8.体育祭⑨ ここからが本番
突然だが、ここで皆のアビリティを紹介しておく。
長谷川学。
アビリティはマジックでコピー魔法を主に使う。
コピーはアビリティに関係なく、コピーが発動できる射程に相手が入ればアビリティをコピーして使用することができる。
ただし、デメリットとしてコピーできる時間は限られていることと、複数のアビリティをコピーしていくと、古い順からコピーしたアビリティが使えなくなるというのがあると学は言っていた。
武井諒。
アビリティは鋼属性のフォース。
自分の体を鋼で覆って固くしたり、武器を生成して戦うスタイルらしい。
須藤茉央。
氷属性のフォースを操る。
俺がアビリティ実習などの授業で見ている感じだと、ガンガン攻めていくスタイルかと思えば、足元を凍らせて相手の動きを封じたり、滑らせることで足元を悪くするなど姑息な手段も使う頭が意外と回るタイプっぽい。
そして、鹿央一。
使うアビリティは、こいつらしいと言えばこいつらしい、現代では珍しくなってきている闇属性のフォースを扱う。
授業ではそんなに目立っていないため、実力はわからないが(というか、俺はこの間までそもそも鹿央がどういうアビリティを使うかすら知らなかった)闇属性は強力な攻撃力を持ち、相性に関しては不利な属性がない。
一応、光属性が相反する属性になってはいるが、互いが互いを打ち消し合うような存在なので、ここに関しては互角な相性と言ったところだろう。
と、皆のアビリティを説明したところで現在の状況だが。
「くそっ……! “バブルショック”!」
「効かーん!」
「“コピー”! “バブルショック”!」
「なっ……!」
敵が放った“バブルショック”という泡が割れる衝撃波で相手にダメージを与える、詠唱要らずの初級魔法を武井が鋼鉄化した体で受けた後、敵の魔法をコピーした学が逆に“バブルショック”で敵のカラーボールを割っていたり。
「“アイスエッジ”!」
「……これじゃ近づけないぞ!」
「誰かこの氷を破壊出来るやつを―――」
「“火手裏剣”!」
「“ダークバレット”」
「しまった!」
「くそ、やられた!」
敵に囲まれたところを、須藤が地面から尖った氷の柱を複数出して牽制したところを、俺の“火手裏剣”と、鹿央の闇属性の弾丸のような攻撃、“ダークバレット”で返り討ちにして敵を着々と減らしていっていた。
と言うのは、アビリティ競技の中でも特にこの大合戦はアビリティ科にはすごく有利な競技で、普段アビリティに関する授業を受けたり、ほとんどが冒険者をやっているアビリティ科の生徒と、アビリティを戦闘なんかではほとんど使わない冒険者の数が少ない普通科では圧倒的な差があるからというのがある。
他の組団を見ていても、その傾向が強く、明らかに戦い慣れしているであろうアビリティ科と思われる人が他の組団の選手を倒していた。
まあすごいぶっちゃけた話、アビリティ科に取って普通科の連中というのは、この競技では絶好の安牌なのである。
『さあ! 盛り上がっている大合戦! あれだけゴミのよう……たくさんいた人が半分以上減り、大乱戦となっています!』
「ふむ……確かに大分人が減ってきているな」
「そうだな、そろそろ気を引き締め直さないと」
「ああ、何せこっからが本番らしいからな、この競技」
人が半分以上減ったことで、フィールド内の空気が一層引き締まる。
半分以上減ったということは、強いのしか残っていないということ。
つまり……。
『そして、残っているのは毎年恒例の……そう! アビリティ科の面々です! 普通科ももっと頑張って欲しいものですが、ここからがこの大合戦の本番と言ってもいいのではないのでしょうか!』
「うるせー! そんなん言うんだったらてめーも参加しやがれ!」
「てかお前も普通科だろうが!」
司会のそんな言葉に退場し、自陣で応援していた普通科の生徒たちの罵声が飛ぶ。
何というか、この学校の生徒って学科問わずに血の気多いやつ多くないか?
そんなことを思いつつ周囲を見渡すと、様子を窺っているのか、さっきまでの大乱戦から冷戦みたく各組団で睨み合いが続いていた。
だがしかし、そんな矢先。
「“ライトニングジャベリン”!」
後方から見覚えしかない多数の光の槍が、俺たち目掛けて飛んできた。
「“アイスシールド”!」
咄嗟に、須藤が俺たちの前方に氷の壁を出して“シャイニングジャベリン”を防ごうとしたが。
「……! 嘘!」
“アイスシールド”は何本かの槍を受け止めると、そのまま破壊され、残った槍が襲いかかってくる。
「任せるがいい。“魔王之手”」
すると、すかさず鹿央が前に出たかと思えば、右手に闇のフォースを纏い、その先からいかつい装飾のようなものが着いた巨大な黒い手が現れ、“魔王之手”と呼ばれたその手を、鹿央はそのまま振り落とし、“ライトニングジャベリン”を全て叩き落とした。
「えっ……」
「いやいや……」
「嘘でしょ……」
「……チートかよ」
味方も軽く引くレベルのその技は、“ライトニングジャベリン”を撃ったであろう人物、あの中二病の紗奈ですら興奮することなく引いたような顔をしていた。
そして、紗奈の後ろにいた美穂や晃太も引いたような……いや、晃太に関してはわくわくしているような顔をしていた。
というか……。
「やっぱり、お前らは来るのな」




