9.森の古城③ 探索
「おお……これは確かに古城だな」
バスに揺られること40分、そして、森の中を歩いて20分。
計1時間の道のりを進んでくると、そこにはすっかり古ぼけ、ところどころがツタに覆われた石壁でできた大きな城が俺達の眼前に現れた。
それを見た瞬間、晃太が目を輝かせて城を見つめていた。
「ふっ……これは、中々の城ではないか……」
興奮を抑えているのか、顔を少し赤らめにやにやしている紗奈は早く中に入りたそうにしている。
「……何か思ってたより不気味かも」
そして、美穂は2人とは真逆にテンションが低くなっている。
「……南、ここってどんなモンスターが出るの?」
「皐さんに聞いた話だと、下級のゴーレムとかブルースライムとかが主らしい。あと、経験値のいいモンスターが一種類いるって言ってたけど」
「モンスター名は?」
「それが何故か教えてくんなかったんだよな。見ればわかるとか言って」
「そっか……」
美穂は一言そう返事すると、少し不安げな表情になる。
……そういえば、水瀬さんがさっき何か言いかけてたな。
もしかしたらそのモンスターについてだったかも。
聞いときゃよかった。
「ま、なんにしてもまずは入ってみようぜ。森は普通の森だし、何かあれば森に逃げればどうにかなるだろ多分」
ましてや、ギルドが承諾したんだ。
危険なことには簡単にはなんないだろ。
ここは、あの時の洞窟と違って昔からあるダンジョンだ。
多分大丈夫だろう。
「よーし、開けるぞ」
「くっくっく……我の冒険譚にまた新たなページが刻まれる……」
晃太が先頭に立って古城の扉を開ける。
ぎいっと音を立てながら扉が開くと、中には大広間があり、その先にはいくつもの扉や2階へ続く階段があり、いかにも西洋のお城という構造になっていた。
「ボロッちいけどやっぱり城って言うだけあって立派なもんだな」
「あれ……この城に住んでた人なのかな?」
美穂が指差す先には、白髪の中年の男の肖像画が壁に立て掛けられている。
「かもな。きっとここで優雅な暮らしとかを……」
「なあなあ、早く探索しようぜ」
「くっくっく……我が血が騒いでおる。きっとこの城には何かとてつもないものがあるぞ……!」
「はあ……せっかちだなお前ら」
肖像画の人物がこの城で優雅な生活をしているのを想像していると、わくわくした表情で急かしてくる晃太と紗奈。
「探索の仕方はどうする? これだけ広いなら二手に別れて探索するのもありだけど……」
「んー……それだと複数のモンスターに遭った時に大変じゃない?」
「そこはどうにかなるんじゃないか?俺と南の前衛組と美穂と紗奈の後衛組で別れればバランス取れるだろうし」
「うーん……私と組まない方が防御が手薄にならない?」
美穂の言うことは一理ある。
うちのチームは、基本的に〈詠唱破棄〉のスキルで“プロテクト”を詠唱なしで完璧に発動できる美穂が防御の要になっている。
だが。
「問題ないだろ。紗奈だって“プロテクト”一応使えるし、俺も自衛手段持ってるし。晃太は丈夫だから大丈夫だろ」
「おい。俺だけ理由おかしくないか?」
「……というわけで、どうする? このまま行くか二手に別れるか」
「そうだね……じゃあ二手に別れてみる? 集合時間決めて時間になったらここに集合にするようにすればいいだろうし」
「お前らは?」
「スルーかよ。ま、いいぜ」
「構わぬ」
ってなると、あとは振り分けか。
「組はどう組む?」
「くっく……我は1人でも構わぬがそうだな……ここは我と」
「じゃあ紗奈1人な。俺達3人で探索するから」
「なっ……! それは非情ではないか貴様!」
「いや、お前が1人でいいって」
「冗談に決まっているだろうそんなの! 最近何だか我に対する扱いが酷くないか!?」
「そうか?」
俺はすっとぼけた顔で答える。
こいつはこの中二病モードの時は勝手にどんどん調子に乗っていく時がある。
だから、素の紗奈の性格に効くようなことをしてあまりヒートアップしないように抑えている、という名目で結構楽しんでいたりする。
「……話進まないから早く決めようよ」
そこで、美穂が呆れたような顔でそう言ってくる。
これも最近の定番と化してきている。
「じゃあ―――」
「……何で南と……」
俺の隣で紗奈がぶつぶつと何か言っている。
さっき俺が本当に1人で行かせようとしていたのを根に持っているのだろう。
あれから話し合った結果、俺と紗奈、晃太と美穂がそれぞれ組んで探索することになった。
理由は単純で、チームバランスと周囲を比較的冷静に見れる俺と美穂が別れてこうなった。
「……さっきからモンスターが1匹も出てこないな」
で、現在は2階に上がってだだっ広い廊下を歩いているのだが、モンスターの1匹も見かけない。
そんなコロコロとエンカウントしても困るが、ここには経験値稼ぎの目的もあるので頃合い良く出てきてほしいのだが……。
「……まさか我に恐れをなしたのか……?」
「なわけないだろ……お、ここ入ってみるか」
紗奈が何か言っていると、部屋の扉が目に入ったので俺は扉のドアノブに手を掛け、静かに扉を開け………そのままそっと閉めた。
「む? どうしたのだ」
紗奈が不思議そうな顔で俺を見つめる。
「……何かいっぱいいた」
「……何が?」
「モンスター……」
「ここには経験値稼ぎに来たのだろう?ならば好都合ではないか」
そう言って、紗奈は俺を押しのけるようにして扉のドアノブに手を掛ける。
「あっ! バッ……!」
紗奈の手を止めようとするが、間に合わず、紗奈が扉を勢いよくバンッと音を立てて開ける。
「……なっ……なっ……」
紗奈が目を見開いて口をパクパクさせる。
部屋の中には、埋め尽くされたかのように2m程の小型のゴーレムとブルースライムがわしゃわしゃといた。
そう、それはモンスターハウスだった。




