ハッピーエンドの予感
午後ののんびりした時間を満喫する。
「ほら行くよ! アキラってば! 」
和葉お嬢様のお洋服を見に行くことになっている。
なぜ俺がとも思ったが仕方ないよな。有野さんが優しいんだから。
和葉はお目当ての白のお人形さんみたいなワンピースを購入。
明日これを着て帰省するそう。ちょっと派手な上にロリータファッションぽい。
兄としては嬉しい反面心配が尽きない。
「だから二人っきりの時は違うだろう? 」
和葉を諭す。
「はあ三人だよ? バカなのアキラ? 」
うわ本気だからムカつく。どうしてさっきから逆なでするようなことを?
確かに俺は世間ではバカだとされてるけどそれはどうしようもないこと。
これは生まれながらだから受け入れないといけない。遺伝とも言える。
だがそれなら和葉だって似たようなもの。人のこと言えない。
「人前でもお兄ちゃんだろう? 」
そういくら近くてもイコールではない。
俺たちの間がどれだけ近かろうと社会が決めたことに従うのが常識。
大体俺は一学年先輩じゃないか。なぜ敬わない?
「だったらずっとお兄ちゃんじゃない」
おっとようやく理解してくれたようだ。
アキラなんて呼び捨てにしていいはずないだろう?
お兄様なのだから。今度からはずっとお兄様と呼ばせるぞ。
「それでいいんだよ。お兄ちゃんときちんと呼んでみろ! 」
「バカじゃないのアキラ? 今朝だって何をやってたのよ。困ったアキラ」
和葉は俺が有野さんの相手ばかりするから機嫌が悪い。
今朝のことまで持ち出す始末。
ただちょっと三人で寝てただけじゃないか。不可抗力だし。
俺が悪いって言うのかよ? 俺がだらしないって言うのかよ?
確かにそうだけどさ。多少兄を尊敬してくれよな。
いくら誕生日が近くて一個違いだとしても。これは譲れないんだ。
「和葉! いい加減にしろ! 」
「アキラのバカ! 」
「まあまあ二人とも喧嘩しないで」
有野さんを兄妹喧嘩に巻き込んでしまう。
「さあ服も買ったし何か飲もうか和葉ちゃん? 」
「はーいマナさん。行くよアキラ。とっとと来て! 」
そう言って生意気な口を叩く。後で覚えてろよ。
それからは明日の帰省に必要な買い物をして家に戻る。
「どうだった楽しかった? 」
五階さんが姿を見せる。
大家さんの付き添いと後片付けに追われた一日だったそう。
「まあ…… 五階さんはこれからどうするんですか? 」
「あなたと結婚しようかなと。どうせもう結ばれたんだから」
「うわあああ! 」
どうにかごまかす。まさか二人とも本気にしてないよな?
有野さんは変化なし。和葉は疑いの目を向ける。
「冗談。明日は無理そう。でも年末には帰るつもり」
夕方の五階さんはやはり頼りになるお姉さん。
冗談ばかり言うのはやめて欲しいが。
「そうですか…… 」
「元気ないね? マナと喧嘩でもした? 」
吹っ切れたように見えるがまだサトルに会えてないからか本調子ではない。
その後に付き合ってたスーパーサブはどうした? すっかりその存在を忘れてた。
俺たちのことを気に掛けてくれるのは嬉しいが五階さんは無理してないか?
「いえ…… 和葉と。兄妹喧嘩ですよ」
「ああ…… どっちがキスをするかで口論になりそれで兄妹喧嘩に? 」
思いっきり飛躍する五階さん。
「全然違いますよ。和葉が生意気だから! 」
「違います。アキラが生意気だからですよ! 」
真似をする和葉。これだからガキっぽいって言われるんだよな。
くそ! 不満が爆発しかけている。もう我慢の限界だ。
和葉にはきつめのお仕置きをしないと気が済まない。
「何だ。それならアキラが悪いね。はいはいこれで喧嘩はお終い。
さあ夕食にしよう。今日は豪勢にお肉にしたから」
さすがは五階さん。忙しいのによくやってくれるよ。
「いただきます! うまいこれって何の肉? 」
「人肉」
「嘘…… 俺食っちゃった」
「ごめん冗談。ほら大家さんが処分に困って…… さあ食べて! 食べて! 」
決して何の肉か言わない五階さん。怖いんですけど?
こうして四人で楽しい夜を過ごす。
当然夜のお楽しみもあったので満足満足。
翌日。実家へ帰省。
まさかのサプライズで興奮気味。
「行こうか」
「うん」
こうして俺たちは実家に挨拶に向かうことになった。
「有野さんってば本気の本気なんですか? 」
俺をからかっていないか確認が必要。
一人浮かれてバカみたいでは和葉に笑われる。
「うん。私もぜひお願いします」
どう言う訳か有野さんがついて来ることになった。
うっとうしいとは言わないけれど戸惑う。
「好きだよ有野さん」
とりあえず挨拶の告白だ。軽いと思われたか?
「そんな…… 恥ずかしい。人前では恥ずかしいんだから」
ちょっとずつ元の彼女を取り戻している。
俺のせいで多重人格になったようなもの。優しく寄り添えたらな。
「ではキスでもしましょうか? 」
睨んでもいない。しつこくもない。イカレてもいない。
かわいらしい有野さんが目の前にいる。だからもう何をしても大丈夫。
実家に挨拶に行くとはそう言うことだ。本人も承諾してる。
ここで遠慮しては逆に見捨てられる恐れさえある。
判断を誤れない。さあ勇気を振り絞って大胆な行動に出よう。
それが決心してくれた有野さんへのせめてもの感謝の気持ち。
物語は紆余曲折あってハッピーエンドを迎えるのか?
それは誰にも分からない。
「やっぱり人前だと恥ずかしいよ? 」
「ほら文句言わずに! 急がないと電車来ちゃいますって」
急かして考えさせない。酷いように見えてこれがベストだと判断している。
「一ノ瀬君がそう言うなら…… 」
もう俺の命令には従順だ。ははは…… これで有野さんは俺のもの。
「では行きますよ有野さん」
「待って。キスする時は名前でお願い」
「そうなの? 我がままだな。ではマナさん」
「アキラ…… 」
「マナ! 」
「アキラ! 」
「待った! 」
もう少しと言うところで待ったが掛かる。
「どうしたの有野さん? 」
「私? 」
どうやら邪魔をしたのは有野さんではないらしい。
「もう人前で何をやってるのアキラ! 」
そう言って背中を掴む。
「ほら急がないと電車に遅れるよ! 」
「こら和葉! 邪魔をしやがって! 」
「へへへ…… 急いでってば! マナさんも! 」
昨日買ったばかりの白の派手なワンピースを自慢するように大胆に。
見てるだけでそそられそうになるが俺たちは兄妹だから。
こうして俺たち三人は旅立ったのだった。
最終回前編へ続く




