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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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8.体育祭④ 企み

 『さあ! これから1日目、午後の部が始まります! 皆様、休息は取れたでしょうか? 午後は熱い競技の目白押し! まずはこれ! 学年別組団対抗男子リレーです!』


 午前の部と司会が変わり、若干テンションの高いアナウンス。

 俺は学と昼を食べた後、少しブラブラしてこの今いるトラックフィールドの中心地点にいた。

 理由は司会が言った通り、男子リレーが始まるからである。


 そして……。


「まさか南と同じ走順なんて思ってなかったな」

「俺もだよ……」


 俺の隣にいる人物もとい晃太は少し驚いた顔をしていた。

 驚きたいのはこっちだっての。


『それでは位置について、よーい……』


パンッ!


 司会がそこまで言った後、スタート地点の横に立っていた六花先生がピストルを上に向かって発砲しリレーが始まった。




『―――ゴール! 1位は白組です! 続いて赤組と青組もゴール!』


 少し息を切らした状態の俺は、息を整えながら各組団のアンカーたちがゴールしたのを見届けていた。

 結果は、司会が言った通り白組が1位でゴール。

 そのすぐ後に赤組と青組がほぼ同時にゴールし、そのさらに後に黄組と緑組がゴールして1年の男子リレーは終わった。

 さて、俺と晃太が走った時の結果だが、俺の前のランナーが白のランナーに少し差を着けてバトンを渡してきた。

 この時点で、有利なのは俺たち赤組だったが、その後に白のランナーが晃太になった時が問題だった。

 晃太ははっきり言って、同世代の陸上選手と比べても遜色がないくらいには足が速い。

 俺の素の足は遅くないが、精々少し速いくらいである。

 そんな感じで、俺は差があることを糧に抜かされないよう一度もスピードを落とすことなく全力で走り続けた。

 おかげで、その時にトップだった青のランナーとの距離を縮め、差はかなり縮められたが晃太に抜かれることなく次のランナーである学にバトンを渡した。

 この後は、青が少し失速し赤と白が抜くと、勢いに乗った白はそのまま赤も抜き、さっき言った結果になったというわけである。

 そして、2年と3年の男子リレーが続けて行われた。

 3年のリレーでは、青の気合の入りようが何故かとてつもなく、特にアンカーの木ノ崎先輩はトップを維持したままさらに下位と差を着けてぶっちぎりトップでゴールしていた。




『―――さあ! 1日目の最後の種目はこれ!男子騎馬戦だー!』


 リレーが終わり、綱引き、二人三脚をやった後、いよいよ本日最後の種目、男子騎馬戦である。


『午前に行われた女子騎馬戦では激しい争いが巻き起こり、女子たちのあられもない姿を見られるのを期待していましたが、実際には女子たちの本性を剥き出しにした醜い争……ごほん! 素晴らしい戦いでした! さあ、この男子騎馬戦では男子たちの猛った姿を見ることができるのでしょうか!? そして、私を色んな意味で興奮させてくれるのでしょ……ごほん! 失礼しました! さて、選手の入場です!』


 本音と欲望を露にしていた司会に冷たい目が向けられる中、全校男子が各陣地から騎馬戦スタート位置まで歩を進める。

 でもまあ、言ってることはあながち間違いでもない。

 女子の騎馬戦は、それはそれは激しいもので、一部の戦場では「このお!」とか「やろー!」とか「殺せー!」とか物騒な掛け声が聞こえてきて、女子の本性が合間見えたものだった。

 そして。

「くっくっく……我の手にかかればこんな試合すぐに終わっ……お、おい、来るな……こっちに来るな……来れば我の秘められた力が開放されて……や、やめ……やめてください! 調子乗ってすいませんでした! ハチマキ取るのは勘弁して……ああ!!」

 相当切羽詰まっていたのか、本性を露にしていたあいつが半泣きでハチマキを上級生に取られていた。

 あれは色々と傑作だったな。

 そんなことを思って心の中で笑った後、スタート位置に着いた俺は学と武井と鹿央と騎馬を組む準備をする。


「頼むぜ鹿央。お前は赤組のエースと言っても過言ではないからな」

「うむ。任された」


 学の言葉に鹿央はいつも通りの、しかしその中に自信が含まれるようなトーンで返す。


「ま、俺たちも頼りにしてくれよな」

「うむ。勿論だタケイ。お主らは我の騎馬だ。頼りにしないわけなかろう。特にヒナタ、主は前衛で一番周りが見える。頼んだぞ」

「……おう、任せとけ」


 何だろう、今の鹿央はとても頼りになる。

 というのも、こいつ、実はこの騎馬戦をやるまでに出場した全ての競技で活躍していて、赤組1年のスコアラーと化していた。

 そして、練習で見せた騎馬戦におけるこいつの機動力。

 もう、期待しかなかった。

 騎馬を組み終わり、スタートするのを待っている間、他の組団の様子を見てみる。

 各組団にいる長いハチマキを巻いた騎手は、その組の大将であのハチマキを奪えば大きく点数に加算される。

 長いハチマキを巻いているのは各組団の団長で、勿論うちの古藤さんや青の木ノ崎先輩も長ハチマキを巻いているのだが……。

 木ノ崎先輩が古藤さんのことをガン見していた。


 ……ありゃ、古藤さんのとこの騎馬ガン狙いしてきそうだな。


「なあ、ちょっといいか?」


 ふとあることを思いついた俺は、あまり周りに聞こえないように学たちにゴニョゴニョとそれを伝える。


「……わかった」

「……ふむ、了解した」

「じゃ、タイミングは日向に任せるぞ」


 各々が俺の言葉にそう返した直後、司会が元気よくアナウンスした。


『さあ、では行ってみましょう! 本日最後の種目、男子騎馬戦開始です!』

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