2.影① 不気味な
「……はあ。ま、そうだよね。結局、ここの道進まないと帰れない可能性高いし……」
「そうそう! まずは進まないと!」
「それにだ、嫌な気配を感じてから結構時間は立ってるから、進んでも大丈夫かもしんないしな」
「うむ、そうだな。そういったものの気配は全く感じぬからとりあえずは進んでも大丈夫だろう」
それから、俺たちは直進に進みはじめた。
晃太はわくわくしてるような表情、神崎は不安そうな表情をしつつも、俺たちにしっかり付いてきている。
とりあえず、俺かハバネロが何かを感じたらすぐにみんなに知らせて、戦闘体勢に入れるようにすることになっている。
お互いにどういうアビリティが使えて戦闘において何が得意分野なのかというのも確認済みだ。
あとは、なるべくモンスターに出会わないことを願うだけだが……。
「相変わらずモンスターどころか虫一匹も見かけないな」
「そっちのほうが今はありがたいけどね」
洞窟の中は、晃太の言った通り、中に俺たち以外の生き物はいないんじゃないかというくらい静まりかえっていた。
どちらも普通の声量で話しているにも関わらず、晃太と神崎の声は周囲に響きわたり、歩く足音は鮮明に聞こえる。
「……なあ、ずっと気になってたんだけど、神崎、何で1人でダンジョン潜ってたんだ?」
俺はふと神崎に聞いてみた。
俺たちみたいな高校入りたてとかの新人冒険者は、大体は何人かでチームを組んで行動することが多い。
1人で潜るより安全だとか、人数がいた方が攻略しやすいだとか理由は様々ある。
1人で入るやつは、よほど自信があるか、誰も誘えなかったみたいなパターンだ。
まあ、天才魔法少女って言われるくらいだから、多少なりとも自信はあるんだろうけど。
「あー……えーと、私、この町に来たばかりだから、こっちに友達って呼べる人がまだいなくて……」
「でも、今日学校であんだけ人に囲まれてたし、1人くらいは仲良くなったやつとかいるだろ」
「うーん、色んな人に話しかけられすぎてねー……。仲良くなったって言える人はまだいないの。それに、入学式初日から一緒にダンジョン行こうよって誘うのもなんか違う気がするし……。でも、暇だったし1人でもいっかって思ってきたらこれだし。だから、日向君たちと遭遇できてホントに良かったよ……」
「ははは……」
「いやあ、神崎さんも高校生活初日から大変だねー」
「おい晃太、高校生活初日から大変なのは俺たちも変わらないからな」
他人事のように言ってるけど、ここにいる全員が現在進行形で大変な状況だからな。
「……む、あれは……」
ハバネロは何かを見つけたのか、飛ぶスピードを早めて先に行く。
「おい! ハバネロ!」
先に行くハバネロを、俺たちは走って追いかける。
そして、少しばかりの距離を進んだところでハバネロが滞空しているのが見えた。
「おい、急にどうしたっていうん……」
そこまで言いかけたところで、俺は辺りの風景が目に入ってきた。
「なんだこれ……」
「はあ……はあ……走るの早いって、みな……ってうわ、広っ!」
数秒遅れて晃太が追いつき、目の前の光景に驚きを見せる。
「ちょっと……はあ…二人とも、足早いって……って、何ここ!」
少ししてから追いついてきた神崎も晃太と同じ反応をする。
俺たちが驚いた理由。
それは、目の前にある広間だった。
ドーム状に広がっている広間は、野球グラウンドくらいは余裕でありそうだ。
天井の岩肌までの高さもかなり高く、それこそ野球が出来そうだ。
そして、ここに辿り着いたということはもうひとつの意味を表していた。
「とりあえずはこっちの道で正解だったってことか……」
あのループする道から抜け出せたというのはかなり大きい。
これで、外に出られるにしろ、奥に進むにしろ次の段階に進むことができた。
「おい、あっちのほうまた道が続いてるぞ」
晃太が指差す方向を見ると、これまで通ってきた洞窟内と同じくらいの広さの道が続いていた。
「ねえ……少し休憩しない?」
神崎が息を整えながらそう提案してきた。
「そうだなー。走って疲れたし、少しくらい―――」
晃太がそこまで言いかけたその時だった。
「待て。二人とも」
ハバネロが、声色を低くしてそう言った。
ハバネロは警戒心をこれまでより高め、いつでも戦闘に入れるよう体の燃えている炎の勢いを強くする。
くそ、覚悟はしてたけどやっぱり来るか……。
さっき感じた嫌な気配。
それがこの空間に急速に広まっていく。
俺とハバネロが同時に感じたこの気配。
ハバネロがここまで警戒するってことは、正直嫌な予感しかしない。
「2人とも、残念ながら休憩は取れないぞ……」
何もない広間の中心に、黒い影が現れ円形状に広がっていく。
そして、そこから、黒い人のような形をしたのが姿を現し、その胴体の中心には赤いエナジーコアが光っている。
「休憩は……こいつをどうにかしてからだ!」




