表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/163

最終回前編 戻った何気ない日常

有野さんと和葉と三人で帰省することに。

ボックス席に腰を下ろしガールズトークを繰り広げる二人。

俺は仕方なく外の様子を眺めることに。


「ちょっとトイレに」

そう言うと有野さんは席を立つ。

「そうだマナさん。三号車にお土産が」

目ざといな。自分で行けばいいのに有野さんに頼る。


甘え上手で本性を見せないタイプ。

要するに人によって態度を変える困った奴。

人間誰しも他人と関わればこんな一面もある。普通のことだと流していたが。

どうも俺だけに厳しい気がする。尊敬もせずバカにしている。

いくら生まれも育ちもバカだとしても俺をバカにしていいはずがない。


「ねえアキラ一つ! 」

有野さんがいなくなったと思ったら遠慮なく俺をこき使おうとする和葉。

「はあ? 最後の一本なんだぞ? 」

二人で食べまくったせいでもう一本しか残ってない。

それを大事に食べようと取っていたら和葉が寄越せと圧力を掛ける。

いやそれ以前に俺の手で触れたものを食うのか? 

これがチョコがついてなければそれもまだ分かるけどさ。

いくら冬で溶けにくいと言っても限界がある。諦めろよな。

「それがどうしたの? 」

有無を言わせない和葉に最後の一本を贈呈する。


「ほらよ。食えばいいだろう」

もう呆れて怒る気も失せる。

「食べさせて」

そう言うと無防備に口を開けバカみたいな顔を晒す。

ああ何てかわいいんだろう? 

つい邪な感情が生まれる。いやこれはどうしようもないこと。

決して俺のせいではない。そう仕向けたのは和葉。明らかな意図がある。

それは無邪気なものではなく邪悪なものに違いない。


「おいおい何を甘えてるんだ? 」

人前。いくらボックス席で周りの席には人がいないと言ってもさ。

当たり前だが離れたとこには存在する訳で。

ここは俺たちだけの自由席ではない。はしゃぎ過ぎても調子に乗ってもいけない。

常識の範囲内で楽しむべき。それなのに和葉の奴は俺におかしな要求をする。

どう考えても何かある。それをヒタヒタと感じている。勘違いなものか。


仕方なく食べさせることに。妹とは言え緊張するな。

ありがとうと言って俺の手まで食おうとして手を舐める。

異常性癖の和葉。我が妹ながらどう言う教育を受けてるんだ?

ほぼ一緒に教育を受けたはずなんだけどな。


「やめろ! 有野さんが…… 」

「大丈夫。まだ戻って来ない。あそこのトイレは列になってたから。

それにお土産も見るでしょう。それに私のお願いした商品も」

どうやら二人っきりの時間がまだまだ続くとアピールする。

有野さんに対抗意識を燃やしてるらしい。早い話が嫉妬だろう。

冗談じゃないよな。トラブルはもう充分。疲れてるんだから。


「好き」

そう言うと目を瞑る。

ツンデレの和葉のめったにないかわいい瞬間。

この時を逃せばただの生意気な対抗心剥き出しのガキになる。

それはそれで悪くないがコントロールは難しい。


「おい冗談だろう? しろって言うのか? 今ここで? 」

どう考えてもイカレている。いつ有野さんが戻って来るかも分からないのに。

ああダメだ和葉。そんなことはお兄ちゃんが許さない。


「どうしたの? 拒否するつもり? 」

ちょっとでも迷うとすぐに機嫌を損ねる。和葉お嬢様には苦労するぜ。

「だったらせめてきちんと呼んでくれよ」

「ふふふ…… ごめんお兄ちゃん。さあ和葉の我がまま聞いて」

そんな風に迫られたら誰だって落ちる。

しかし俺たちは兄妹なんだ。できるはずがない。してはいけない。

いくら和葉が要求しても絶対にダメなんだ。

分かっている。分かっているけど。でも……


「どうしたの? 」

急かす。だが理性が吹っ飛ぶことはない。

今までは多少そう言うことがあった。

覗いたり触ってみたりキスをしてみたりとギリギリを攻めた気がする。

しかしそれでもそれは人のいないところでの話だ。

こんなところでやれば最悪捕まることに。


だが今のところボックス席から見回しても周りには人がいない。

もうほとんどの奴は帰省してる。飛行機や新幹線以外の帰省組はもうとっくに。

俺たちみたいに同じ県内に二時間近くかけて帰省する者は少ない。

貸し切りとまでは行かないが見える範囲にはいない。音もしないし気配もない。

だからって思いのままに行動していいはずがない。

俺はボッチで協調性はないけれど常識とマナーぐらいは持ち合わせてるつもりだ。

もちろん理性が吹っ飛んだらそれも分からないが。


「どうしたの? キスは? 」

最高に甘え上手の和葉がいる。ツンデレでたまにしか見せないレアな状態。

「おいおいやっぱりまずいよ」

和葉が間違えたならば兄である俺が正してやるのが当たり前。

「ふーん。だったらアキラたちの秘密をママにでも言おうかな」

ついに恐れていたこと。自分の目的の為に脅しを掛ける。

手段を選ばないかわいらしい脅迫者。見た目に反して強欲だ。


「ははは…… 何を言ってるんだ和葉? ただのお隣さんだろう? 」

「よくそんな白々しいことが言えるね」

口では敵わない。そもそもこれは屈服しない限り和葉は本気でバラしかねない。


「和葉! 」

怒ってみせる。これでどうにかなるか?

「もうこの程度で? 情けないんだから。

だったら逆にマナさんにアキラのやったことをばらす」

もうただの脅迫者。俺が何をした? 

兄妹なんだから少しは情と言うものがあるだろう?

「いや何のことかな? 」

逃げ切る。ここは強引に逃げ切るしかない。

どうせ脅しなだけ。言えるはずないさ。


               最終回後編へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ