11話
デロリアン公爵家との試合があった午後に、国民に国王陛下婚約の発表があった。
『昨日、アルフレッド国王陛下とシュベルト伯爵家令嬢ローズ・バレンシア・シュベルト様が神の祝福を得て正式にご婚約された。婚姻の儀は2ヶ月後の吉日に執り行われる』
国民は歓喜の声を上げ、商店街では記念セールが行われるなど国中がお祝いムードにつつまれた。
大神殿の一室に数人の男達が集まっていた。
「神官長、うちの娘を王妃にしてくれるのではなかったのかっ」
「エレク伯爵様、そう言われましても、あのように『神剣』なぞもたれて『神の祝福を得た』などと言われれば如何しようもない」
「あの『神剣』の入手先はわからんのか?」
「デロリアン公爵様、各国の大神殿にも聞いてみましたが、どこも心当たりがないそうです」
「あの忌々しいレジアスが関わってるんじゃないのか?」
「無関係ではないと思いますが、『神の加護』も『精霊の加護』も受けていないので、レジアス公爵だけでは無理だと思います」
「誰じゃ、誰が手を貸しているんじゃっ!」
「公爵様、夜会の時にいた他国の修行者は?」
「レイノルド伯爵、あの少年が何者か知っておるのか?」
「いいえ、どの大使に聞いても知らぬそうでございます」
「それは怪しいな。手の者を使って探ってみてくれ」
「おまかせください」
「その件はまかせるぞ」
「4日後のバーニングの件はどうする?」
「予定通り、神託を下します」
「今度は失敗せんじゃろうな」
「いくら『神剣』を持っていようとも、『神の加護』をうけているわけではございませんから、神託が嘘とは申せません。あの言い訳は今回限りです」
「バーニングが死ぬのは構わんが、財産をみすみす国に渡すのは惜しいからの」
大神殿の中を風が吹き抜けたのは誰も気付かなかった。
「陛下、各国の大使がお越しです」
「よし、謁見の間にお通ししろ。すぐに行く」
アルフレッドはローズを伴い謁見の間に向かった。
「「「陛下、この度はご婚約おめでとうございます」」」
「お祝い感謝する。今日お越しいただいたのは、皆様方の国家元首の方に婚姻の儀にご参加いただきたくお願いするためです」
「「「もちろん国許より参加の意向の知らせが届いております」」」
「正式な招待状と親書をお渡しいたしますので、よろしくお願いします」
「「「はい」」」
「なお、親書にはきっと皆様の国でも役立つ情報が書かれておりますので、お役立てください」
「「「はい、早速国許に届けさせていただきます」」」
「ご足労かけました」
と謁見の間から執務室に戻った。
「アルフ、有益な情報とはなんですの?」
「ああ、アーサーから聞いた偽神託の見破り方だよ あはははは」
「まあっ!?これでは大神殿は崩壊してしまいますわね」
「神すら関心をもっていない大神殿なぞ必要ないじゃろ」
「それもそうですわね」
ふたりで笑いあった。
「そういえば、最近お城を頻繁に抜け出しているそうですけど、どこにいらっしゃってるんですか?」
「ん?浮気はしてないぞ」
「それは心配してません」
「あははは アーサーのところだよ」
「今朝も行ってきたぞ。ロバートの娘とデロリアンところの子豚が試合したんでな」
「子豚って!?わたくしも連れてってくれればいいのに……フローの雄姿が見たかったわ」
「子豚達10人が娘ふたりに簡単にやられてしまって、最後には男の急所を思い切り蹴り上げておったわ」
「まあ、あいかわらずのお転婆ぶりね」
「試合の後、ロバートとフローリアの親子対決を見たが、凄まじかったぞ。
両者手加減なしで引き分けおった」
「ええ!?ロバート叔父様と引き分け?
それじゃあフローリア一人で騎士団1隊の戦力なの?
昔から才能はあったけど、前に会ったときからは段違いの進歩ね」
「フローリアの先生はアーサーらしいぞ。ロバートはアーサーに瞬殺されたらしい」
「おそろしい強さね。あの二人が結婚したら、最強夫婦ね。うふふ」
「夫婦喧嘩で城が壊れるな」
「それでアーサー様のことは、いちまで秘密にされるんですの?」
「それはロバートとも話しているんだが、彼の使命もあるんで無理強いもできんからな」
「アルフっ、今から出かけるわよっ」
「は・はひ!?」
「さっさと準備なさいっ」
「ど・どこにイカレルノデショウカ?」
「アーサー様のところに決まってるわ。伯父上も引っ張って行きますわよっ」
レジアス公爵家の応接間にアーサー関係者が召集された。
「今日集まってもらったのはアーサー様のことです。いつまで秘密にされておくつもりですか?」
「ちょっと待ってください、ローズさん。僕の使命のことはお聞きですか?」
「『澱』といわれるもののことですね」
「それもありますが、もし人間が『澱』の企み通り戦を起こし、世界の理をおこすようなことがあれば、神は世界を滅ぼします。
それに、僕に関われば命を狙われる危険があります。
それを避けるために僕は周囲を巻き込むわけにはいけないんです」
「アーサー様、すでにここにいる人間は巻き込まれてますわ」
「そ・それは」
「それに、人間が起こすかもしれない過ちを防ぐためなら、私達みんなで解決するべきだわ」
「そうだな。アーサー、もっと俺達を頼ってくれぬか?」
「アーサー君、私はいつでも力になるわよ」
「およばずながら、わたくしも全力でっ!従弟でしょ」
「アーサー君には助けてもらってばかりだからな。ここで力を貸さんでは公爵家の名がすたる」
「アーサー様、それに『澱』については対抗策を考えてるんでしょ?」
「皆さん、ありがとうございます。僕は自分ひとりでやるのが当たり前だと思ってました。それが僕に与えられた使命だと」
「アーサー様、ここにいる皆はあなたが王子だから協力しようっていう人達じゃないのよ。
みんなアーサー様が好きで大切に思ってるから協力したいの。
その人の絆を作ったのは、アーサー様なのよ。
それもアーサー様自身の力なのよ」
その場の全員が力強く頷いた。
アーサーは涙をながし皆に深々と頭を下げた。




