6.中二病でも謝りたい!③ 建前と本音
▷▷日向 南
「南は教室で待っててね」
「え?」
放課後になり、俺と美穂と晃太は廊下で福山を屋上に呼んだことを聞いたところで、美穂にそう言われた。
「何で?」
「南見たら福山さんまた逃げちゃうかもしれないでしょ?」
「……まあ、それはそうかもしれんが」
「とりあえず、話してみてからじゃないと何も進まないし、すぐに連絡入れるから」
「ま、俺と美穂に任せとけって」
「……わかった。じゃあ頼んだからな」
晃太はともかく、美穂ならどうにかはしてくるだろ。
こうして、俺は屋上へ行った美穂と晃太を見送った後、一人教室へと戻った。
▷▷福山 紗奈
来てしまった……。
放課後の屋上は、誰もおらず下のグラウンドから部活の掛け声がよく響いている。
「くっ……大丈夫。我はシャイニングダーク。光と闇を統べし者。このくらいへっちゃらだい」
ガラッ―――
自分を鼓舞させていると、屋上のドアが開き神崎さんともう一人、背の高いかっこいい男子がやってきた。
確か……Ⅱ組の人だっけっか。
「ごめん、遅くなっちゃった」
神崎さんは近づいて来ながら両手を合わせて謝ってくる。
「くっくっく、問題ない。我も今しがた到着したところ……」
「初めまして、俺は隣のクラスの結城晃太。よろしく!」
「ふっ、我はここでは福山紗奈と通している」
何この人……すごい爽やかスマイルなんだけど! 逆に怖いんだけど!
「……で、我をここに呼び出した理由を聞かせてもらおうか」
私は平静を保った振りをしつつ、本題に踏み込む。
もし、何かされそうになったら魔法ぶっぱなして逃げよう。
「そうだね。実は―――」
「はっはっは! 何てな! 我をここに呼び出した理由などわかっておるわ! 我を陥れようたって、そうはいかぬわ!」
やっぱり無理! 聞くのが怖い! もし、またあの時みたいに拒否されるようなこと言われたら……!
「陥れる?」
しかし、神崎さんは私の言葉に首を傾げ、キョトンとしている。
「くっ……はははっ!」
そして今の状況を見て笑い出す結城晃太君。
「にゃ…にゃにがおかしい!」
しまった! 噛んでしまった!
「あはは……あー、ごめんごめん。南が言ってたのってこういうことか。……多分だけど、福山さん美穂に屋上に呼び出された理由で何か勘違いしてるんじゃない?」
「勘違い? 何を……! 2人は私のことを疎ましく思った日向南に頼まれて報復しに来たんじゃ……!」
私がそう言うと、2人は顔を見合せ、少ししてから、
「「ふっ……ははははっ!!!」」
と噴き出して笑う。
「ははは……違うよ、福山さん。何で私たちが南の報復しないといけないのさ……ふふ」
なん……だと……! 違うというのか!
「え……じゃあ、何で……」
「そう! 福山さんってもう誰かとチーム組んでたりするの?」
ん? 何でそんなこと聞いてくるんだろ?
「……我は孤高の身。誰かと組むなどということはありえぬ…」
……まあ、ただのぼっちなだけなんだけど。
「そうなの?」
神崎さんの言葉に私は頷く。
「そんな……」
すると、神崎さんは落ち込んだ様子で肩を落とす。
「……え?」
何で残念そうにしてるの?
「んー……一応聞くけど、誰とも組む気はないの?」
「うむ」
そもそも組んでくれる人いないだろうし……。
「そっかー。いや、俺たちさ、福山さんのことチームに誘いたくて来てもらったんだよね」
「ふっ、残念だっ……え?」
今何て言った?
「でも、誰とも組む気ないならしょうがないか……」
「……ワンモアプリーズ?」
「え?」
「今のとこ……もう一回聞かせて」
「だから、俺と美穂と南のチームに福山さんも誘いたくて、どうかなって聞こうとしてたんだけど、誰とも組まないならしょうがないって---」
「……いいのか? 我を誘っても」
「むしろ福山さんがいいから誘ってるんだよ」
「我は日向南を避けていた……。やつ……じゃなくて、日向君は良いって言ってたの?」
「大丈夫だよ。むしろ、南は福山さんにそのこと話そうと思って話しかけてたんだけど……何だか福山さんを怖がらせちゃったみたいで、ごめんね?」
「まああいつ目付きちょっとばかし悪いからな。でも、すごい良いやつだぜ?」
……そうだったんだ。だから……なのに私は……。
「ごめんなさい!」
「「え?」」
私が頭を下げると二人は戸惑ったような顔をした。
「何で福山さんが謝るの?」
「わ、私、日向君が怖くて避けてたわけじゃないの……。まあ、その、目付きが怖いっていうのは少しあったかもしれないけど……。私、本当はずっと日向君に謝りたくて……」
「謝る?」
「うん……あのレクリエーションの時、思わずテンションが上がっちゃって……それで本気の魔法放ちかけて、未遂で済んだけど……。でも、危険な目に合わせたのには変わりないからそれが申し訳なくて……」
顔を俯かせてそこまで言うと、言葉が途切れてしまった。
今、二人がどんな顔をしているのかわからないし、顔を上げようにもどこか怖くて上げることができない。
「何だ……そういうことだったのか……」
すると、神崎さんが一息ついて安心したような声でそう言った。
「……え?」
思わず顔を上げると、そこには神崎さんと結城君の優しい表情があった。
「それなら、南今教室にいるし謝ってきたら? 別に怒ってないし許してくれると思うよ」
「でも……」
それでも、少し怖いかもしれない……。
「大丈夫、俺たちも一緒に行くから」
「……ありがとう」
二人とも優しいな。この人たちなら……。
「でもその前にだ。福山さん、俺たちのチームに入ってくれないか?」
結城君がにっこりと笑って私に聞いてくる。
「……くっくっくっ、我が名は福山紗奈。またの名をシャイニングダーク! 神崎美穂、結城晃太、そして日向南……その三人のチームに加わってやろうではないか! ぜひともお願いします!」




