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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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2.影⑨ とっておき

 “影”と対峙する南。

 その後ろには晃太が援護できるように待機しており、少し離れた位置に美穂がいた。


「行くぞ」


 南は隙を見せない“影”にあえて突っ込んでいく。

 作戦はこうである。

 まず、光属性の魔法を放つにあたり、美穂いわく「この魔法、とっておきというか、私の詠唱破棄(ノットスペル)じゃ発動できないから、詠唱が必要なの。それも長文の」ということなので、南と晃太が詠唱の間、時間を稼ぐ役目となった。

 しかし、晃太が変身していられる時間が残り少なく、あまり下手には動けないので、南がメインとなって、晃太が援護するという陣形になった。


「“火炎刃”!」


 南は両手で“火炎刃”を発動し、“影”に斬りかかる。

 “火炎刃”の大きさはレッドモードの影響で、少しリーチが長くなり、その攻撃力も増したものとなっている。

 そのタイミングで美穂は詠唱を始めた。


「白く輝く光、類い希なるその知識―――」


 “影”は、前腕にあたる部分を刃の形に変形させ、南の攻撃を迎え撃つ。

 ぶつかり合う南の刃と“影“の刃。

 “影”の図体が怒号の後より大きくなったことで力が上がったのか、南が“影”に押される状況となる。


「稲妻の如く敵を穿て! “サンダーアロー”!」


 そこを、晃太が援護射撃で“影”に向かって、雷の矢を放つ。


「―――勝利を導き出す、その神オーディンよ―――」


 “影”は“サンダーアロー”をもう片方の刃に変形した腕で弾く。


「はああああっ……!」


 南は、“火炎刃”の温度をさらに上げ、その色はさらに紅く増していく。

 “火炎刃”を受け止めている“影”の刃からジュウウと音が鳴り煙が立ち上がる。


「!」


 思わず後ろに退く“影”。


「どうやら、熱いって感覚はあるらしいな」


 にやっと笑う南。

 それは、自分の攻撃も再生されるとは言え、効くという確証を得たことによるものからだった。


「もういっちょ! “サンダーアロー”!」


 晃太は退いた“影”に対して、さらに“サンダーアロー”を追撃で放つ。


「ガア!!」


 避けることも弾くことできずに、“影”に命中する“サンダーアロー”。

 思わず、“影”は叫び声を上げる。


「―――敵を穿ちしその武器、天をも切り裂き日を照らす―――」


 “影”は顔面を晃太に向けて、刃の腕を晃太の方に向かって、振り払った。

 すると、“影”の刃の切っ先から黒い三日月の形をした斬撃が飛び出し、晃太に襲いかかる。


「危ない!」


 美穂が詠唱を中断し叫ぶ。


 ―――やべ、避けらんねえ。


 斬撃のスピードが早く、避けられないと悟る晃太。


 これ死―――


「させるか!」


 しかし、そこで南が晃太の前に現れ、両手の“火炎刃”で“影”の斬撃を防いだ。


「さ、サンキュー南。今のはさすがにヤバかったぜ……」


 冷や汗をかきながらも安堵する晃太。


「神崎! こっちは大丈夫だから詠唱を!」

「う、うん!」


 南の言う通り、美穂は詠唱を再開させる。

 “影”はというと、自分の攻撃が防がれたことよりも、なぜこいつがここにいるという疑問を持った。


「はあ……はあ……咄嗟に“エアロブースト”使ったから波動が……」


 南と晃太は距離的に言えば、かなり離れていた。

 言ってしまえば、“影”が斬撃を飛ばした時点で普通ならばかばいにいく時間がないくらいには。

 しかし、南は“影”が晃太の方を向いた時点で晃太に攻撃が行くと予想し、さらに南が使えるフォースで、自身のスピードを風を纏うことによって極限まで上げれる風のフォース、“エアロブースト”で晃太の前まで一瞬で移動し、斬撃を防いだのだ。

 ただし、この“エアロブースト”は波動の消費量も激しく、今の南ではそう何回も使えないもので、奥の手としてとっておいたフォースでもあった。


「すまん、南、俺を庇ったおかげで波動が……」

「大丈夫だ、まだ何とかな」


 息切れする南、そろそろ魔力が限界の晃太。

 しかしそんなのはお構い無しに、“影”は再び斬撃を放つ。


「くそっ!」


 またしても“火炎刃”で防ぐ南。

 “影”は負けじと斬撃を連続で放つ。

 “火炎刃”で斬撃を防ぐので手一杯の南。

 この状況を打破する方法を考える。


 ―――何か、何か、何か……ダメだ、この斬撃を防ぎながら考えるのは無理だ……!


 すると、晃太が南の後ろで一回深呼吸した後、全身に魔力を溜める。


「“トライドライブ”!」


 晃太がそう唱えると、晃太の全身が光り、晃太を囲むように雷・炎・水属性の球体が表れぐるぐると回り始める。

 そして、晃太は“影”に向かって走り出した。晃太に命中する斬撃は全て三属性の球体が弾いていく。


「あのバカ……!」


 晃太の行動に気づいた時には止められなかった南、舌打ちを軽くした後に残りの波動を絞り出すように溜めはじめた。

 晃太はそのまま“影”に突進し、自分の魔力を全てぶつける。

 “トライドライブ”は晃太の使える雷・炎・水の属性全てを身体に纏い攻撃する魔法でかなりの威力を誇るのだが、その消費魔力も激しい。

 ましてや、魔力がほとんどない状態で放ったので晃太は“影”を吹っ飛ばした後、変身状態が解け、そのまま倒れこんだ。


「もう動けねえ…」


 うつ伏せ状態で呟く晃太。

 しかし、“影”はすぐに体勢を立て直し、晃太に止めを刺そうと攻撃体勢に入る。


「させねえよ」


 南は再び“エアロブースト”を使い、“影”の目の前まで迫る。


「“メテオストライク”!!」


 残りの波動を左足に集中させ、高密度エネルギーの紅蓮に燃え盛る炎を纏わせ、“影”の胴体を本気で蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされた“影”は吹っ飛び岩壁に背中を叩きつける。

 そして。


「―――その光を持って、闇を貫け!“グングニル”!」


 詠唱を終えた美穂がとっておきの魔法、“グングニル”を発動したのだった。

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