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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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8.体育祭③ 屋上の盗み聞き

『―――只今を持ちまして1日目、午前の部を終了致します。午後の部は13:30よりスタートしますので、それまでに選手の皆さんは各陣地に集合していてください。尚、購買、食堂は一般の方にも開放していますので混雑する恐れがあります。マナーと譲り合いを心掛けて利用されるようお願い致します』


 時計が12時を回った現在、進行役の放送委員のアナウンスとともに昼休憩になった。


 1年の女子リレーが終わった後、各競技は順調に行われて特に問題もなく進行していった。

 ダイジェスト的に振り返って行くと、3年の女子リレーでは、アンカーを務めた皐さんが1位だった青の選手を抜いてそのままトップでゴール。

 玉入れでは、白組の晃太が9割方投げた玉を入れていて得点が高くて焦ったが、我が赤組は何と鹿央が百発百中と言っていいレベルで玉をジャンジャン入れていき、高得点を取った。

 大縄跳びでは、紗奈が引っ掛かりまくっていて白の点数が低かった。

 借り物競争では、美穂がなんなく紙に書かれていたであろう〈黒渕の眼鏡〉をゲットしてゴールしていたのに対して、俺が手に取った紙に書かれていたのは〈水着〉だった。

 見た瞬間に、「は?」という言葉が思わず出て数秒固まった後、俺は探し回ったあげく、最終的には皐さんの友達の水泳部の人に、渋々と渡された水着の入った袋を持ってゴールした。

 当然、最下位だった。

 あのお題を考えたやつを殴りたいという衝動と、恥ずかしい気持ちと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら皐さんの友達に水着入りの袋を返した借り物競争だった。


「南、昼どうする?」

「俺は弁当あるから適当な場所で食おうかと思ってたけど。学は?」

「俺も弁当。けど、親が作って持ってくって行ってたから取りに行ってくるわ」

「そっか。武井と鹿央は?」

「俺は学食で食ってくる」

「我も食堂である」

「お、じゃあ一緒に行こうぜ」

「いいだろう」

「じゃ、俺たちは食堂行くからまた後でな」


 武井はそう言うと、鹿央と一緒に食堂へ向かっていった。


「で、俺たちはどこで食べる?」


 学の問いに俺は少し考えて、


「……屋上だな」

「わかった。じゃあ俺弁当取ってくるから先行っててくれ」


 学が観客席側へ消えていくのを見届けた俺は、屋上へと向かって歩き始めた。

 屋上を選んだのは、もしかしたら晃太たちがいるかもしれないと思ったからである。

 まあ、体育祭とは言え今は敵同士。

 もしいたら一緒に食べようというわけではない。

 ちょっとからかってやろうと思っただけだ。

 特に紗奈を。

 チームを組んでからわかってきたことだが、紗奈は自分が明らか不利な状況な時やいじられすぎてふてくされる時なんかはあの大人しそうな感じの本性が姿を表す。

 別に人をいじるのはあまりやる方ではないが、紗奈に関してはいじってるとたまに面白くなるのでからかいたくなるのだ。

 と、そんなことを考えている時だった。

 スマホがメッセージの受信のバイブを鳴らし、スマホを取り出す。


「…………」


 画面を開くと、美穂から写真と「いいでしょ(о´∀`о)」というメッセージが一緒に送られて来たのだが……。

 その写真には、美穂と晃太と紗奈を中心に白組のアビリティ科の面々が楽しそうにご飯を食べている様子が写っていた。

 俺はそれを既読スルーし、屋上へ向かう足を少し早める。


 ……別に羨ましくねーし!


 屋上の入口の前まで来た俺は、扉を開けようとしたのだが、


「ああくそ!!」


 扉の向こうで聞き覚えのある怒号が聞こえてきたので、扉にかけていた手を話した。

 めんどくさいことに巻き込まれそうな予感がしたからである。

 そのまま気配を消すようにして扉の窓から屋上をそっと覗くと、そこには案の定というべきなのか、木ノ崎先輩が3年のジャージを来た黒髪と赤髪の2人の男と一緒にいた。


「おい、飯の時ぐらい落ち着けよ豪」

「全く、豪は全然変わんないな」

「うっせーな! ほっとけよ!」

「はあ……どうせ、青が今3位なのが気に入らないんだろ?」


 そう言って一息つく黒髪。


「ああ! それもあるけどな……。まあ、1位の緑と2位の白は明日には抜けるはずだからそこまで問題じゃねえ。気にくわないのは赤だよ」

「赤がどうかしたん?」


 赤髪の言葉に少し間があった後、


「古藤の野郎だよ。へっぽこのくせに団長なんかやりやがって。おまけにへっぽこが率いる団が俺の率いる青と抜かし抜かされの勝負になるなんてな……! 皐の野郎も得点稼ぎの要みたいな感じになってるしよ!」

「……いや、組団編成なんてそもそもどっこいどっこいになる作られてんだし。それに団長って誰がやったところで競技自体の結果ってそんな影響なくない?」


 赤髪のごもっともな正論に俺が頷いていると、木ノ崎先輩は機嫌悪そうに、


「んなことはわかってんだよ! 俺は古藤が気にくわねえんだよ!」


と叫ぶ。

 それを聞いた隣の2人は呆れ顔で手元の弁当を食べる。


「……何やってんだ南」

「……何も」


 そこへ、いつの間に来てたのか、俺の背後にいた学が声を掛けてきた。


「入んないのか?」


 屋上を指差す学に俺は首を横に振って、


「何か取り込み中みたいだし教室で食おうぜ」


と言って、階段を降りていく。


「取り込み中? 確かに何か叫んでるような気がしたけど」

「いいから気にすんなって。ほら」


 俺は屋上に入ってあの先輩たちと変に関わるのがめんどいと思ったので、学を引っ張るようにしてその場を後にした。

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