4.影の謎① たらればの話
「ホンッットにごめんなさい!!」
翌日、学校が終わった後、俺と晃太と美穂は昨日の師匠との約束でギルドに来ていた。
……のだが、そこで水瀬さんに一昨日のことでものすごい謝られていた。
「いいですよ、無事だったんだしそれに水瀬さんが悪いってわけでもないでしょ?」
今回の出来事の原因は調査員の報告をギルド側が勘違いしたことが発端である。
水瀬さんもギルド側の人間なので、ギルドの責任ってなればあれだが、水瀬さんはあくまでギルドが許可したことを冒険者に公開しただけなので、別に責める気もないし、そもそも責めようもない。
「でも、私が日向君たちにあの洞窟進めてなかったら行くこともなかったかもしれないし……」
「いや、でも結局は水瀬さんがあの洞窟のダンジョンの情報掲示板に貼ってるの見てたら行ってた可能性もあるわけだし……」
「そうそう、気にするこたあないぜ。優ちゃん」
「あ、師匠」
「服部先輩!」
水瀬さんがものすごく申し訳なさそうな顔をしててどうしようかと思っていると、俺たちの後ろの方から師匠がやってきた。
ちなみに優というのは水瀬さんの下の名前である。
師匠と水瀬さんは、高校の時の先輩後輩の関係だったらしく、仲はそれなりに良いらしい。
「たらればの話なんてしてたらキリねえぞ。起こってしまったことはしょうがない。こいつらは無事に帰ってこれた。それでいいじゃねえか」
「でも……」
「でももへったくれもねえって。受付のお姉さんがそんな暗い顔してたら冒険者の気分も暗くなっちまうぞ」
「……うう」
水瀬さんが俺たちの方をちらっと見る。
「そうですよ。受付ならにこっと笑顔でいなきゃ! な、南?」
「そうだな。それに本当に俺たち気にしてないですから。な、美穂?」
「まあ、そうだね……」
「そ、そう? 結城君たちがそう言うなら……」
「そうそう、南たちも大丈夫って言ってるんだしこの話はおしまい! この件は俺が昨日クソ所長にがっつり言っておいたから。優ちゃん、まだ途中だった仕事あるだろ。そろそろ戻った方いいんじゃないのか?」
師匠は水瀬さんが片手に持っている何か資料らしきものの入ったファイルに目をやる。
「は、はい……。じゃあ、私はこれで。皆、本当にごめんね」
水瀬さんは最後に両手を合わせながら俺たちに謝った後、自分の仕事に戻っていった。
「……さて、とりあえずあそこの席にでも座るか」
師匠は一息ついた後、近くにあったテーブル席を指差し、俺たちはその席へと座った。
「で、俺たちを呼んだってことは一昨日のダンジョン関連のことなんだろうけど」
「お、さすが南。話がスムーズに進みそうだ」
「いや、このくらい誰でも予想着くだろ……」
「ま、その前にだ。美穂ちゃん、悪かったな、大変な思いさせちまって。あのダンジョンを調査していた者たちの代表として謝らせてくれ」
「え? あ、いや、大丈夫ですよ。南と晃太のおかげでだいぶ助かりましたし」
二回続けて大人に頭を下げられてさすがに戸惑っている美穂。
確かに、完全にこっちが被害者側とは言え、こうも謝られると対応に困るもんだ。
でも……。
「というか、俺たちも巻き込まれてる側なんだけど……」
なぜ、美穂だけが謝られてるんだ。
別に謝って欲しいわけじゃないし、師匠たち調査員の人が悪くないのはわかっているが腑に落ちない。
「いや、お前らはロックドッグに追いかけられて逃げてるうちに迷いこんだんだろ? その状況だったら、半分ぐらいは自業自得だろ」
う、それは腑に落ちる。
「ちょ、師匠、俺たちに厳しくないすか?」
「うるせ、というか、話だとロックドッグをおびき寄せた原因の元は晃太らしいじゃねえか。お前は少し反省しろ」
「うっ……、何も言えない……」
そう言って顔をひきつらせる晃太。
まあ、こいつが大声出さなければロックドッグをおびき寄せることもなかったし、迷うこともなかったかもな。
……でも、もし俺たちがあそこで迷ってなかったら美穂はどうなっていたのだろうか……?
……ま、たらればの話だ。考えても仕方ないか。
「―――あ? ここの3人でチーム組んだ?」
俺が考え事をしていると、師匠が少し驚いた様子でそう言った。
どうやら、晃太が話したらしい。
「そう、結構良いチームだと思わない?」
「良いも何も、お前らに美穂ちゃんはもったいないんじゃねーか?」
この師匠、前からわかってたけど俺らに対して辛辣というか何というか……。
こういうときは絶対に良かったなとか言わないんだよな。
「美穂ちゃん。ホントにこいつらとチームでいいのか?」
「はい。むしろ私から頼んだので」
美穂がそう言うと、師匠はさらに驚いた顔をするが、美穂の顔をしばらく見て、
「そうか。こいつら、しがないやつらだけど実力だけは同年代の中だったらそこそこある方だと思うからよろしく頼むよ」
と、俺たちのことを上げてるのか下げてるのかよくわかんないニュアンスでそう言った。
「はい!」
「……さて。そろそろ本題に入るとするか」




