12話
アーサーは表情を固くして何か覚悟したように口を開いた。
「それでは、もう少し僕のことを話しておきます。
もうご存知の方もいらっしゃいますが、僕は『神狼の森』で育ちました。
そこで僕を育ててくれたのは神狼エルザと4人の精霊王です。
戦いの基礎は精霊王が実戦はエルザと神龍アレクが鍛えてくれました。
僕の篭手と脛当はアレクの鱗で作ったものです」
「アーサー君の強さが納得できたよ」
「ひとつ質問してもいい?アーサー君を養って『神狼の森』で育てるようにしたのは誰なの?エルザ?」
「エルザは乳母です。僕の養父母は『知の神』と『生命の女神』なのです」
「神様の養子!?」
「はい。あの事件の時『知の神』は僕を天上界に転移させて助けてくれました。
天上界に転移した僕の身体は神の力『神気』を帯びてしまったんです。
肉体を持った神というか、神の力を持った人間というか……
そのままでは人間の世界に帰れないので『神狼の森』で育てられました。
そしてこれが僕の本来の姿……」
アーサーの白銀の髪と鳶色の瞳は金色に変わった。
アーサーの足元に居たシロも立ち上がり本来の姿を晒した。
「これが、僕の秘密にしていたことです。
僕の使命は『人間を正しく導く』ことなんです。
『澱』はその使命を果たすための最大の敵なんです。
伯父上、神が人間の国の王位継承権を持つわけにはいかないのです。
分かっていただけましたか?」
アーサーはシロを撫でながらアルフレッドに言った。
「アーサー、よくわかった。
でもお前は俺の甥であることは変わらんよ。
そして俺がお前を手伝いたいという気持ちも変わらん」
「わたくしも驚きはしましたが、気持ちはかわりません。
人間と協力する神がいてもいいじゃありませんか」
全員真剣な表情でアーサーを見て頷いた。アーサーは安心した顔で元の姿に戻った。
「ありがとうございます」
「王位継承権のことは仕方ないな。
俺は結婚したら退位してお前に国を返すつもりだったんだが、世継ができるまで王様やってやる」
「アルフ、そんなこと考えてたの?」
「ああ、アーサーと再会できてから、ずっと考えてた。
もともとアーサーが王太子だったからな」
「ロバートさん、お預けしてあるものを伯父上にお渡しくださいませんか?」
ロバートは金庫から箱を取り出しアルフレッドに渡した。
アルフレッドは箱を開け中を見た。
「これは王太子の短剣だな。これを返上するということか?」
「そうです」
「しかたないな。ただし、受け取るのは世継ができた時だ。継承権放棄はそれまで秘密にしてはもらえんだろうか?」
「どうしてですか?」
「今、継承権を持つ王族はアーサーだけなんだ。
アーサーが居ないと継承権1位はデロリアンになってしまうんだ」
「そういうことなら結構ですよ」
「それから、『澱』とやらへの対抗策は何かあるのか?」
「奴らは意識を持った魔力の塊です。
つまり直接の打撃や魔術はききません。
唯一対抗できるのは神の力『神気』だけなのです」
「それじゃあ、俺達は無力じゃないか」
「現状対抗できるのは、上位精霊と神獣と僕」
アーサーはフローリアとクレアに目をやり
「リアとクレアさんに渡したレイピアです。
このレイピアから魔術を発動すると『神気』を混ぜて発動します。
伯父上とローズさんの短剣は攻撃力はありませんが、『神気』の結界を張れます」
「じゃあ、無力なのは俺だけだな」
何もない空間から1振りの長剣を取り出しロバートに渡した。
「ロバートさんはこれを使ってください。
僕の使ってた剣です。
リア達のレイピアと同じ力があります。
その気になれば国くらい滅すことができますよ」
ロバートは長剣を受け取り、鞘から抜き刀身を見つめた。
「凄い剣だ。見たこともない材質だ」
「『神の山』にだけある鉱石にアレクの鱗を混ぜて『地の精霊王』が鍛え上げ、『知の神』と『生命の女神』が『神気』を込めてあります」
「なんとも凄い剣だな。使い方を誤ったら大変だな」
「それをお父様に渡したら、アーサー君が困るんじゃないの?」
「大丈夫だよ。新しい剣を作ったから…みんな出ておいで」
4人の女性がアーサーの周りに現れた。茶色の髪をした少女がアーサーに剣を差し出した。
「アーちゃん、これっ!上手くできたよ」
アーサーは剣を受け取り、頭を撫でてやった。
「彼女達が精霊王です」
フローリアとクレアの横にも4人の少女が現れた。
「私達と契約した精霊達もいるわよ」
「アーサー様、これが、こちら側の戦力なのね」
「いざとなればエルザやアレクも手伝ってくれます。それに大陸中の上位精霊も」
「それで、『澱』とはどこにいるんだ」
「大神殿の神官長から『澱』の強い気配を感じましたから、おそらくは大神殿でしょう」
「大神殿ならもうすぐ崩壊しますわよ」
「「「え?」」」
「アーサー様から教わった偽神託の見分け方を各国にお伝えしましたから」
「それじゃあ、大神殿は大陸中で権威を失ってしまうな」
「あはははは 人間って凄いや。僕は各個撃破しか考えてなかった」
「ね、協力するって大切でしょ?」
「そうですね。これからも頼りにさせてもらいます」
「問題解決ね。それでいつアーサー様をデビューさせる?」
「そうだな~ できるだけ派手に……」
「困った血筋ね」
「それにしてもローズさんの行動力は凄いですね」
「そこに惚れたんじゃ」
「ローズ姉さん、良い王妃になりそうね」
「あら、リアは女神様になるんじゃないの?」
「女神?」
「だってアーサー様は神様でしょ。神様の奥さんは女神さんじゃない」
「ローズ姉さん、神様の奥さんになんてなれるわけないでしょ」
青い髪の美女が進み出て話した。
「アーサー様が娶られることをお望みになれば可能でございます。
いつも『生命の女神』様は『早く孫の顔がみたいわぁ~』なんておっしゃってますから」
「神様じゃ婿には来てもらえんな。クレアを養女にして婿さがしかな」
「ロバート叔父様が後妻を迎えれば良いのではありませんか?
まだお若いのですからお世継も作れますわよ。
それならばレジアス家の血筋も耐えません」




