9.森の古城② いざ出発!
「じゃあお願いします」
「はい。確かに申請届は預かりました。今日も頑張ってくださいね!」
翌日、ギルドの受付で俺は水瀬さんに申請届を出し、森の古城に行く準備を整えていた。
この申請届は、ダンジョンに潜る際に提出する書類で、行くダンジョンの場所やメンバー、連絡手段と滞在期間予定などを書き込まなければならないのだが、万一申請届を書かないでダンジョンに行ってしまうと、モンスターを倒した時のエナジーコアやドロップアイテムを換金ができないのだ。
この申請届だが、提出しなければならない理由は大きく分けて3つある。
1つ目は、ダンジョンの難易度と行くメンバーの冒険者ランクが吊りあっているかどうかの確認である。
もし、行くメンバーでダンジョンが攻略できないとギルドが判断した場合に行かせないための対策である。
2つ目は、行くメンバーが全員ギルドに登録しているかの確認だ。
名前を書く欄の下に、個人が持っているギルドカードというものに記載されているIDを一緒に書かないと行けないので、名前とIDが一致するかどうかで判断するらしい。
ちなみにだが、不正ができないようにとプライバシーの保護という目的で、ギルドカードのIDは持ち主にしか見えないよう、持ち主の魔力や波動等に反応して表示されるように施されている。
そして3つ目は、ダンジョン滞在中に連絡が取れなくなったり、滞在予定期間を過ぎても帰って来なかった場合、すぐに救助に行けるようにするために連絡手段と滞在期間をギルド側が把握しておきたいということである。
昔はこの申請届は書かなくても良かったらしいのだが、最近の世間はうるさいらしくこういう決まりになったらしい。
「それにしてもどうして森の古城に?」
「先輩に経験値稼ぎに良いよって言われたので」
「あー……確かにそうだね。でもあそこは……」
「どうかしました?」
「いや、何でもないよ。多分わかってるだろうから」
「……? まあ、とりあえず行ってきますね」
「あ、うん。気を付けて行ってきてね」
「はーい」
水瀬さんが言いかけてたことが気になるが、バスの時間もあるので俺は受付をあとにして、入口で待っている晃太たちのもとへと向かった。
「おー南」
「学」
入口付近に着くと、そこには晃太たちと話している学と武井と鹿央、そして須藤と冬木がいた。
「お前らも今からダンジョン行くのか?」
「まあ、そんなとこだな。まだどこにするかは決めてないけど」
「そっか……にしても、お前らがチーム組むなんてな」
体育祭が終わった後、何と赤組で一時的に一緒だった面子がそのままチームを組んでしまったのだ。
きっかけは、須藤が学にその話を持ち込んだことかららしいが……。
「本当は日向も一緒だと良かったんだけどね。あんた結構頭回るタイプだし」
須藤がにっと笑ってそんなことを言う。
「そうか? でもそんなこと言ったら鹿央のがよっぽど切れるんじゃないか?」
鹿央は体育祭の時、特に騎馬戦では周りの状況をしっかり把握して俺たちに的確な指示を出していた。
さらには、中二病という症状を抱えているのにも関わらず、人の言うことには結構素直だし純粋に良いやつでもある。
「そうか? 我としてはヒナタの方が咄嗟の判断力はあると思うのだが……」
そして、割と謙虚である。
「……南、そろそろ出ないとバスが」
「おう、そうだな。じゃあそろそろ行くか」
「日向たちは森の古城行くんだったよな」
「ああ、それがどうかしたか? 武井」
「いや、森の古城って何かの噂聞いたことがある気がしてよ……」
「何だ? もしかして幽霊とかか?」
「いや、そういうんじゃなくてもっとこう身近な感じの……何だっけ?」
首を傾げて考え込む武井。
……っと。そろそろ出ないと本当に間に合わないな。
「悪い武井。そろそろ行くわ。まあ、行ってみればわかると思うし、あとで思い出したら教えてくれよ。その噂が合ってるかどうかの答え合わせとしてさ」
「ああ、わかった」
「南ー!」
既にギルドの外に出ている美穂が早く来いと言わんばかりに読んでくる。
「じゃあな」
俺と晃太は、先に出た美穂と紗奈に追いつくように急ぎ足でギルドを後にした。
その時、冬木が何か言いたそうにしていたが構っている時間はなかったので、後で何を言おうとしていたのか聞いてみるとするか。




