18話
審判を終え、アーサー達は会議室に集まっていた。
「アーサーの名乗りも終えたし、これで堂々と会えるな」
「はい、伯父上」」
「殿下、貴族達が近づこうと画策してまいりますからご注意ください」
「うん、わかってるよ」
「それにしてもアーサー様が名乗った時のみんなのお顔……面白かったですわぁ~」
「俺も噴出しそうだったよ」
審判など無かったかのように楽しげに歓談していた。
「……ローレンシアの方、誰かいらっしゃいますか?……」
通話用の水晶から声が聞こえてきた。
「はい、ローレンシア神聖王国のローズでございます」
「おお、よかった。こちらはシンカ共和国のマルカスです」
「今、陛下と変わります」
「アルフレッドです。いかがなさいましたか?マルカス大統領」
「たった今、打ち合わせ通り大神殿の偽神託を暴いてやりました。あはははは」
上機嫌な声が会議室に響き渡って、みんな笑顔で聞いていた。
「大神殿の奴ら、ぐうの音も出せずに蒼い顔で大神殿に帰っていきましたわい」
「それは上々。その後の手配は?」
「今、国軍が大神殿を包囲しておるところです」
「こちらも先ほど大神殿の奴らを追い返して、今、騎士団が包囲のために向かっておるところです」
「ほかの2国も上手くやってくれるといいですな」
他国の対応をアルフレッドとローズにまかせ、アーサーとロバートは大神殿に向かう準備をはじめた。
ロバートは炎王近衛騎士団に王城の警護を命じ、風王騎士団にアーサーと共に大神殿へ向かうように指示を出した後、自らは地王陸戦隊を引き連れてデロリアン公爵家に向かった。
風王騎士団と共に大神殿前に到着したアーサーは、神殿を取り囲んでいる先発隊と合流した。
そこに、シロを従えたフローリアとクレア、公爵家騎士団が到着した。
風の精霊から他の2国でも包囲完了の報を聞き、静かに目を閉じた。
<エルザ、アレク、ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノーム聞こえるかい?>
<聞こえてるわよ>
<おお>
<<<<はい>>>>
<いよいよ『澱』を殲滅する時がきたよ。みんな気をつけてね>
<大丈夫よ>
<久しぶりに力が使えるわい>
<御子様こそお気を付けください>
<じゃあ、みんな一気にやるよ!>
グランディア帝国の大神殿前では、神殿騎士が国軍との交戦をはじめていた。
「神敵めっ 神罰をくらえっ」
「なにおっ 神の名を騙る不埒者めっ」
両軍入り乱れての乱戦の中、上空に黄金の龍が現れた。
黄金の龍は自分の存在を誇示するかのように咆哮をあげ、大神殿の屋根に降り立った。
神殿騎士達は槍を投げたり、弓を射掛けたり、魔術を行使して猛攻を加えたが、龍はさして気にする様子もみせず、ただ視線をおとしただけだった。
大神殿の中から『澱』が滲み出て、周囲を包もうとしたとき
キン
という金属がぶつかったような音がして、黄金の龍を中心に半球の透明な膜ができ大神殿を包み込んだ。
『澱』は膜の外にでようと試みるが、膜に阻まれ膜の中に充満していった。
黄金の龍は『澱』を睨み付け、怒りの咆哮をあげた。
魂を押しつぶされそうな恐怖が襲い、国軍、神殿騎士を問わず気を失ったり、その場に座り込んだりした。
その時、膜の中から目映い金色の光が広がり周囲を埋め尽くした。
光が消えた後には、黄金の龍の姿はなく神殿の中には神官服をきた干からびた人間が倒れているだけだった。
ソヴィエ連邦の大神殿でも、連邦軍と神殿騎士との戦いが始まっていた。
精霊神殿の神官達が精霊とちからを合わせ、大神殿を結界で取り囲んだ。
結界内では『澱』が不気味な動きをしながら、結界を破ろうと暴れまわっていた。
地の精霊王と風の精霊王は結界の強化に全力を尽くしていた。
「ウンディーネ、サラマンダー早くしてっ!私とノームが加わっても長くはもたないっ」
ウンディーネは浄化の水に『神気』を乗せ霧にして結界内に充満させた。
「サラマンダー、今よっ」
サラマンダーは両手をかざし『神気』を混ぜた浄化の炎を放った。
ズドオオオオォォォン
炎は結界内で暴れ水蒸気爆発をおこし、全てを吹き飛ばした。
「サラマンダー、やりすぎじゃ……」
「御子様を苦しめた報いだ」
精霊達は疲れたように姿を消した。
シンカ共和国の大神殿でも、国軍と神殿騎士との戦いが始まっていた。
国軍が劣勢になろうとした時
ウオオオオォォォォーーーーン
狼の遠吠えの声が聞こえた。
多数の魔狼が現れ、神殿騎士に襲い掛かった。
神殿騎士達が怯んだ隙に、精霊神殿の神官達は精霊に魔力を提供して大神殿を包む結界を作り上げた。
結界の中に5mはあろうかという黄金の狼が飛び込んで行った。
大神殿の中からでてきた『澱』は黄金の狼に触れると霧散して消えていった。
黄金の狼は『澱』の中心に向かい突き進んで行き、全身から目映い光を発した。
ウオオオオォォォォーーーーン
大神殿から戻った黄金の狼は勝利の遠吠えをあげ、魔狼達を引き連れ去って行った。
後に残された国軍の兵士は、去っていく魔狼の群れを見送りつつ跪いて手を合わせ神への感謝の言葉を呟いた。




