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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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9.森の古城⑤ 例のアレ

▷▷神埼美穂


 南たちと二手に分かれてから、私と晃太は1階を中心に探索をしていた。

 城というだけあって、1階だけでも中々の広さがあって1つ1つの部屋を調べるのに時間がかかって、ようやく最後の部屋に辿り着いたんだけど……。


「なあなあ美穂、ここって食堂か?」

「みたいだね」


 扉を開けると、中には中心に大きな白いクロスが敷かれたテーブルと椅子が置かれていて、天上には埃被ったシャンデリアが吊り下げられていた。


「ここには何もなさそうだけど……」


 食堂を見渡してみると、特に何かあるような雰囲気は感じられない。


「あそこの扉は何だろ?」


 晃太が部屋の隅にある両開きの扉を指差す。


「多分、厨房じゃないかな?」

「調べてみるか?」

「そうだね……調べてみようか」


 食堂と厨房という場所からは何か見つかるような気はしないけど、一応調べてみておいて損はないはず。

 食堂の中を一通り調べた後、私と晃太は両開きの扉を開けて奥へと歩みを進める。


「おお……」

「やっぱり厨房だったね」


 中は私の予想通り厨房になっていて、かなりの広さになっていた。

 食堂の広さを見る限り、きっと多くの人があそこで食事をするのだろう。

 そのためにたくさんの料理を作るためにここまで広い厨房になっているのだろう。


「時代を感じるなあ」


 晃太が辺りをキョロキョロして感慨深そうにしている。

 厨房には、レンガ造りの(かまど)だったりどうやって火をつけるのかわからないようなコンロだったりと、今の時代には見られないような厨房器具がたくさん並べられている。


「うーん……ここも特に何もなさそうだけど……」


 これと言って珍しそうなものもないし、ここは集合場所に戻って南たちを待つのがいいかも。


「ねえ晃太戻ろ……」

「しっ……」


 私が晃太に戻ろうと促そうとすると、静かにしろと言わんばかりに口の前に人差し指を当てる。


「えっ……何?」


 晃太の真剣な顔つきに少し嫌な予感がし、小声で晃太に聞いてみる。


「……何かいる」

「本当に……?」


 半信半疑ながらも私は耳を澄ませながら気配を探る。

 その時だった。


 ―――カサッ―――


 何か悪寒がする音が背中越しに聞こえた。


「……ね、ねえ……」

「出たか……」


 それは、見たものを恐怖に陥れる恐ろしい生物。


「私の本能が振り向かずにこのまま立ち去れって言ってるんだけど……」

「何言ってんだよ? ここには経験値稼ぎの目的もあるって南が言ってたじゃん」


 晃太はわくわくした目でそう言うと、後ろにいるその生物と対峙するように振り向く。

 晃太がこの状態になった以上、私1人で逃げるわけにも行かなくなってしまった。

 覚悟を決め、恐る恐る後ろを振り向いた。

 そこには、黒く光沢するボディに2本の触覚、そして素早く動けそうな6本の足を胴体から生やしたあのGをゴールデンレトリバーくらいの大きさにしたようなモンスター、……カサカサがいた。


「ああああああああ!! やっぱり!」


 その見た目と素早い動き、そしてこっそりと潜み獲物に襲い掛かる習性から多くの人に嫌われ、恐れられるこのモンスター、私の一番苦手なモンスターである。


 もうその見た目で無理! 触覚が無理! 動くときのカサカサと鳴る音が無理!


「“フレイムアロー”! “フレイムアロー”! “フレイムアロー”!!」


 カサカサを見た瞬間に、私は一心不乱に“フレイムアロー”をカサカサに向かって撃ちまくる。


「お、おい、美穂? 落ち着けって。どうしたんだよ?」


 晃太が横で何か言っているけど、そんなのお構いなしに“フレイムアロー”を素早く避けていくカサカサに、ガンガンさらに追撃を撃っていく。

 カサカサは私の攻撃を次々と避けていって……ってどんどんこっちに近づいてきてる!?


「―――白く輝く光、類い希なるその知識―――」

「待て美穂! 何で“グングニル”の詠唱始めてんだよ!?」


 私は無心になって最大火力でカサカサを迎え撃つ準備を始める。

 カサカサは徐々に距離を詰めこちらに歩みよってくる。


「電気を纏いし刃よ、敵を切り裂け! “エレキスラッシュ”!」


 すると、晃太が早口で詠唱を唱え、電気の斬撃をカサカサに放った。

 素早く放たれた斬撃はカサカサが避ける暇なく命中し、そのままカサカサは消滅していった。


「……は。ふう……」


 カサカサが倒されたことで冷静さを取り戻した私は詠唱をやめ、晃太を見る。


「……ありがとうございます」

「ったく、どうしたんだよ急に。いつもの冷静さがないと俺が困る」


 晃太が少し心配そうな顔をしてきた。


「ごめん。カサカサが苦手過ぎてつい我を……」

「頼むぜ。美穂と南が冷静さを失ったらうちのチームやばいんだからよ」


 そう言うなら、晃太も好奇心だけで行動するの控えればいいのに。

 そんなことを思いつつ、カサカサを倒してもらったので何も言わずにとりあえず愛想笑いしとく。


「とりあえず戻ろっか。結局何もなかったし、少し早いけどロビーで南と紗奈待ってようよ」

「それもそうだな……結局モンスターはあれしか出なかったなー……」


 少し残念そうにしている晃太を横に私は厨房から出た。

 そしてその先には……。


「あ……あ……あ……」

「……そういや、1匹いたら30匹はいると思えっていうのもゴキと一緒だって何かで言ってたな」


 私の眼前には、カサカサがそこら中でうじゃうじゃとカサカサ音を建てて床や壁を這っているのが広がっていた。

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