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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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1.迷子たち⑦ 冒険者

 洞窟の中を進むにつれて、俺は一つの疑惑を持っていた。

 真っ直ぐ、一本道の洞窟の中を進み続けている以上、あまり考えたくはない疑惑。

 しかし、その疑惑を確定づけるかのように、晃太が周りを見渡しながらこう言った。


「南、ここ、俺たちがさっき通った場所じゃね?」

「晃太もそう思うか……」


 そう。

 今歩いている周囲の風景が、俺と晃太が神崎に出会った、十字路のような別れ道の少し前の風景と同じなのだ。

 同じと言っても、あくまで覚えている記憶の範囲でしかないのだが、同じ場所を通ったような感覚がある。

 デジャヴに近い感覚である。

 俺一人だけが感じたならまだ気のせいだと思えるが、二人同時にそう思ったのなら、その確率はかなり高い。


「え? それって……」


 神崎が不安な表情になる。


「俺と晃太の思っていることが正しければ、この先にあるのは……」


 そこまで言ったところで、この先にあるもの、左右真っ直ぐに別れた道が見えてきた。


「うわー、やっぱり戻って来ちゃったなー」


 余裕のありそうな呑気な声であちゃーという顔をする晃太。


「嘘……真っ直ぐ進んできたはずなのに……」

「……さて、どうしたもんかな……」


 俺は今の状況を頭の中で整理する。

 まだ慌てる段階じゃない。

 四つに別れた道、俺たちが歩いてきた方向を北だとすれば、左は神崎が最初一人で歩いてきた道、右は俺たちが進んできて、一本道だったにも関わらず戻ってきてしまった道、そして直進方向は危険と判断して進むのを避けた道だ。


 ここで問題が一つ生じる。

 それは、俺たちが歩いてきた道が右の道と一本化していることだ。

 俺たちは必死になってロックドッグから逃げてくる途中、何回か別れ道を曲がってきた。

 可能性として、神崎が歩いてきた道を俺たちが気づかないうちに通り過ぎてしまい、十字路のところに再び戻ってきていたというのが考えられるが、これはないと言っていい。

 何故なら、無我夢中で逃げてたとはいえ、別れ道が何本あったかくらいは覚えている。

 そして、逃げてる時に三方向に別れているところは通らなかった。

 つまり、神崎と会った時に、初めてこの場所に来たということになり、今言った可能性はないと言えるのだ。


「ねえ、どうしよう。私たちこのまま帰れないのかな……」


 神崎はさっきから不安な表情のままである。


「神崎はサーチとかみたいな探索系の魔法とかは使えないのか?」


 迷子になってる時点で、使えない可能性がかなり高いが、念のために聞く。

 すると、神崎は即答するように首を横に振った。


「私が使えるのは各属性魔法と回復とサポート系の魔法。探索系の魔法は覚えてないの……」

「そうか……」


 晃太も探索系の魔法は覚えてないし、俺はそもそも魔法は使えないし……。


「とりあえず、左か真っ直ぐか進んでみればいいんじゃないか? ここで悩んでてもしょうがないっしょ」


 俺が策を考えていると、晃太が軽くそう言う。

 そういうと、俺の肩に乗っかってしばらく静かにしていたハバネロが口を開いた。


「……そうだな。晃太の言う通り、ここは進んだ方がいいかもしれん。ただ、行くなら左の道だ」


 まあ、確かにここで立ち尽くして考えるよりは、歩きながら考えた方がいいかもしれない。


「そうだな。左に進んでみるか」

「でも、私が通ってきた時は出れそうな場所はなかったよ」

「まあ、3人と1体で行けば何か気づくところがあるかもしれないし、もしかしたらここから出れる場所見つけられるかもしんないし、行ってみようぜ」


 晃太がそう言うと、神崎は「……わかった」と言い、俺たちは今度は左の道に進んで行くことにした。




「……まじかよ」


 左の道を真っ直ぐ進んできたはずの俺たちは、再び十字路のところへと戻ってきていた。

 これはまじで笑えない。

 どうなってんだよ一体。


「……どういうことなの? これ」

「これ、もしかしなくてもやばい状況ってやつだよな……」


 神崎は困惑しながら頭を両手で抱え、晃太はさすがに余裕がなくなってきたのか、顔が引きつって笑顔がなくなっていた。


 どうする……?

 右に行ってもダメ、左に行ってもダメ、となれば、残りは直進するしかないが……。


「ループしているな」

「……ループ?」

「ああ、今2つの道を通ってきて証拠はないが確信は持てた」

「ループしてるってどういうことだよ?ハバネロ」


 ハバネロに訪ねるとハバネロはおれの肩から離れ、俺の目線の辺りの高さで飛行し、顔をこっちに向けた。


「南、さっきここのダンジョンは最近見つかったものだと言っていたな?」

「ああ」

「ダンジョンは様々な要因が重なってダンジョンと化す。空気中のマナの暴走や環境の変化、そして空間の歪み。このダンジョンは空間が歪んでできた。なら、このダンジョンの空間自体がまだ安定していないとは考えられぬか?」

「つまりどういうことなんだよ?」


 晃太が回りくどい言い方するなよとハバネロに言う。


「……なるほど。大体わかった気がする」

「うーん……私も何となくだけど……」


 俺と神崎がハバネロの言いたいことを理解すると、晃太はまじかよみたいな顔をした。


「要は、ハバネロが言いたいのは、ここの空間自体が安定していないから洞窟内も本来の形を維持していない。つまり、俺たちが結局ここに戻ってきたのはどっちの道もこの道と繋がるように空間同士がくっついていたってことだよ」

「あー……あん? ……わかるようなわからないような……」


 アホみたいな声を出して、呻きをあげる晃太。


「うーん……そうだなあ。例えるなら、ゲームとかで正しい道に進まないと最初のところに戻っちゃう道とかよくあるじゃん。あれと一緒だと思えばいいよ」

「……ああ! そういうことか!」


 神崎の説明でピンときたのか、すっきりした顔の晃太。

 というか、その言い草だと結構ゲームやってそうだな神崎。


「ってことは、真っ直ぐが正解ってことになるのか?」

「まあ、ゲーム感覚でいけばそうなるけど、それはちょっと安直な気が……」


 晃太の単純思考に苦笑いの神崎。

 しかし、晃太の言うことは一理ある。


「どっちに行ってもループなら、いっそのこと多少のリスクはあっても、可能性のあるほうに進むのはありだな」


 俺の意見に、頷くハバネロとそうこなくちゃと言わんばかりの晃太。


「でも……真っ直ぐ行くのは危険だって言ったのは日向君とハバネロだよ?」

「そうだけど、でも、進まないと埒があかないし何よりも……」


そこまで言いかけ、俺は一息溜めてから言った。


「冒険者ならこういうときこそ冒険しなきゃな」

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