2.影⑪ 残る謎
▷▷▷日向 南
少しガヤガヤとしている広間。
その理由は、ギルドに依頼されてこのダンジョンの調査に来てた調査員の冒険者たちが、この広間について調査していたからである。
この場所のマナの量や岩壁の物質、そして、“影”の砕け散ったエナジーコアの残骸。
俺たちは、“影”との戦闘で消耗した体力などを、調査員の人に回復してもらっていた。
神崎は大量の魔力消費によるマナ不足、俺は切られた腕の傷と波動をそれぞれ、既に回復させてもらい一息着いていた。
一方、晃太は全身を打ったダメージと魔力が空っぽになったことによる神崎よりも深刻なマナ不足で、俺たちより少し離れたところでまだ治療中である。
「……にしても、師匠もこのダンジョンの調査員になってたんだな」
銀色に染まった短髪の頭に、やる気のないように見える気だるげな目、全身のラインがシュッとしてる黒い服に身を包んでいる俺の目の前にいる若い男。
名は服部賢哉。
俺の師匠に当たるような存在の人である。
「まーな。というか、まさかお前たちがここに来てるとはな。ビックリしたぜ」
調査員たちの話によると、本来は、この洞窟全体の調査が終わるまでは他の冒険者を入れるつもりは一切なかったらしいのだが、入口から中層にかけての調査が終わったところでギルドにその報告をしたところ、ギルド側がこれをそこまでなら冒険者たちを入れても大丈夫だと勝手に判断したらしい。
「あのクソ所長、勝手なことしやがって……。まだ被害が最小限だったから良かったものの……」
そう言って「ふうっ」とため息を着く師匠。
すると、神崎が俺の近くに寄ってきて。
「ねえねえ、この人のこと師匠って言ってたけど…」
と言ってきた。
「ああ、俺と晃太に戦闘の訓練とか稽古とかよくしてくれてる俺たちの師匠だ」
「服部賢哉ってんだ。よろしくな、神崎美穂ちゃん」
師匠はにかっと笑みを浮かべる。
「私のこと知ってるんですか?」
「まあ、テレビでな」
「あ……そうなんですね。よろしくお願いします」
神崎はそう言って、師匠に軽くお辞儀をする。
「にしてもあれだな、お前らよくあれを相手にして無事だったな」
師匠は“影”のエナジーコアの残骸に目をやる。
「師匠が来なかったら死んでたけどな…」
「本当に助かりました…」
「いや、むしろ悪かったな、こっちであいつを逃がしさえしなければよかったんだが」
話によると、俺たちが戦った“影”は元々、調査員たちが洞窟の奥の方で見つけ、師匠が応戦したらしいが、“影”は敵わないと見るや否や空間の狭間が出来ていたところに逃げ込んだらしい。
それで、逃走してきた先の空間で俺たちが出会ってしまった、ということらしい。
「で、あの“影”みたいなモンスターって何だったんだ? あんなの今まで聞いたことないぞ」
「さあな。俺もわからん」
俺の問いにあっさりとそう返す師匠。
「今まで色んなダンジョンに足を踏み入れて来たが、あんなモンスターを見るのは俺も初めてだ。古い文献くらいにしか情報が載っていない稀少種か、はたまた全く新しい新種なのか……。ま、それはこれから調べるさ」
「そうなのか……」
「そういうこった。だから、とりあえずここのことは俺たち調査員に任せておけ。晃太が動けるくらいに回復したら外まで送ってやるから」
「まあ、そう言うなら……」
元々、この洞窟から脱出したかったわけだし、俺たちがここで何かできるってわけでもないしな。
その後、晃太が動けるようになった後、俺たちは無事に洞窟の外まで出された。
外はすっかり暗くなっており、既に夜となっていた。
こうして、“影”の正体やこの洞窟についてなど、いくつかの謎を残したまま、俺と晃太、そして神崎の長い長い波乱万丈な高校生活初日は終わりを迎えたのだった。




