3.仲間① 職員室にて
「―――全く、入学初日からこんなことになるとは……。本当に身体は大丈夫なんだな」
「はい」
「すみません。昨日、先生に問題は起こさないようにと言われていたのに……」
翌日、俺と神崎は朝のHRが終わった後、ギルドから昨日のことについて連絡を受けたという六花先生に職員室に呼び出され、昨日の状況や健康状態を詳しく聞き出されていた。
「何ともないならいいんだが。……まあ、冒険者としてギルドに登録してる以上、ダンジョンでのトラブルなどは多少は学校側としても仕方のないことだとは考えているし、ギルド側の通達ミスで今回の状況に陥ったというのはわかったんだが、まさか初日からとはさすがに私も予想はしてなくてな。まあ、無事で何よりだったよ」
昨日、回復魔法を掛けてもらったせいもあってか、俺の身体は一晩寝たらすっかり元気になっていた。
さすがに、切られた腕の傷はさすがにまだ少し跡が残っているが。
神崎と晃太も同様で、一晩寝たらすっかりマナが戻ったと言い、ピンピンしている。
若いって素晴らしいな。
「そうそう、俺たちも無事だったわけだし、これでこの話は―――」
「まだ終わりじゃないぞ、結城」
隣にいた同じく呼び出されていた晃太がそう言って帰ろうとすると、六花先生の隣の机の椅子に座っているⅡ組の担任、斉藤 茂先生がそのいかつい見た目通りの野太い声で晃太を制止する。
「今回は、ギルド側のミスということもありこのようなことになったが、今後はなるべくこのようなことがないように頼む。お前らは、冒険者と言ってもなったばかりのひよっ子。それもまだ高校生。親や学校に保護されている立場だということを忘れないでくれ」
斉藤先生は強い目付きで俺たちを見ながらそう言った。
「……ふう、私たちはまだなったばかりとは言え、もう君たちの担任なんだ。怒りたくて言ってるんじゃなくて心配だから言ってるんだ。昨日、家に帰った時も親御さん、きっと心配してたんじゃないか?」
「まあ、そうですね……」
「うちはそうでもなかっ―――うぐっ!」
また話が面倒くさくなりそうな発言をしかけたので、俺は晃太の口を手で塞いだ。
顔を一瞬むっとさせる斉藤先生と、何か言いたそうな顔をした後、また「はあ……」と一息つく六花先生。
そして。
「……B級だそうだ」
と、控えめな声で六花先生はそう言った。
「お前らが戦ったという影みたいなモンスター、おおよその強さだが、ギルドが出したダンジョンの調査員によればB級ぐらいの強さだそうだ」
声に出さずに驚いた顔をする神崎。
「あのモンスター、そんなに強かったのか」
何故かわくわくした様子で笑っている晃太。
……あれでB級クラスなのか。
「話に聞けば、君たちが遭遇する前に調査員たちと戦闘していたらしいし、そのモンスターも多少は体力を消費していたとは思うが、それを差し引いても冒険者なりたてのD級冒険者がB級のモンスターを追い詰めるところまで行くとは、正直言って驚いている」
六花先生の言うところは普通に考えれば最もなところである。
ギルドは冒険者をS~D、とモンスターとダンジョンをS~Eとそれぞれランクで定めている。
冒険者のランクは言わずもがな、モンスターとダンジョンのランクが少々ややこしい。
モンスターとダンジョンのランクの付け方の基準は、冒険者が複数人での場合を想定してつけられている。
例えば、昨日俺たちが遭遇したロックドッグはD級モンスターなのだが、これはD級の冒険者が二人以上で相手にした場合のランクである。ロックドッグを単独で倒す場合、無理することなく倒せるのはC級冒険者並みの実力が必要と言われている。
この例は他のモンスターにも言えることで、モンスターの強さは、単独で戦う場合はそのモンスターのランクよりプラスで一個上のランクと想定して戦わなければならないのだ。
これは、ダンジョンでも言えることで、一人でダンジョン攻略を目指すなら、自分の冒険者としてのランクの一個ランクが下のダンジョンに潜るのが無難とされているのだ。
つまるところ、あの“影”はかなりの強さだったのに、俺たちがほとんど怪我をせずに済んだだけでなく、追い詰めるところまでいったというのは普通に考えれば異常なことなのだ。
「はっきり言っておくと、今回のことで学校側はお前たちに冒険者として活躍することに特に大きな期待を持ってしまっている。それは喜ばしいことだが、だからこそお前たちにはしっかりとした生活を送ってほしい」
先程より、少し控えめな声でそう言う斉藤先生。
「……ということだ。私たちも個人的に君たちには期待せざるを得ない。だからこそ、無理はしないでほしい。それを言いたかったんだ」
少し微笑む六花先生。
そうして、先生との話は終わり、俺たちは自分たちの教室へと戻されたのだった。




