19話
地王陸戦隊と引き連れたロバートはデロリアン公爵家を包囲した。
屋敷から出てきたデロリアン公爵は、ロバートに向かって不機嫌そうに質問した。
「レジアス公爵、これはどういうことですかな?」
「要人警護ですよ」
「警護ですかな?我が屋敷にも手勢はおりますが?」
「大神殿が反意を見せましたので、もうすぐ戦闘がはじまるかもしれんのです」
「なにゆえ我が屋敷だけ?」
「デロリアン公爵は大神殿とご懇意ゆえ、逃げ込んでくるものがあるやもしれませんからな」
「そのようなもの我が屋敷に受け入れるはずもなかろう」
「デロリアン公爵が寄付をする度に神託がおりておりましたからな」
「おのれっ愚弄するかっ 騎士団よ、こやつらを蹴散らせっ」
屋敷から武装した集団が現れ、地王陸戦隊と交戦がはじまった。
「デロリアン公爵、随分と準備の良いことですな。
大神殿でも助けに行くおつもりでしたか?」
「ふんっ 神託のできぬ大神殿などどうでも良いわっ
俺様が直接アルフレッドとガキを倒して即位してやる」
デロリアン公爵は抜刀してロバートに襲い掛かった。
「そんな剣筋では子供でも避けれますぞ」
「どこまでも愚弄するかっ」
デロリアン公爵の怒りに呼応するように、屋敷よりでてきた『澱』がデロリアン公爵を包み込んだ。
「『澱』かっ」
ロバートはこれまでの嘗めきった態度から一変し、油断無く構えなおした。
「うははははは 貴様など恐れるほどもないわっ」
デロリアン公爵の剣から火球が飛び出してきた。
ロバートは軽く剣を振り、火球を跳ね除けデロリアン公爵の左腕を切り落とした。
「な・なに?人間ごときが俺様に傷をつけるとわっ おのれっ」
無茶苦茶に剣を振るい、無数の火球をロバートに放った。
ロバートは冷静に火球を避け、体内の魔力を練り上げ咆哮をあげた。
ウオオオオオォォォォォ
剣先から凄まじい衝撃波を放ち、デロリアン公爵を吹き飛ばした。
『神気』の混ざった衝撃波に襲われたデロリアン公爵は、屋敷の壁に激突し意識を失った。
地王陸戦隊は生き残った者に縄をかけ、デロリアン公爵も捕縛した。
ロバートの放った衝撃波を目撃した地王陸戦隊員は
「すげぇ~」
「もはや人を超えてる」
とか口々に感嘆の言葉を漏らした。
大神殿を取り囲んでいた風王騎士団と公爵家騎士団の前に、ゾロゾロと神殿騎士が現れ一斉に襲い掛かってきた。
ダンクルが神殿騎士の腕を斬り飛ばしても、まったく怯む様子もなくうっすらと笑みを浮かべて攻撃してくる。
「な・なんだ!?こいつらおかしいぞっ」
「……」
他の面々も異常に気付き、何度斬りつけても向かってくる神殿騎士に苦戦していた。
「みんなっ 離れてっ!!」
フローリアとクレアは騎士団を下がらせて、レイピアから魔術を放った。
ゴオオオォォォォォ
数人の神殿騎士が、自らの身体を盾にして仲間を守り魔術を凌いでしまった。
シロは子狼の姿から、本来の姿に戻り攻撃を繰り返しているが、致命傷を与えても息絶えるまでは攻撃を止めない相手に手を焼いていた。
風王騎士団達に守られながら、精霊神殿の神官達は精霊に結界を張ることを命じ魔力の供給に全神経を注いでいた。
大神殿から『澱』が染み出てきて、結界を破ろうと巨大な火球を結界に連発し始めた。
『澱』はさらに膨張を続け神殿騎士を呑み込みはじめた。
「みんな結界の外にひいてっ!」
アーサーの声が響き、風王騎士団、公爵家騎士団は結界の外まで退却した。
結界内に残った、アーサー、シロ、フローリア、クレアは何度も魔術を放つが、当たった部分が消えるだけで、大きなダメージを与えることが出来ないでいた。
「殿下っ このままでは結界がもちませんっ」
「リア、クレア結界の補助にまわってっ」
「アーサー君はどうするの?」
「僕はこのまま攻撃を続けるよ」
フローリアとクレアが結界を張っている神官達の方に駆け出していったのを確認して、アーサーは自分の力を解放した。
髪の毛や目の色だけでなく、全身が金色に輝き手に持った長剣も発光しはじめた。
『澱』は更に膨張し、直接、結界を中から押し始めた。
戦闘で大量の魔術を使ったクレアが魔力不足で意識を失い、結界にヒビが入り始めた。
「クレアっ クレアっ」
フローリアは悲痛な声を上げながらも結界を張り続けた。
<俺も手伝おう>
シロはクレアの倒れた場所に行き、結界を張り始めた。
「シロっ アーサー君が一人になっちゃう」
<『澱』を倒し、人間を正しく導くのがアーサーの使命だ>
「そんなこと言っても助けなきゃっ」
<アーサーを信じろ>
アーサーは『澱』を斬り裂きながら、大神殿の中に突入していった。
<神の子といえど、所詮は人間か その程度で我は倒せんぞ>
「多くの人間や精霊が力を合わせてるんだ。必ずたおしてやるっ」
<我は人間の欲望を糧に世界を混沌に戻す。その元となった人間の力など無力だ>
「人間の力は欲望だけじゃない」
<我を倒したところで、人間に欲望がある限り我の同胞が生まれる>
「その度に倒してやるさ」
<戦いは混沌を生む。我の望むところだ>
「人間はそこまで愚かではない」
結界に再びヒビが入りはじめ、すでに限界に達していたフローリアは、生命の維持に必要な魔力まで放出していた。
<フローリア 魔力の放出をやめろっ>
「絶対アーサー君を守る そのためならどうなってもかまわないっ」
<身体が崩壊するぞっ>
「アーサー君にだけ頼っちゃいけない 私も戦わなきゃっ」
フローリアの存在が希薄になり始め、身体から光の粒が飛び始めた。
<フローリア 本当に限界だっ 存在が消えてしまうぞっ>
その時、結界内を埋め尽くしていた『澱』の中から少し光がのぞいた。
1箇所だった光が2箇所、3箇所と増えていき、やがて光は柱となって天に伸びていった。
<終わったのか……>
シロは子狼の姿に戻り意識を失った。
大神殿の戦闘が終わり、駆けつけたロバートが見たものは、意識を失った人々の山であった。
「フローっ フローっ」
必死に探したが、フローリアとアーサーの姿はどこにもなかった。




