21話
フローリアはアーサーに連れられて『神狼の森』に来ていた。
大自然に囲まれた森林や山々の中で、アーサーやエルザに『神気』の扱い方を習い、魔狼達との狩りで戦闘訓練も行っていた。
人間の頃に覚えた『獣はこわいもの』という感覚が、なかなか抜けなかった森の獣達とも、毎日果物を持ってきてくれる小動物や、一緒に狩りに出かける魔狼達とも次第に打ち解け仲良くなっていった。
時々遊びにやってくる『神龍アレク』に乗せてもらい、空の散歩も楽しむ余裕が出てきた頃、そろそろ人間の世界に帰ることになった。
旅立ちの前に『神龍アレク』は門出の祝いだと鱗を1枚はがしフローリアに向かって投げると、アーサーとお揃いの篭手と脛当に変わりフローリアの手足に装着された。
驚きながら、アレクに頭を下げ礼を言い、頭をあげると笑顔の『生命の女神』が立っていた。
「リアちゃん、いよいよ旅立ちね。はい、これっ」
レイピアを差し出した。
「前のやつ壊れちゃったでしょ」
「ありがとうございます」
「森の生活はどうだった?」
「みんな優しくしてくれて本当に楽しかったです」
「それは良かったわ。これから人間の世界に帰っても、時々遊びに来てよね」
「はい、アーサー君と一緒に必ず帰ってきます」
「これからも坊やと仲良くね。新しい女神さん あはははは」
「なんだか、まだ信じられないけど使命を果たせるようにがんばります。
エルザさん、森のみなさん、本当にありがとうございました」
みんなに見送られ、アーサーとフローリアは森をあとにした。
「アーサー君、どうやって王都まで行くの?」
「歩いてだよ」
「うえぇぇぇ アレクさんに乗っけていってもらえばすぐじゃない」
「王都に突然神龍が現れたら大騒ぎになるでしょ」
「早く王都に帰ってお父様やクレアを安心させたいのになぁ~」
「僕達が王都に帰ることはシロが伝えてくれてるはずさ」
「そうなの?」
「シロなら気付いてるはずだよ」
「それならいいけど……」
かつてシロと歩いた道を進んで行き、パイク村にたどり着き、1件の食堂に入っていった。
「こんにちは~」
「あら、アーサー君 ひさしぶりね」
「エレナさん、お元気そうですね」
「私はいつも元気よ。アーサー君こそ可愛い彼女連れちゃって」
「あははは 彼女って「こんにちわ」」
「こんにちは、ようこそパイク村へ」
「エレナさん、皆さんはお元気ですか?」
「ええ、今日は狩りにでかけてるけどね。あの馬鹿は畑の手伝いをやってるわ」
アーサーはフローリアに以前あったことを説明した。
「ええっ、アーサー君お金の使い方も知らなかったの?」
「そうなのよ。はじめはおどろいたわぁ~」
「あははは エレナさんのおかげで無事旅を続けられました」
「お礼を言われるようなことじゃないわ」
みんなが元気であることを確認して、アーサーとフローリアは村を後にした。
旧バーニング領で人々の笑顔が戻っていることに一安心しながら、王都を目指し進んでいった。
途中フローリアはシュベルト伯爵領やレジアス公爵領で城に立ち寄り王都に連絡しようとしたが「突然帰ったほうが面白い」とアーサーが言い、城に立ち寄ることはなかった。
大神殿での戦いの後、神官長の部屋でみつかった『ご神託依頼書』を国別にわけ、各国の大使に渡したあと、各国では大騒ぎになった。
多くの貴族が降格されたり爵位を奪われ、官僚からも多くの処分者がでていた。
あまりの混乱に、婚礼の儀を延期したほうが良いのではとの意見も出されたが、こういう時だからこそ明るい話題を提供するべきだとのアルフレッドの言葉に予定通り実施されることになった。
ロバートは、処分された貴族の領地替えや、領主不在となった領地に忙殺されていたが、官僚からも多数の処分者が出ていたため、寝る間もなく働いていた。
体力の回復したクレアは人手不足を理由に、婚礼の儀の責任者に抜擢され多忙な毎日を送っていた。
今まで儀式を執り行っていた大神殿が崩壊したため、精霊神殿が儀式を行うこととなり過去の儀式内容を参考に儀式の手順を決めたり、参加者の席順、婚礼衣装の手配、披露宴の準備と幅広く長年公爵家で培った知識と人脈を総動員し、なんとか目途がたつまでにいたっていた。
風王騎士団や公爵家騎士団は、大神殿との戦闘で多くの死傷者をだし人手不足となっていたが、ランバートが領地から騎士団と衛士隊を率いてきて人手不足を補った。
ランバートはそのまま王都警備の指揮をとり、治安維持と来る婚礼の儀の警備計画を立案し騎士団の訓練強化を実施した。
シロは騎士団の鍛錬に付き合い、毎日遊び感覚で過ごしていた。
鍛錬の途中、シロは顔をあげ鼻をクンクンさせたあと鍛錬場の入り口に駆け出した。
ワオオオオォォォォーーーーン
飛び掛ってきたシロを抱きとめ
「シロ、元気だったかい?」
というアーサーの顔をペロペロ舐め喜びを表していた。
フローリアは、駆け寄って来たランバートに抱きつきながら
「お爺様、ご心配おかけしました」
と言葉をかける孫娘に涙をながしながら頭を撫でてやる祖父の姿があった。
「フロー よくぞ無事に帰ってきた」
「ちょっと遅くなっちゃったけどね」
「シロから待っていろと言われ、少しは安心していたのだが」
とアーサーを押し倒し舐めまくっているシロに目をやった。
「やっぱりシロにはわかってたんだぁ~」
「まあ、あの様子ではシロも心配してたんだろうがな」
フローリアはシロに近づき撫でようとしたが、シロに襲い掛かられ舐められはじめた。
「ランバートさん、ご心配おかけしました」
「殿下もよくぞご無事で」
「僕はすぐ元気になったんだけど、リアが体調を戻すのに時間がかかってしまいました」
「孫娘がお世話をかけたようですな」
「僕にもっと力があったら、被害を少なくできたのに……」
「なにをおっしゃいます。殿下がいらっしゃったからこれだけの被害で倒せたのですよ」
「そう言っていただけると少しは気が楽になります」
「お疲れのところ申し訳ないのですが、早速王城に向かい陛下にお会いください」
ランバートは二人とシロを連れて王城に向かった。




