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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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8.体育祭⑥ 先を見据えて

「……で、どうする気だ? ヒナタ」


 木ノ崎先輩先輩から距離を取った後、鹿央がある方向を見ながら聞いてくる。

 多分、こいつは俺の意図に気づいてるんだろう。


「どうする気だと思う?」


 俺が聞き返すと、鹿央はふっと笑った後。


「あそこに乱入するのだろう?」

「ああ」

「……あそこっていうのはもしかしなくても目の前に見える光景のことか?」

「ああ」

「え? 何で?」

「ああ」

「いや、「ああ」じゃなくて!」


 俺の適当な返事にツッコミを入れる学。

 俺たちの目の前に見える光景。

 それは、各組団の騎馬がごちゃ混ぜになって繰り広げられていた大乱戦だった。

 どうやら、木ノ崎先輩とやりあっている間にこうなったらしく、周囲には土煙が巻き上げられ、足元が見えない状況になっていた。

 その中には、白、緑、黄の大将騎馬も参戦していて、大将のハチマキを取らんと他の騎馬たちが奮闘していた。


「あそこに行ってどうする気だ? 残り時間も半分切っただろうし、ポイント稼ぐんだったら、あそこの大将たち狙うなら鹿央なら行けそうな気はするけど」

「いや、狙うのは大将たちにまとわりついた他の騎馬たちだろう?ヒナタ」

「その通り。見ろ、俺たちと同じ考えの騎馬が背後からハチマキかっさらっていってるぞ」


 各騎馬が大将首を狙いに行く中、ハイエナのように背後に潜んで大将首を狙う騎馬を狙ってハチマキを奪う騎馬がちょくちょく見かけられる。


「俺たちもあそこでポイント稼ぎするぞ」

「でもよ、お前が言ってた「古藤さんをあの青組の団長は絶対にうちの団長を狙いに来るからそれに合わせて守りに行く」っていうのはどうなんだよ」

「1回あんなに露骨に狙ってきたんだし、古藤さんなら警戒して木ノ崎先輩に近づかれないにするだろ。それに残り時間もあまりないし、ポイントは稼げるうちに稼いで行くぞ」


 騎馬戦は合計ポイントの高い順で順位が決まる。

 だったら、残り時間の中で大将を守ってポイントを奪われないようにするよりかは、攻めに回って1ポイントでも多く稼いでおいた方が良いはずだ。

 それに、古藤さんのことだ。

 警戒さえ怠らなければハチマキを取られるということは早々ないはずである。


「よし、行くぞ!」


 俺たちはごちゃ混ぜになった騎馬の乱戦の中に身を突っ込んでいき、鹿央はその中でハチマキをひょいひょい奪っていく。


「なっ……!」

「いつの間に!」

「くそがっ!」


 こいつやっぱすげえな……。最早騎馬戦のプロだよプロ。


 中に入って行くように動いてると見せかけている俺たちの騎馬は、ぐるぐると周囲を駆け回ってハチマキを奪えそうな騎馬を探し続ける。

 鹿央の首は、奪ったハチマキがたくさん巻かれカラフルになっていてとても目立っていた。

 そして、このカラフルさに釣られて俺らの騎馬へと向かってくる騎馬が1つ。


「……やっぱり南のいる騎馬だったか」

「……またお前かよ」


 その騎馬の騎手にはもう既に見飽きた顔、晃太が乗っていた。


「何なのお前? 俺のこと好きなの?」

「はは、いやさ、お前が背後に気を付けろなんて言ってたからさ、だったらもう正面から突っ込んだ方がいいのかなって思ってよ」


 そう言いながらも鹿央に視線を向けて戦闘体勢に入る晃太。

 それを見た鹿央は、警戒体勢に入って晃太の様子を窺う。

 というか、そんな適当に言ったこと何で覚えてるんだよこいつ。

 晃太と鹿央は睨み合い、両手を前方で構える。

 そして組み合おうとした時だった。


 ブーーッ―――。


『時間でーす!! 各騎馬は騎馬を崩して自分の陣地に戻ってください!』


 騎馬戦終了のブザーがなり、司会がアナウンスする。


「……よし、戻るぞ」

「おい! 何か一言くらい言ってけよ!」

「何もねーよ」

「ちょ、ドライ!!」


 俺は騎馬を崩した後、さっさと赤組の陣地へと戻っていった。




『―――さあ、集計結果が出ました! 1番多くハチマキを取った組団はどこなのでしょうか!? 結果発表です!』


 騎馬戦が終わり、陣地に戻ると入口に集計係がいてハチマキの回収をしていた。

 騎手が自分が持っているハチマキを渡し、後は結果発表を待つだけだったのだが。


『それでは発表します! まずは同着で4位! 14ポイント獲得の青組と緑組です!』


 ため息が聞こえてくる青と緑の陣地。


『そして第3位は16ポイント獲得、黄組です!』


 黄組から沸き出る歓喜の声。


黄組、今まで競技で3位以上あまり取ってなかったもんな。


『そしてそして! 第2位と栄えある1位の発表です……! ここは同時に発表しちゃいましょうか!』


 この司会の一言で赤と白の陣地から少しの緊張感が漂う。


『それでは発表しましょう……! ……2位白組! 1位赤組です!』


 瞬間、俺の周り……赤の陣地ないから興奮の歓声が聞こえてきた。


『獲得ポイント数ですが、白組が25ポイント、赤組が31ポイントと他の組と差を開いた結果となっていました!』


「鹿央のおかげだな。お前だけで赤の1/3のポイントは稼いでるぞ」

「ふむ、そのようだな」

「え、何その普通の反応、嬉しくないの?」

「何を言う? これでも喜びは感じているぞ」

「じゃあもっと喜びの感情出せよ! この中二病が!」


 テンションのすっかり高くなった学が鹿央の背中をバシバシと叩く。


「中二病というのはよくわからぬが、まだ喜ぶのは早いだろう?」

「え?」


 学がキョトンとしたところで。


『さあ! 本日の全ての競技が終了したところで、今の各組団の総合得点を発表しましょう!』

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