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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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9.森の古城④ モンスターハウスだっ!

 モンスターハウス。

 それは、ダンジョンにおいてモンスターが1フロアにありえないぐらい潜んでいる現象。

 モンスターハウスにおけるモンスターは、冒険者を待ち伏せしてるかのように気配を潜め、冒険者に気がつくと一斉に襲いかかってくるという何とも迷惑なやつらである。

 おまけに、モンスターハウスはランダム的に、そして唐突に現れるので未然に出くわさないようにすることがほぼ不可能で、おまけに冒険者が逃げられないように退路がそのダンジョンの地形を利用して塞がれてしまう。

 というわけで、俺と紗奈がモンスターに気づかれた瞬間、退路を無くすかのように扉の周りに壁が現れ、逃げ道が塞がれてしまった。


「紗奈……」

「わ、我のせいなのか!? 我のせいなのか!?」


 紗奈は自分のせいだと思っているせいなのか、モンスターハウスのモンスターを見てなのか、動揺した表情で俺を見る。


「いや、ちゃんと言わなかった俺が悪い……そんなことより」


 ここがモンスターハウスだと気づいた時に動揺して、すぐに紗奈に言わなかった俺にも落ち度がある。


「こいつら全員倒すぞ! というか、倒さなきゃ出れねえ!」


 こちらに向かってきているゴーレムやブルースライムたちを前に俺はレッドモードになり、戦闘体制をつくる。

 モンスターハウスから逃れられる条件はただ1つ。

 フロア内のモンスターを全部倒すことである。

 数は多いが、幸いにもこのモンスターたちは俺たち2人でもどうにかなる。


「モンスターは俺が引きつけるから、その間に紗奈は詠唱唱えて魔法を打つ準備頼む!」

「りょ、了解した!」


 紗奈は普段はアレだが、戦闘になると素直に指示を聞く。


 普段からこうだったらいいのに。


 そう思いつつ俺はゴーレムとブルースライムの大群に向かっていく。

 そして、走りながら紅蓮の炎を両手足に纏わせて攻撃体制に入る。


「“炎舞(えんぶ)”!」


 まず1匹のゴーレムの懐に入り、胸の中央にあるエナジーコアに蹴りを入れる。

 蹴りが入ったエナジーコアはヒビが入った後、パキッという音とともに割れ、それとともにゴーレムの体が崩れ去る。

 次に、近くにいたブルースライムのスライム状の体に手を突っ込んで、中心部にあるエナジーコアを鷲掴みにして思いきり熱を掛ける。

 すると、スライムの体が蒸発し、エナジーコアも砕け散った。

 そしてまたゴーレム、ゴーレム、ブルースライム、ゴーレム……という風に次々とモンスターを倒していく。

 “炎舞”は、このように炎を纏って殴打を叩き込んでいくのだが、その際に炎が舞うように揺れ動く技なのでこの名前が着いた。

 まあ、言ってしまえば相手の懐に潜り込んでインファイトに持ち込む技なので、相手の攻撃も当たりやすいというデメリットがあるが、ゴーレムは動きが鈍いしブルースライムは単調な動きしかしないので、こういう時にはすごく有能な技である。


「……天より舞い降りしは全てを照らす希望の白、地より這い上がりしは闇へ誘う絶望の黒―――」


 俺がゴーレムたちを引き寄せている間、紗奈が長文詠唱を唱えはじめる。


 ……って、その詠唱はまさか……。


「対極なる力ぶつかりし時、世界は混沌へと導かれる……南、こっちに!」


 足元と正面に向けた杖先から魔法陣を発動させている紗奈が俺に戻るように言ってくる。

 紗奈の体は、高められた魔力によって白と黒が混じったオーラを纏い、金と黒のオッドアイが輝いていた。

 嫌な予感がした俺は、速攻で紗奈のもとまでバックする。


「“ヘヴンズヘル”!」


 直後、モンスターたちの足元と頭上高い位置から、それぞれ黒い魔法陣と白い魔法陣が浮かぶ。

 そして、黒い魔法陣からは黒い闇の力が間欠泉のように溢れだし、白い魔法陣からは白い光が降り注ぐように放たれた。

 この闇と光がモンスターを挟み込むように衝突すると、強大なエネルギー同士の衝突波が巻き起こる。


 何だよこの馬鹿すごい魔法は……。


 “ヘヴンズヘル”が放たれた場所には、モンスターの破片も残すことなくさっぱりとしていて、その向こうにある窓は衝撃波によって全て割れていた。

 そして、退路を塞いでいた壁が消えていく。


「ふう……終わったぞ……ん? 何だ人の顔をジーッと見て。……その、恥ずかしいのだが……」


 一仕事終えたみたいな顔をしている紗奈をジーッと半眼で見ていると、紗奈が顔を少し赤らめる。


「……いや、あんな強大な魔法をレクリエーションの時俺に撃つつもりだったのかーって思ってさ」


 多分、火力は俺の“朱凪”や美穂の“グングニル”より上だろう。

 もしあれをあの時くらっていたら相当ヤバかっただろうな……。


「いや、だから、それは……その……えっと……あ、南、あそこ見て!」


 紗奈が俺の言葉にばつが悪そうにしていると、何かを見つけたのか指を指す。


「ん……あれは……」


 紗奈の指指した先には、光る小さな箱があった。

 箱のあるところまで行ってみると、箱には鍵のようなものは付いていなく簡単に開けられるようになっているのがわかる。


「……何だろ?」

「開けてみるぞ」


 俺は箱を開けて中身を確認する。


「これは……?」

▷▷???


 ああ面倒くせえ……。

 あの人の命令とは言え、こんなところまで来るはめになるとは……。

 さっさと例のもん見つけて帰りてえもんだが……。


 そんなことを思いながら、俺は目の前にあるオンボロな城を見上げる。


 ……ん?何だ?


 城を見ていると、部屋の窓が光ったと思ったら勢いよくガラスが割れ、破片がパラパラと下に落ちていく。


 先客か。面倒くさいことになんなきゃいいが……。


 俺はそう願いながら城の中へと足を踏み入れた。

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