第34話 決戦前夜、美しき反撃の準備は整った
私と母は、リュシアンが用意してくれた馬車でベルモンド侯爵家へ向かっていた。どこに父の息のかかった人間がいるか分からないからと、リュシアンも侯爵家も対策を徹底してくれ、離れは全面立入禁止の厳戒態勢が敷かれていた。
数年ぶりの姉妹の再会に、叔母様と母はうっすらと涙を浮かべて抱き合っていたが、すぐに叔母様は力強く微笑んだ。
「さあ、まずはお風呂よ。髪も体も磨かなければ、時間が足りないわ! ちゃっちゃと動くわよ!」
温かいお湯でスラム街の生活でついた汚れを綺麗に流し、傷んだ指先を治癒魔法で整えてもらう。そうして磨き上げられた私たち母娘が湯から上がると、部屋に控えていた叔母様が、ハッと目を見張った。
「ああ……なんて綺麗なの、お姉様、レティシア。本当に、見惚れるほどに美しいわ……」
叔母様の感嘆の声に、私は鏡を見た。
そこに映っていたのは、かつての煤けた姿ではない。本来の輝きを取り戻し、眩いほどに光を放つプラチナブロンドの髪と、気高き瞳を持った私と母の姿だった。
仮眠を取り、すっかり疲れの取れた身体に、用意された最高級のドレスを纏う。
部屋を出ると、護衛を買って出てくれたアルフォンスが扉の脇にピシッと立っていた。私たちの姿が視界に入った瞬間、彼は一瞬、信じられないものを見たかのように息を呑み、その切れ長の目を大きく見開いた。
「……お美しいです、エレオノーラ様、レティ」
すぐにいつもの冷静な表情に戻り、深く頭を下げたアルフォンスだったが、その耳朶がほんのりと赤くなっているのを私は見逃さなかった。ふふ、あの真面目なアルフォンスを驚かせられたなら、準備は万端ね。
「ふふっ。ありがとう、アル。さあ、行きましょうか」
これから愚かな父を断罪する、待ちに待った一日が始まるのだ。
私は気合を入れ、母とアルフォンスと共に、王城へと向かう馬車に乗り込んだ。




