8.体育祭⑤ 衝突の騎馬戦!
盛り上がる歓声、各陣地からの女子たちの応援、そして騎馬戦フィールド内にいる男たちの咆哮。
騎馬戦がスタートした直後、各陣営から多くの騎馬が飛び出していき、さっそくハチマキの取り合いをしている。
この騎馬戦のルールは、ハチマキ1つにつき1ポイントとして数えられ、その合計ポイントを競うものとなっている。
自分のハチマキが奪われた時点でその騎馬は脱落となるが、それまでに取ったポイントは各組団にそのまま加算されることとなっている。
そして、大将が巻いている長ハチマキはポイントが10ポイントで一発逆転を狙えるのだが、逆に大将にハチマキを取られると、加算されるはずの自分の取ったハチマキのポイントが奪われてしまうので、狙いどころは中々難しい。
さて、鹿央率いる俺たちの騎馬だが。
「緑と黄、左右から来てるぞ、どうする?」
「正面をそのまま進み、あの騎馬たちが追いかけてくるのであれば、どちらかに旋回して片方を迎え撃つ。さすれば、もう片方は一瞬でも様子見してくるはずだ」
「「了解!」」
「ヒナタ、あっちの方はどうなっている?」
「まだあまり動いてないな。多分、機を窺ってるんだと思う」
「わかった。……うむ、やはり追ってきたか」
「よし、左に旋回するぞ!」
俺が合図を出した後、左に旋回した俺たちの騎馬は追いかけてきた緑の騎馬に正面から突っ込んでいく。
「なっ……!」
俺たちが旋回して向かって来たことに一瞬驚いた様子の緑の騎馬だったが、すぐに戦闘体勢に入り俺たちと同じく突っ込んできた。
「今だ!」
「甘い!」
「……っ!何だと!?」
そして、緑の騎手が鹿央のハチマキを取ろうと手を伸ばして来たところを、鹿央は華麗にかわし逆に相手のハチマキを奪い取った。
「やったぜ!」
「いや、まだだ」
学が喜んでいると、鹿央は横を振り向いてこちらに攻めてきていた黄の騎馬を見る。
「隙あり!」
そして、一気にこっちまで突っ走ってきた黄の騎馬の騎手が鹿央のハチマキを取ろうと手を素早く動かす。
しかし、そんな動きも読んでいたかのように鹿央は上半身だけ動かしてかわすと、また逆にハチマキを奪い取っていく。
「この我に隙などないわ」
悔しそうにしている黄の騎馬の人たちに捨て台詞を吐いた鹿央を連れて、俺たちはその場から離れた。
「すごいな鹿央、2連続でハチマキ奪っちゃったよ!」
「というか、お前の体幹どうなってんだよ。なんであんな避けかた騎馬の上で出来んだよ?」
「ふふ……日頃の鍛練よ」
一体普段どんな鍛練積んでんだよとツッコミを入れたくなる。
それぐらい、騎馬の上では出来ないような避けかたをこいつはしていた。
「さて……南、あっちの状況は見ているか?」
「ああ、ちゃんと見てたよ」
俺の視線の先には、木ノ崎先輩の騎馬があまり目立たない動きをしているのが捉えられている。
そして、辺りをざっと見渡すと既に全体の騎馬の数は半数くらいになっている。
そろそろ動き出すと思うんだが……。
と思った矢先だった。
木ノ崎先輩の騎馬がフィールドを旋回しながら1つの騎馬へ近づいていく。
「動いたぞ!」
「よし、行くぞ!」
俺の掛け声とともに、俺たちの騎馬は他の組団の騎馬に目もくれることなく、一直線に進んでいく。
「おらあ! 古藤! 死ねやああ!!」
「!? 木ノ崎! くそっ、迎え撃つぞ!」
木ノ崎先輩の騎馬は古藤さんの騎馬に向かっていき、古藤さんのハチマキを奪おうと迫っていく。
「鹿央、頼んだぞ!」
「任された!」
そこを俺たちが背後から迫り、木ノ崎先輩のハチマキに鹿央が狙いを定める。
「……! おい豪! 後ろから来てるぞ!」
「ああ? ちっ……めんどくせえなあ!」
しかし、木ノ崎先輩の騎馬の1人、昼休みに屋上で見かけた時に一緒にいた黒髪の男の人に気付かれ、木ノ崎先輩がこっちを振り向く。
「……赤組の1年か。大将でも守りに来たのか?」
俺たちに話しかけながらも警戒を怠らない木ノ崎先輩。
くそ……直情的な人だと思ってたけど結構冷静な部分もあるのな。
「例えそうだとして、何か問題あります?」
俺の質問返しにふっと笑った木ノ崎先輩は古藤さんのこともしっかり警戒しながらこう返してきた。
「大有りだな。こんなへっぽこ大将守るよりかは点数取りに行った方が賢明だぜ」
「ふむ……そう言うのであれば遠慮なく行かせてもらうぞ」
木ノ崎先輩の言葉にすぐに反応した鹿央は、木ノ崎先輩のハチマキを奪いにかかる。
「はっ! お前いい根性してんな! けどよ、先輩には敬語使えや!!」
鹿央の攻めをかわした木ノ崎先輩は怒りながら鹿央のハチマキを奪いにかかる。
「おっと、失礼した……ではなく失礼しました先輩。しかしここは言ってしまえば戦場。敵同士であれば先輩もへったくれもないと思うのでございますがいかがでありましょうか?」
「……へっ。それもそうだな後輩! じゃあ俺も遠慮しねえからよ……後でどうなっても文句言うんじゃねえぞ!!」
こんなやり取りをしながらハチマキの奪い合いをする鹿央と木ノ崎先輩。
そこに後ろからひっそりと木ノ崎先輩に近づく古藤さん。
木ノ崎先輩のハチマキに手を伸ばし、奪おうとするが、
「おっと! へっぽこらしく姑息な手を使ってくるじゃねえか! お前の相手はこいつが終わったらしてやるから、そこで指加えながら見とけや!」
「くっ……木ノ崎め……」
古藤さんの動きに気づいていたのか、木ノ崎先輩は古藤さんの手を叩いて振り払い、鹿央の相手を続ける。
しかし、古藤さんもめげずに木ノ崎先輩のハチマキを狙い攻撃を仕掛けていく。
「ちっ……!! うざってえ! どっちもぶっ殺してやる!」
挟まれての攻めに怒りが激しくなっていく木ノ崎先輩。
鹿央の手を振り払いながら、古藤さんの手を避けていく。
そんな中、俺はあるものを見つけ……。
「鹿央、一旦引くぞ!」
「む、何故だ?」
「いいから!」
俺の言葉に何か意図を感じることが出来たのか、鹿央はわかったと頷き、俺たちは木ノ崎先輩の騎馬から距離を取った。
「あ!? 逃げるのかこの野郎!」
「戦略的撤退ってやつですよ! 古藤さんも出来ればハチマキ取られないように動いててください!」
「なっ! 待ちやが……古藤! てめえも逃げんのかよ!!」
古藤さんも俺の言うことに何かも感じたのか、すぐに木ノ崎先輩の騎馬から離れていく。
「てめえら! 顔は覚えたからな!」
俺はそんな木ノ崎先輩の言葉を気にとめることなくさっき目に入ったところへと向かっていった。




