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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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4.影の謎② クロキモノ

「一昨日、お前らが戦ったあの“影”みたいなモンスターな。俺も色々と調べたんだが……その時にこれを見つけたんだ」


 師匠は懐から付箋がページの間に貼ってある古びた本のようなものを取り出す。


「このページにな、あの“影”と思われることが記されてたんだが……」


 師匠は付箋が貼ってあるページを俺たちに見せてきた。


「……何て書いてあるんだこれ?」


 そのページには、ミミズがのたうち回ったような古文で習うような字らしきものが書かれていた。


「……やっぱり読めないか。しょうがない、俺が読んでやる」


 こんなの読める高校生なんて早々いねーよというツッコミを我慢し、俺たちは師匠の言葉に耳を傾ける。


「―――クロキモノ、目覚メシ時、世ガ災厄ニ包マレル前兆也(なり)。クロキモノ、姿現セシ時、災厄始マリケリ。クロキモノ、出デシ時、災厄降リカカリ世、闇ニ包マレケリ。クロキモノ、(まこと)ノ姿見セシ時、世ノ終ワリ(さぶら)フ。……と、ここには書かれている」

「このクロキモノっていうのがあの“影”ってことか?」

「多分な。ほれ、ここ見てみろ」


 師匠が次のページをめくると、そこには黒い人の形をした何かから人々が逃げているような構図の挿絵が描かれていた。


「……確かに、あの“影”に似てるな」

「これが俺たちが戦ったやつってことなの?」


 晃太の問いは師匠は首を横に振る。


「いや、そこに関しては断定はできない。確かに姿形は似ているが、あの“影”がここに記されているこのクロキモノだと決めつけるには確定できる要素がなさすぎる。それに……このクロキモノがあの“影”の正体だとしたら弱すぎる」

「……どういうことだよ?」

「いいか? このクロキモノっていうのが姿を現した時に災厄が訪れるって書いてあるが、これは災厄を予知してこのクロキモノが現れるのか、それともこのクロキモノ自身が災厄そのものなのかはこの文献だけじゃわかんねえ。だが、最後の『真ノ姿見セシ時、世ノ終ワリデ候フ』って部分からするに、こいつには世界を危機に及ぼす何かしらの力があると考えられる。あの“影”は不気味なところや謎な部分こそ多くとも、俺が見た限りじゃそんな力があるようには思えなかった」

「まあ確かに、倒せなかったとは言え俺らが追い詰められるようなモンスターが世界を終わらせるっていうのはあまり考えられないな」

「そういうことだ。……だが、クロキモノではないと言いきる根拠もない。お前らは特に体感しただろうが、あの“影”、途中で図体がでかくなって力も上がったって言ってたよな? 俺も、その姿自体は仕留める時に確認したが」

「ああ、晃太があいつのエナジーコアに雷属性の魔法で攻撃した直後に突然な」

「そこだよ」


 師匠はそう言って古びた本をペラペラとめくる。


「お、あったあった。このページにはクロキモノのことについて書かれていてな。このクロキモノは光を発するものが弱点らしい。さらに、この心玉……つまりエナジーコアだな。一撃で仕留められなければ怒り狂うと記されている」


 師匠が、ページに書いてある字を読みながら俺たちに説明すると、しばらく口を閉じていた美穂が口を開いた。


「……あの、つまり、あの“影”はこの文献に描かれているクロキモノであるっていう可能性もあるということですか?」

「平たく言えばそういうこと。だから、あの洞窟は一般冒険者は立ち入り禁止。しばらくはギルド側が調査するってさ」

「そっか……」


 まあ、よくわかんない危険な可能性のやつが出たところだし、他にも何かあるかもしれない。

 当然と言えば当然か。


「でだ、これはギルド側に頼まれたことなんだが、このことは出来れば内密にしてほしいんだと。ま、色々と不透明な状況下で、こんなことが世間に広まったらめんどくさいってところだ」

「りょーかい」

「わかったぜ!」

「わかりました」

「……よし、じゃあ、もしこの話がどっかに漏れていたらお前らの誰かが喋ったってことになるから気を付けろよ。特に晃太」

「ちょ、何で俺だけ!?」

「お前が一番口滑らせそうだから」


 それは激しく同意する。


「というか、こんなところで話してたら普通に誰か聞いてそうなんですけど……」


 美穂はガヤガヤしているギルド内を見渡して師匠に言う。


「大丈夫。周りには俺たちがどんな話をしているのかわからないし、そもそも俺たちがここにいること自体、ほとんどのやつがわかってないから」

「え? どういうことですか?」


 美穂が何を言っているんだろうみたいな顔をする。

 まあ、そりゃそうなるよな。


「どうせ、風景同化の術辺りでも使ってるんだろ」

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