8.体育祭⑭ 昨日の友が今日は敵でも明日はまた友
「くっくっく……遅かったではないか、敗北者よ」
「は? 朝っぱらから何言ってんのお前?」
翌日、体育祭の振替休日で学校が休みなことから、俺は久々にギルドに来ていた。
そして、待ち合わせしていた席に着くと、開口一番で偉そうに腕と足を組みふふんと笑っている紗奈が何か言ってきた。
晃太と美穂も既に着いて席に座って苦笑いしている。
「何を惚けている……? 昨日の体育祭にて、貴様は我が白き一団に負けたではないか」
昨日の体育祭、結果から先に言えば優勝は白組だった。
前の日から大合戦が始まるまでに稼いでいたポイント数の多さからそのままほぼ勝ち逃げの形での優勝だった。
2位は青組で、2日目は俺たち赤と抜き抜かれを繰り返すような激しい争いをしていたのだが、最後の大合戦で木ノ崎先輩が2回撃った“流星群”と、俺を見つける前に黄組の大将を倒していたらしく、大量得点を獲得し白組と僅差まで持っていってた。
そして、我が赤組はそんな白と青に追いつくこともできず3位で終わり、緑と黄が続くような順位となり、1日目の中間順位のまま体育祭は終わりを迎えた。
「確かに白どころじゃなく青にも負けたけど、そんなことで敗北者呼ばわりかよ」
俺は平然としてそう言った。
別に悔しくないと言ったら嘘になるが、いちいちこんなことで紗奈に突っかかっても時間を無駄に消費するだけだ。
「ふっ……強がらなくてもいいぞ。悔しいだろう? 素直になっても良いのだぞ? 泣いてもいいのだぞ?」
…………。
「ふっ……紗奈こそ素直になったらどうだ? 鹿央のフォースにビビってたって。何があったのかはわかんねえが、お前顔から血の気引いてたもんな」
俺が鼻で笑ってやると。
「ふっ……ふっふ……何を言う……貴様。べ、別にビビってたわけではないわ……」
しどろもどろしながら紗奈がそう返すと、紗奈に追撃をくらわすやつが1人。
「ああ、あいつな。南がいなくなった後ヤバかったぜ。何か、こう何て言うんだろう、あれは―――」
「そそそそ、その話はいいではないか? 晃太……さん? だ、だが、奴も中々の強さだったな。も、もちろん、邪魔さえ入らなければ勝利していたのは我であろうが……」
段々と声が小さくなっていく紗奈。
多分、邪魔というのは木ノ崎先輩の撃った“流星群”のことだろう。
「いや、紗奈あの時「どうしよう……世界滅亡が始まる……」とか言ってなかったっけ?」
「や、やめろぉっ! ……いや、何を言っているのだ晃太。そんなこと言ってな……何をにやついている南? 言ってないぞ? 言ってないからな? ……多分」
「ふーん……」
「……んー……」
俺がジト目気味に紗奈を見ていると、紗奈はどんどん顔が赤くなっていき俯いてしまった。
「勝った……」
「……ねえ」
俺が晃太の天然アシストのおかげで勝利感を得ていると、それまで静かにしていた美穂が口を開く。
「何?」
「昨日は聞きそびれたから今聞くけど、昨日のあれとかあれとかについて説明して」
少し不機嫌そうにそう言う美穂。
昨日邪険に扱ったことを根に持っているのだろうか。
「そうだな。どっから説明すればいい?」
「南が空を飛んできた経緯から全部。後、あの最後のよくわかんないやつ」
「俺の今の奥の手の技をよくわかんないやつって言うのはやめろ。じゃあまずは―――」
俺は、紗奈の攻撃を避けるために“エアロブースト”で咄嗟に壁のてっぺんまで行ってしまったことから、“流星群”をもろにくらいそうになってスキル〈紅蓮の翼〉を使って回避し、そのまま下に着地しようとしてついでに美穂を狙ったこと、そして、“朱凪”の説明について一通りした。
「……とりあえずはわかった。その“朱凪”って技はまだ実戦では扱いづらい技ってことなのね?」
「はい」
“朱凪”は密かに時間がある時に練習してはいるが、まだ実戦で使うにはリスクが大きい技だ。
おまけに、洞窟みたいなところや森林みたいなところで発動させると、天井が崩れてきたり火事になりかねない可能性もあるので使いどころは選ばないといけない。
体育祭の後、皐さんにも“朱凪”のことを聞かれ同じことを説明したら、「割と不便な技だね」と言われた。
そして、
「何か困ったことがあったら言ってね? 豪に何かされたとか、わかんないことあるとか何か聞きたいことあったら気軽に連絡ちょうだい」
と言って連絡先を教えてくれた。
古藤さんも「じゃあ僕のも」と言って連絡先を教えてくれ、2人の連絡先をゲットすることが出来た。
「ま、そのうち使いこなせるようにはしとくさ」
“赤凪”は全方位に攻撃できる高威力の技だ。
使いこなせるようになれば、かなり強力な武器になる。
「……さて、久々のギルドなわけだけども、今日はどうする?」
「どうするも何も……ねえ?」
「……ギルドでこうして揃ったということは」
「ダンジョンだろ!」
どうやら、考えは全員同じらしい。
「よし、それじゃあ今日はどこ行く?」




