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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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2.影⑥ 不敵

 南の全身から、まるで燃え盛る炎のように溢れる紅色の波動はすぐに収まり、そのなりを潜めた。


「神崎、援護頼んだからな」

「う、うん」


 美穂は南の変化に少し戸惑いながらも返事をする。

 この髪と瞳が紅色に染まる現象は、南が朱雀の力を引き出していることが関係している。

 南の波動は朱雀もといハバネロとの契約により、朱雀の力と混じりあって紅色になっている。

 そのため、普段から炎属性のフォースは紅色の火となって現れ、さらに朱雀の力によって、普通の炎属性より強力的なものになっている。

 その影響か、波動を全開に近い状態まで開放すると、この現在の髪と瞳が紅色に染まるのだ。

 晃太は、南のこの姿をその見た目からレッドモードと呼んでいる。

 南は紅色の瞳を光らせながら、晃太と交戦している“影”の元へとダッシュで向かった。


「晃太!」


 南が晃太の名前を呼ぶと、晃太は一瞬だけ南の方を見たあと、南の意図を理解し“影”から距離をとった。


「“噴火(ふんか)……」


 南は右手で拳を握り波動を溜める。


鉄拳(てっけん)”!」


 そして、走っていた勢いそのままに拳を“影”に向かって真っ直ぐ突き出す。

 すると、突き出された拳から火炎放射のように炎が噴き出て、数メートル先にいた“影”に命中する。


「!!」


 しかし、咄嗟に右腕でガードし、そのまま南が放った“噴火鉄拳”を振り払った“影”は、南に向かって鋭い指先で攻撃を仕掛けてきた。


「させるか!」


 そこを晃太が“サンダーブロー”で追撃する。

 だが“影”は晃太にすぐに気づき、今度は左腕で攻撃を防ぐ。

 そして、すかさず攻撃の矛先を晃太に変えて襲いかかる。


「やべっ……」


 避けられないと判断した晃太は、咄嗟にガードする姿勢に入る。


「“プロテクト”!」


 しかし、美穂がすぐに防御魔法で晃太を“影”からの攻撃から守る。

 その隙に晃太は“影”と距離を取って、“影”の出方を伺う。

 そこへ今度は、ハバネロが特効を仕掛けるように“影”に猛スピードで近づき、それに合わせるように南は両の掌に波動を集め攻撃準備に入る。

 “影”は向かってくるハバネロに反応し、腕を伸ばして指先での攻撃で迎え撃つ。

 ハバネロはそれをかわし、“影”の目前まで迫る。

 そして、“影”にぶつかるすれすれのところで急上昇し、“影”は思わずハバネロのあとを追うように上を見上げた。

 その時、“影”の胴体に何かが突き刺さる。


「!」


 “影”は一瞬何が起きたのかわからず、辺りを見回す。

 すると、”影”の正面に距離をおいた南が攻撃をし終わったような動作をしているのが見える。

 南が放ったのは“風手裏剣(かぜしゅりけん)”。

 その名の通り、風のフォースで、風属性の波動を手裏剣状にして放つ技である。

 南は両手から計二発の“風手裏剣”を“放ち、影”に命中させていた。

 今の動きは一種の連携みたいなもので、南と晃太、そしてハバネロはギルドに登録する前からよく一緒に特訓をしていたので、一瞬で相手の思惑を理解し連携をとることが出来る。


「……やっぱりか」


 “風手裏剣”を当てたところを見てそう呟く南。

 “影”の胴体、攻撃を受けた部分はすぐにまるで何もなかったかのように傷口がふさがっていた。

 南は1つ、ずっと気になっていたことがあった。

 こちらの攻撃に対して“影”がダメージを気にする素振りがあまりないことを。

 “影”は、南の方に攻撃の矛先を戻し、猛スピードで近づいていく。

 それに対し、南は“火炎刃”で迎え撃つ準備をする。

 “影”は鋭い指先による攻撃の射程範囲まで近づいたところで、一気に腕を真横に凪ぎ払ってきた。

 南を“影”の攻撃から守るため、“プロテクト”を発動しようとする美穂。

 しかし、それよりも早く南は動き、“火炎刃”で“影”に斬りかかる。


「!!!」


 南は“影”の攻撃してきた腕に斬りかかり、そのまま腕を焼き斬った。

 “影”の腕は攻撃しようとしていた勢いそのままに飛んでいく。

 そして、“影”の懐に入った南はさらに追撃体勢に入った。


「“火炎拳”!」


 炎を纏った拳を“影”のエナジーコアにめがけて拳を放つ南。

 拳がエナジーコアに命中すると、“影”は数メートル後方に吹っ飛んでいった。


「……おいおいまじかよ」


 しかし、吹っ飛んでいった“影”は何事もなかったかのように立ち上がる。

 それだけではない。

 南に斬られた腕も徐々に再生していく。


「嘘……」


 その光景を見た美穂は一抹の不安を覚える。

 もしこのまま戦い続けても、さっきと変わらずにこっちだけが圧倒的に消耗するだけではないかと。

 ダメージを与えても効いたような素振りも見せず、身体を傷つけてもすぐに回復する。

 そんなモンスターは美穂が知る限りでは聞いたこともない。


「……けど」


 ―――ここで諦めるわけにはいかない。今日知り合ったばかりの2人が頑張っているのに。


「“エンチャント・オールアップ”!」


 美穂が魔法を発動すると、南、晃太、そして美穂自身の身体に白く光るオーラのようなものが纏われる。


「……これは!」

「お……何か力がみなぎってきてる?」


 “エンチャント”は付加魔法の一種で、攻撃・防御・スピード等を上げることのできる魔法である。

 その中で、美穂が発動したのはオールアップ。

 身体能力、アビリティの全ての能力を上げるという魔法だ。


「これなら……!」

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