8話
国王の執務室に呼び出されたシュベルト伯爵とローズ姫が呆然としているのを見て、ロバートは国王を宥め落ち着かせた。
「陛下、こちらの少年は?」
「カシュア、見て分からんか?」
はて?ともう一度アーサーを眺め、段々と目を大きく見開いていった。
「も・もしやっ!?」
「そう、俺の可愛い甥っ子だよ」
慌てて臣下の礼をとり跪いた。
「頭をあげてください。シュベルト伯爵」
未だ事情がわからずキョトンとしているローズにむかって
「ローズ、これが行方不明だったアーサーだよ。正真正銘僕の甥だ」
「アーサー・フォンライン・ローレンシアです。お会いできて嬉しいです。ローズさん」
「ローズ・バレンシア・シュベルトと申します。お会いできて光栄です」
「申し送れました。わたくしはカシュア・オランタ・シュベルトと申します」
「まだ、皆には秘密にしておる。色々事情があってな」
「カシュア殿、今知ってるのは、俺の家族とクレア嬢とここにいる者だけなんだ」
「兄上を害した黒幕を倒すまで、迂闊に発表できんのだ。アーサーも一度襲われておるからな」
「そういうことでしたら、口外はいたしません。ローズもわかっておるな?」
「もちろんです。誰にも言いませんよ」
「ところで、なんで急に婚約発表なんですか?」
「アーサーからこれを貰ってな」
と短剣をとりだした。
「綺麗な短剣ですが?」
「これは、神より授かった短剣なんだ。俺の結婚祝いに授かった」
「『神剣』ですか?」
「そういうことだ。これで大神殿も横槍は入れれん」
と1本をローズに渡した。
「これを持っておると、危険が迫れば結界を張ってくれるそうだ。兄上達のようにならぬようにと神が授けてくださった」
「ローズさん、抜いてみてください。伯父上も」
二人は短剣を抜いてみた。
「刀身に紋章が刻まれているのがわかりますか?」
「おお」
「それが神の紋章です。伯父上のが『知の神』、ローズさんのが『生命の女神』です。
その剣はいかなる衝撃でも魔術でも傷はつきません。
肌身離さず持っておいてくださいね」
「わかった」
「ありがとうございます。アーサー様」
「アーサー君、今朝フロー達に渡したレイピアとは違うようだが……」
「彼女達のも『神の加護』はついていますが、相手と戦う能力も付与されています。
申し訳ないのですが、僕の傍にいるだけで危険なので、身を守れるようにと神が授けてくれました」
「アーサー、大丈夫なのか?彼女達の力なぞ知れておろう」
「陛下、フローは私と互角の腕前ですぞ。
クレア嬢もそれに匹敵します。
先日も二人で当家騎士団の1隊と対戦して無傷で勝利したくらいです」
「とんでもないお転婆娘達だな あはははは」
「ロバート、急で悪いんだが今夜王家主催の晩餐会を開いてくれ。そこで婚約発表をするから」
「かしこまりました。さっそく招待状をだしておきます。アーサー様はどうされますか?」
「そのままでは、すぐにバレてしまうな」
「陛下、わたくしとフローリア達で変装させますわ。身分は考えておいて下さい」
「わかった、そうしてくれると有難い」
「公爵様、フローリアとクレアを直ぐ呼んでいただけますか?陛下、客間を借りますわよ」
とローズはパタパタと立ち去っていった。
「伯父上、完全に尻に敷かれますね」
「言ってくれるな……」
しばらくして戻ってきたローズにアーサーは再度フードを被せられ、客間に連行された。
ずらりと並んだ衣装を前にローズは腕まくりをして、アーサーの身体に合わせ始めた。
「大きさは少し手直しが必要だわね」
「色はなんでも似合いそうだから困ったわね」
などとブツブツ言い、服をとっかえひっかえアーサーに合わせていった。
「ローズさん!?この服はどこから?」
「あなたの父上のものですよ。だから遠慮なさる必要はございませんわっ」
「遠慮してるわけじゃないんだけど……」
ドタンと大きな音でドアが開きフローリアとクレアが入ってきた。
「ローズ姉さん、婚約おめでとうっ」
「ローズ様、おめでとうございます」
「ふたりともありがとう 今は時間がないわっ。アーサー様を仕上げなくっちゃ」
「「わかりました」」
フローリアは持ってきた荷物の中から鬘をとりだしアーサーに被せてみた。
「もう少し明るい茶色のほうが良いのではないですか?」
とクレアは別の鬘を取り出してきた。
「そうね、そっちのほうが良いわね」
「そうすると服の色は……」
「フローリアは何色なの?」
「今日は赤ですわ」
「じゃあ、それにあわせてね。アーサー様にエスコートしてもらうんでしょっ」
「わかったわ、ローズ姉さんも急いで用意しなくっちゃ」
「わたくしは、王妃様の衣装をお借りするわ。アーサー様よろしいですか?」
「どうぞ、好きに使ってください……」
慌しく用意が進められ、アーサーは晩餐会の前に疲れ果てていた。
その頃、シロは公爵家で騎士団と遊んでいた。




