22話
国王執務室では、アルフレッド、ローズ、ロバート、クレアが集まり婚礼の儀の確認を行っていた。
コンコン
「誰だ」
「ランバートでございます」
「おお、入れ」
「お忙しいところ失礼いたします」
「ちょうど婚礼の儀の確認をしていたところだ。警備のことも聞いておきたかったんだ」
全員が難しい顔で資料に目をむけ、誰も入り口を見る者はいなかった。
「うんうん 順調に準備はできてるようですね」
「そうね、クレアも頑張ってるみたいだし」
後ろから資料を覗き込む人影に振り返り
「ア・アーサー!」
「ひめさま?」
「「ただいま~」」
全員が二人を見て固まった。
「おふたりともよくご無事で」
「アーサー、驚かせやがって」
「あはははは 血筋ですよ、伯父上」
なにも言葉を発せずロバートとクレアはフローリアに抱きつき涙を流していた。
「アーサー、今までどこにいたんだ?みんな心配したんだぞ」
「「ご心配おかけして申し訳ありませんでした」」
アーサーとフローリアは揃って頭を下げた。
「僕はしばらくして元気になったのですが、リアが重症で体力の回復を待ってたら遅くなってしまいました」
「アーサー君、それじゃあ私が悪いみたいじゃない」
あはははは
「フロー、身体はもういいのか?」
「ええ、すっかり元通り?いや、前より良くなってるわ」
「リアは『神狼の森』で毎日魔狼と狩りに行ってましたからね」
「なんとっ 前よりお転婆になったのか?」
「お爺様っ 突っ込むところはそこじゃないでしょ」
「アーサー様、何故『神狼の森』で?」
「リアの状態が酷くって、ここでは治癒できそうになかったんですよ。
『神狼の森』には精霊も多くって治癒には最適なんです。
エルザの治癒能力も高いしね」
「姫様、神狼エルザにお会いになったんですか?」
「ええクレア、エルザもアレクも優しくしてくれたわよ」
フローリアは『神狼の森』で過ごした日々を皆に話して聞かせた。
アレクの背に乗って空中散歩の話には、驚きと羨ましそうな顔をしたりしながら話に聞き入っていた。
「伯父上、ローズさん いよいよあと7日ですね。おめでとうございます」
「おお、お前が間に合ってくれて本当に嬉しいよ」
「アーサー様、ありがとうございます」
「ローズさん 伯母上になられるんですから、呼び捨てで結構ですよ」
「なんだか伯母上っていうのは微妙だわね。オバサンになったみたいだわ」
あははははは
婚姻の儀の当日、儀式前に王城を祭壇の間にアルフレッドとローズ、アーサー、フローリアの姿があった。
「伯父上、ローズさん 祭壇前に跪いていただけますか?」
言われた通りアルフレッドとローズは跪き頭と垂れた。
二人の前にアーサーとフローリアが立ち声をかけた。
アーサーはアルフレッドの頭に手をかざし
「汝アルフレッド・ボガード・ローレンシア 良き王となり民を正しく導くことを誓えるか?」
アルフレッドは突然の儀式に驚きながらも「誓います」と答えた。
「我『道徳の神』の名のもとに汝に加護を与える」
アーサーの手から光の玉が出てアルフレッドの右手に紋章を刻んだ。
フローリアはローズの頭に手をかざした。
「汝ローズ・バレンシア・シュベルト 良き王妃となり皆に愛を与えることを誓えるか?」
「誓います」
「我『愛の神』の名のもとに汝に加護を与える」
フローリアの手から光の玉が出てローズの左手に紋章を刻んだ。
「伯父上、ローズさん もういいですよ」
「アーサー今のは?」
「僕とリアは神から、人間を正しく導き、愛にあふれた世をつくるよう使命を与えられました。それで、神の加護を授けることを許されたんです」
「フローリア嬢も神の養子となったのか?」
「ええ陛下、天上界で身体を再生してもらいましたので、神の養子となりました」
「フローちゃんが女神さま?」
「ローズ姉さん、私神様になっちゃった。これからはアーサー君と一緒に使命を果たすの」
「結婚しちゃったの?」
「あはははは、神には結婚という概念がありませんから」
「でも、人間のお婿さんはもらえないわね」
「そうなりますね」
「じゃあ、計画変更しなきゃね。アレク、プランBに変更よ」
「お・おう!?……プランBってなんだ?」
「プランAはアーサー君がフローちゃんと結婚してレジアス家を継ぐ。
プランBはロバート叔父様がクレアを後妻にして跡継ぎを作るのよ」
「それでは、アーサーの居場所がなくなるではないか」
「公爵家が一つ空いたでしょ。新しい公爵家を興すのよ」
「アーサー、子供は作れるのか?」
「僕達二人が人間の子を望めば、人間の子供はつくれますよ」
「それでは王家の分家として公爵家を興すことは問題ないな」
「「もちろん」」
アーサーとフローリアは顔を見合わせて笑った。
婚礼の儀は、会場に精霊が清浄な空気を満たし、滞りなく行われた。
披露宴は王宮の大広間で行われた。
披露宴とはいっても、堅苦しい祝辞の続く退屈このうえない会をアルフレッドが嫌い、自由に語り合える立食パーティー形式で行われた。
正装したアーサーがフローリアをエスコートして入場すると、貴族達が次々やってきて挨拶を繰り返していた。
やがて新郎新婦の入場となり場内は拍手の渦に包まれた。
アルフレッドの挨拶が済み、パーティーがはじまるとアーサーとフローリアはアルフレッドの傍に呼ばれた。
「これが甥のアーサーです」
各国の元首に紹介されアーサーは各国の言葉で挨拶を交わした。
「アーサー殿下、大神殿事件の折は多大なご協力ありがとうございました」
「アーサー殿下、神龍が現れたときには肝をひやしましたぞ」
「殿下、神狼達のお陰で我国も助かりました」
口々に感謝の言葉を述べ、アーサー自身の武勇も褒め称えた。
「あれは神が力を貸してくれたからですよ。僕にではなく神に感謝してください」
「神に感謝といわれても、大神殿は無くなってしまいましたぞ?」
「建物に感謝するんじゃなく、心の底から感謝の気持ちを表せば場所など何処でも良いのです」
「神は全て見ておられるということですな」
「神は人間の味方ではなく、世界を守護する者です。人間が道を誤れば人間の敵にもなります。このことを忘れてはいけません」
「その言葉大切にさせていただきます」




