9.森の古城⑦ ビートを刻む男
「―――さて、どうしたもんか……」
休憩を取った後、城内のまだ探索していない場所、3階や地下室などを全員で調べたのだが、鍵が使えるようなところは特に見つからなかった。
3階はこの城の主の書斎らしき部屋や寝室、地下室には何かの物置部屋だったり牢屋だったりがあり、道中でモンスターとも遭遇したりしたが、そこら辺は特に問題なく退治できた。
というわけで、俺たちは再びロビーに戻ってきていたのだが……。
「どうする? 鍵があるってことはどこかで使えるってことなんだろうけど……」
「……あのさ、探索してる時に思ったんだけど、この古城ってダンジョン化して結構経ってるみたいだし、他の冒険者も探索しに来てるはずなんだよね……」
「それがどうかしたのか?」
美穂の話に首を傾げる晃太。
「つまり、既にこの鍵は前にも見つけられて部屋の扉は全て空けられてたんじゃないかな?って思ってさ。何ヵ所か、宝が置いてあったような形跡があった部屋もあったし、もうその鍵は使われていてその部屋にあったものは持っていかれてるんじゃないかな?」
「あー、なるほど」
「ふむ、この城は既に調べ尽くされた後であると……」
美穂の言うことは一理ある。だが……。
「だったら、何で鍵がわざわざ箱に入ってたりしたんだ? もし、美穂の推測が合ってたとして、使った鍵を丁寧に箱に入れたりするか……? いや、そんな几帳面な冒険者もいるかもしれないけどさ」
「うーん……」
俺と美穂が考えていると、晃太が1つの提案を口にしてきた。
「とりあえず、もうちょっと探してみようぜ。まだ探してないところあるかもしれないし」
「って言っても、この城3階建てだったし地下も1階しかなかったから探すところなんてもう……」
「そうそう、こんなとこいても何もないんだから早めに帰るのがおすすめだぜ」
「!?」
突如、俺たちの会話に知らない声が混じってきた。
振り返ると、そこにはキャップを被ったラッパー風の格好をした若い男がズボンのポケットに手を入れて突っ立っていた。
「……誰だ?」
「誰だって、お前らと同じ冒険者ってやつだよ。こんな辺鄙な城にいる時点でよ」
男はヘラヘラとしながらそう言うが、どうも怪しい気がする。
「そうそう、お前らが持ってるその鍵、いらないだろ? 俺が戻しておいてやるからくれよ」
ほら。
「……そんなこと言ってほいほい渡すのはよっぽどのバカかアホなやつくらいだぞ」
チラッと晃太を見ると、さすがのこいつでも警戒しているのか、白い鍵を握りしめて男から視線を反らさないようにしている。
「……大人しく渡しておいた方が身のためだぞ? これからも元気に冒険者をやっていたいならな」
「……渡さないって言ったら?」
俺が男に尋ねると、男は片手を俺たちの方ににかざし。
「……なっ!?」
「……お前らの後ろの壁みたいになるぜ?」
轟音とともに何かが放たれた後、俺たちの横を通りすぎて後ろの壁を破壊した。
それとともに美穂と紗奈が臨戦体勢に入る。
「力ずくってわけか。こんな鍵奪ってどうするつもりなんだ?」
「答える義理はないな」
「……ま、そう言うよな」
俺たちから鍵を奪おうとしてる時点でろくなやつじゃないのはわかってる。
きっと、ろくでもないことに使うんだろうが……。
「……南」
「わかってる。晃太、もう少し待て」
晃太がいつでも戦闘体勢に入れるように右腰のスイッチに手を触れている。
「一応聞いてみるけど、この鍵が何の鍵かわかってるみたいだけど教えてくれる気は」
「ないな」
「ですよねー」
「……さて、鍵を大人しく渡してくれる気配もなさそうだし、心が痛むが実力行使で行かしてもらうぜ」
男は心にも思っていないようなことを言うと、今度は両手をかざし、俺たちにしっかりと照準を合わせるように狙いを定める。
「来るぞ!」
俺のその声とともに、美穂と紗奈が魔法を放つ準備をする。
「“ビートキャノン”!」
そして、男が轟音とともに何かの攻撃を撃ってきた。
「“プロテクト”!」
それを例の如く美穂が“プロテクト”で防ごうとするが。
「くそ、離れろ!」
全員がその場から散らばるように退避すると、その直後に“プロテクト”を破った男の攻撃がそのまま直進し、壁に激突しまた壁を破壊する。
「“変身”」
直後、いの一番に男に向かって走り出した晃太は“変身”を発動し、全身が例の姿に変わると同時に攻撃体勢に入る。
「“サンダーブロー”!」
「おっと、変わった魔法使うなお前」
晃太の“サンダーブロー”を危なげなくかわし、余裕の表情の男。
「この!」
そこを追撃するように、晃太が今度は足に電撃を纏わせ“エレキシュート”を放つ。
「よっ」
だが、それも簡単に避ける男。
「攻撃が直線的だな。動きが速くても避けるのが簡単すぎるぜ、お前の攻撃……っと、危ねえ……不意打ちはずるいぜ」
「ちっ……」
晃太の攻撃を避けた軌道の先に、俺は“火手裏剣”を放ったのだが、これもギリギリでかわされてしまう。
「地獄より這い上がり闇へと引きずり落とせ、“デーモンハンド”!」
「何だと!?」
だが、そこを紗奈が“デーモンハンド”を男の足下に発動させ、無数の黒い手が男の足を掴む。
「南! 晃太!」
「「おうよ!」」
紗奈の声とともに俺は一気にケリを着けるためにレッドモードになって“火炎拳”を、晃太は“サンダーブロー”をそれぞれ男に叩き込む。
が……。
「“ビートウェーブ”!!」
その瞬間、男の全身からものすごい轟音と衝撃波が放たれ、デーモンハンドが破られると同時に俺と晃太はおろか、離れていたはずの美穂と紗奈までも後方に吹っ飛ばされ、全員壁に背中を叩きつけられた。
「くそ……めんどくせえな。ガキだと思って舐めていたが……」
そう言う男の全身からは白いオーラが放たれていた。
……大分やばいなこれ。




