2.影⑦ 見えた糸口
「よっしゃあ!」
晃太が“影”に突っ込んでいき、今度は炎を拳に纏い、それを放つ。
“ファイアブロー”。
さっきの“サンダーブロー”の炎版である。
“エンチャント”によって全体の能力が上がった晃太の攻撃を、“影”はまたしても腕でガードする。
「!」
しかし、さっきよりも威力が増している攻撃に腕のガードは弾かれ、“影”に隙が生じた。
そして。
「くらえ!」
晃太は左脚に電撃を纏わせ、そのまま“影”の胴体に思いきり蹴りを放った。
「!!!」
蹴りをもろにくらった“影”は数メートル吹っ飛び、倒れこんだ。
「やったか?」
「いや、まだだ。あいつ、攻撃を受けても傷を再生するぞ」
「うーむ……厄介だなー……」
いくら攻撃力が上がっても、再生されては意味がない。
そう考えた南は、何か策はないか晃太と“影”の攻防を見ながら考えていた。
呻くような様子もなく普通に立ち上がる“影”。
晃太が攻撃をしたところは既に再生されはじめている。
「……ん?」
しかし、南はそのダメージが再生される様子を見てあることに気がつく。
さっきの“風手裏剣”を受けたときの再生と今の“ファイアブロー”と“エレキシュート”を受けたときの再生するスピードが違うことに。
攻撃範囲やダメージ量によって再生速度が変わるのはもちろんあるのだろうが、“風手裏剣”の時とは明らかに違って再生が遅い。
それも、それぞれ攻撃を受けた箇所の再生速度も微妙に違う。
もしかして……。
1つの仮定が頭によぎった南は、“影”の再生が終わる前に攻撃体勢に入る。
「“噴火鉄拳”!」
噴火鉄拳を放つと、“影”はそれをかわす。
「晃太! 雷属性で攻撃だ!」
「おう! わかった!」
晃太は南の言うことに迷うことなく頷き、両手両足に雷を纏い“影”に立ち向かう。
「はあ!」
晃太が拳を握って“影”に殴りかかると、“影”は攻撃をまたかわす。
「まだまだあ!」
晃太はさらに攻撃を続ける。しかし、“影”は晃太の攻撃を受け止めることはせずに避けていく。
「“火炎拳”!」
そこを、横から南が割って入るように“影”に炎を纏った拳で殴りかかる。
「!」
“影”はさすがに避けられないと判断したのか、腕で南の“火炎拳”を受け止める。
「今だ!」
「どりゃあ!」
一瞬、南に気を取られた隙を見逃さず、南の掛け声とともに晃太の“サンダーブロー”が“影のエナジーコア”にクリーンヒットする。
「!!!!」
エナジーコアに亀裂が走り、“影”は後方に飛ばされながらも足で踏ん張り持ちこたえる。
“影”のエナジーコア周囲には晃太の攻撃が糸を引いているのか、電撃が走るように流れており“影”はエナジーコアを腕で押さえ苦しそうにしていた。
「やっぱりか……」
「やっぱりってどういうことだよ南?」
「あの“影”の弱点だよ。あいつのダメージを再生する速度が属性によって違うことに気づいてな。“風手裏剣”のダメージはすぐ回復したのに俺の炎や晃太の雷属性のダメージの再生は遅かった。特に雷の方がな。だから、あいつは光とか灯りを発している攻撃なら効くんじゃないかって思ったんだけど……予想通りだったな」
“影”はエナジーコアにダメージを負ったせいか再生が上手くできずにもがいている。
「ほえー、よく気づいたな。俺なんてそんなの見てる余裕なかったのに」
「まあ、お前には戦いに集中しろって言ってたし。それより」
南は離れた場所にいた美穂とハバネロを呼ぶ。
「あいつがもがいている今がチャンスだ。行くぞ」
南たちは、反対側の通路に向けて走り出した。
あくまでも脱出が最優先。
“影”が動けない状態なのであればこれ以上戦う必要はないし、得体のしれないモンスターにこれ以上手を出すのもあまりよろしくはない。
そう南は判断したのだった。
さらに言えば、この先が出口に繋がっている保証はどこにもなく、これ以上体力やアビリティの消耗を避けたいというのも一つである。
「ねえ、あれ、放っておいても大丈夫なのかな?」
美穂が走りながら問う。
「大丈夫だろ。多分だけど、このダンジョンで迷ってるの俺たちだけっぽいし、それに俺たちで太刀打ちできるかわから―――!!」
そこまで言いかけた時だった。
後ろからとてつもない邪気のようなものを感じ取った南。
ハバネロも同じく感じ取ったのか表情が強張る。
南が後ろを振り向くと、ずっとエナジーコアを押さえている“影”から黒いオーラが煙のように出ている。そして、
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
高音域の奇声のような、獣声のような、そんな怒号が広間全域に響き渡った。




