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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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2.影② 迫り来る

▷▷


 のっぺらぼうな顔面、腕の先には先端が獣の爪のように鋭い指、コンパスのように細い足、そして、胴体の中心にはエナジーコア。

 影のようなモンスターは姿を現したあと、微動だに動かない。

 南、晃太、美穂の3人はそれぞれ戦闘体制をとり、ハバネロは空高く飛び上がり、モンスターの様子を伺っていた。周囲の空気は張り詰めたようにピリピリしている。


 ―――気味が悪い。


 南は“影”の様子を観察しながらそう思った。

 この“影”から感じられるものが何もないのだ。

 大体のモンスターは、人を見つけると敵意などの類を剥き出しにして来るものだが、この“影”は敵意や殺意といったものを一切放っていない。

 ただただ不気味で悪寒が走る。

 そんな気配を南とハバネロは感じ取っていた。


「……南、どうする?」


 さっきまでの能天気とはうって変わって真面目な表情の晃太。

 普段なら真っ先に突っ走るタイプの晃太だが、今回は目の前にいる“影”の不気味さを感じているのか、晃太も慎重になっている。


「あいつがどういうやつかわからない以上、あまり下手には動かない方が―――!」


 南がそこまで言いかけると、影は3人に向かって猛スピードで突っ込んできた。


 ガッ―――


 鋭い衝撃音が広間に響きわたる。

 それは、南の手から放たれた刃のような形の炎と“影”の鋭く伸びた指がぶつかりあう音だった。

 “火炎刃(かえんじん)”。

 その見た目と、字のままで、炎の刃を形作るフォースである。


「はぁっ!」


 そのまま、“影”の攻撃を弾き飛ばす南。

 “影”は後退し、一旦南らと距離を取る。


「晃太、神崎、あいつの攻撃はなるべく避けろ! 直撃だけは絶対にするな!」


 南の言葉に二人が頷く。

 理由は二人ともすぐに察知した。

 南の右腕が若干震えているのが見えたからだ。

 ガードしただけで腕が震える程の衝撃。

 それは直撃すれば無事では済まない威力であると悟らせるには十分であった。


「また来るぞ!」


 “影”は、再び3人に接近してくる。


「任せて!」


 “影”の攻撃に合わせるように、美穂は両手を前にかざし、魔法陣を展開する。


「“プロテクト”!」


 美穂が魔法を唱えると、六角形の透明がかった黄緑の盾が3人の前に展開され、“影”の攻撃を防いだ。

 詠唱破棄(ノットスペル)

 美穂のスキルの1つである。

 効果は、魔法を発動する際に通常は詠唱が必要なところを詠唱なしで魔法を発動できるというもの。

 “プロテクト”で攻撃を防いだおかげで“影”に一瞬の隙が生じる。


「“疾風波”!」


 その隙を見逃さなかった南は、すかさず風の衝撃波を放ち“影”に命中させる。


「稲妻の如く敵を穿て! “サンダーアロー”!」


 南の“疾風波”で“影”が身体のバランスを崩したところに、晃太が追撃で雷の矢を放つ。

 バランスを崩しながらも晃太の攻撃を避けようとする“影”だったが、避けきれずに“影”の胴体をかすめていった。


「くそ……!」


 攻撃を直撃させられずに悔しがる晃太。


「晃太、あまり熱くなるなよ」


 冷静な声で南は言う。


「……ああ、そうだな、サンキュー南」

「日向君、ここからどうするの?」


 晃太の攻撃がかすってから十数メートル後方に下がった“影”の様子を見ながら、そう訊ねる美穂。


「とりあえず、あの“影”の攻撃射程内に入られないようにすることを先決で行く。あいつの攻撃を直でくらったらゲームオーバーだと思った方がいい」


 さっきの“影”とのぶつかり合いを思い出す南。


 ―――あんな攻撃もろに当たったら重症は確定だな……。


 右手にまだ少しの痺れが残っているのか、グーパーに手を動かしながら南は考える。

 この状況をどう打破していくのかを。


「あくまで俺たちの目的は洞窟からの脱出だ。目的を忘れんなよ、二人とも」

「わかってるって南」

「でも、そのためにはあれをまずどうにかしないと……」

「それなんだよな……」


 そう言って“影”を見つめる南。


「さて、どうすっかな……」

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