ふむ、いつ来るのかとずっと待っていたぞ』


 俺の声に反応するように、俺の頭の中にハバネロの声が響き渡る。

 そして、クリスタルが光り、そこからハバネロが姿を現した。


「状況は―――」

「わかっている。ずっと感じていたからな」

「なら話は早いな。頼むぜ」

「頼まれた」


 ハバネロは出てくると同時に俺たちの現状を理解し、男の方を見る。

 何故、ハバネロが俺たちの今置かれている状況をわかっているのかというと、ハバネロは俺のペンダントのクリスタルから俺に流れている波動を通して俺の状態や俺の周囲にいる者の気配なんかを感じることができるからである。


「……っ! まさかその召喚獣は!」


 男がハバネロを見て驚いていると、ハバネロは男に攻撃を仕掛けていく。

 そうしてハバネロが男の気を引き付けてくれている間に、俺は美穂の元へ駆け寄り。


「美穂、これ持って晃太たちとあの隠し通路の先に向かってくれ。多分、この鍵が使えるところがあるはずだ」


 そう言って美穂に黒い鍵を渡した。


「でも、南は?」

「あいつを足止めする」

「1人で? それは流石に危険じゃ……」

「大丈夫。策がある。……それに本当は紗奈にも残ってもらおうかと思ったけど……」


 紗奈に目を向けると、魔力の消耗で息切れをしている。

 今日は“ヘヴンズヘル”2発の他に魔法を結構使ってたからな。

 流石に無理させるわけにもいかない。


「あ……あれが四神獣(クロスビースト)、南の朱雀……か……かっこいい……!」


 ……いや、案外まだまだ大丈夫なのかもしれない。

 そう言えば、紗奈には何回かハバネロ見せろってせがまれたことがあったな。

 面倒くさかったから適当な理由つけて断ってたけど。


「はっ……面白え。何で南を守護する朱雀とその契約者がこんなところにいるのかはわからねえが、これはまさかのラッキー展開だ!」


 紗奈の声を聞き、ハバネロの攻撃をいなしながらもニヤリと笑みを浮かべる男。


「おらあっ!」

「ぐぬっ……!」


 ハバネロが神獣とわかっても、気後れするどころかガンガン攻めに行く男。

 ハバネロは今はあることが理由で本来の力を出すことができない。

 このままだと力の押し負けをするかもしれない。


「美穂。俺があいつを城の外まで追いやるから、その間に晃太たち連れて行ってくれ」

「え、でも―――」

「頼んだぞ」


 美穂の言葉を聞かないで、俺はそれだけ言うとなるべく無駄な波動消費はしないよう、出力を抑えつつ“エアロブースト”を発動、さらに足にフォースを纏って男の腹部に思いきり“メテオストライク”をくらわせた。


「ガッ! ……何だと!?」


 一瞬の出来事に反応できなかった男は、もろに俺の蹴りをくらい、俺はそのまま“エアロブースト”の勢いで男を押し込んでいき、窓に思いきり叩きつける。

 窓が割れると同時に、男を外まで追い出し、窓ガラスの破片を体のあちこちにぶつけながらも俺もそのまま外に出る。

 男は1回地面に叩きつけられた後、体勢を立て直して立ち上がる。


「……はあ……はあ、今のは流石に聞いたぜごら……はあ……はあ」


 口から垂れている血を手で拭い、怒りの表情を見せる男。


「はあ……はあ……ふう……」


 くそ、波動を抑えて使ってもやっぱり消費は激しいか。

 ガラスの破片で切った頬の血を手で拭い男を見る。

 あいつも体力を消費しているとはいえ、まだ〈ライズ〉が発動している以上、このままだと俺1人ではどう足掻いても勝つことはできない。

 そう……1人では。


「南」


 ハバネロが割れた窓から出てきて俺の元へ寄ってくる。


 あいつらは……よし、行ったな。


 窓から城の中を確認すると、美穂たちが隠し通路の中へと入っていくのが見えた。


「……どうするんだ? 南」

「……あれやるぞ、ハバネロ」


 目の前の男に勝つ可能性を考えたら、あれを使うしかない。

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