7話
翌朝、フローリア達とシロの鬼ごっこに声援を送っている精霊達がいた。
「がんばれ~」
「おしいっ」
「もうすこしっ」
「神獣手加減しろっ」
などと騒いでいるが、他の者からは見えていないようだった。
「随分仲良くなったようだね」
とアーサーが声をかけると、慌てて跪き「「「「御子様、おはようございます」」」」と挨拶した。
「畏まらなくっていいよ」
「はい、お二人はとてもお優しくって我々もお傍にいるのが嬉しいです」
「それはよかったね。これからも仲良くね」
「「「「はい、もちろんです」」」」
シロとの鬼ごっこが終わり息を整えているふたりに近づき
「精霊達とも仲良くなったみたいだね」
「うん、みんな可愛くって」
「あははは 姫様、お母さんみたいな口ぶりですね」
「せめてお姉さんって言ってよ」
アーサーは笑っている二人に2本のレイピアを差し出した。
「アーサー君、これは?」
「昨夜、神から授かったんだ。詳しい使い方はあとで話するよ」
「私がもらってもいいの?」
「わたくしにもですか?」
「二人に渡すよう授かったからね。柄に精霊石が付いてるから、精霊達も一緒に居れるよ」
アーサーが精霊達に手招きすると、スーと精霊達は精霊石に入っていった。
二人は手にしたレイピアの美しさに見入っていたが、やがて鞘から抜き軽く振って手ごたえを確かめていた。
「凄いわっ、扱いやすい」
「軽いですわ、まるで羽のようですわ」
「ありがとう、大切に使わせてもらうわ」
「ありがとうございます」
「そのレイピアを天にかざして、神にお礼を言えば良いよ」
「「神様、ありがとうございます」」
一瞬レイピアが輝いたような気がした。
朝食をとりに騎士団食堂には、先にロバートが来ていた。
「「「おはようございます」」」
「おはよう、今日も鍛錬頑張ってるかい?」
「もちろんですわ」
「フロー、クレア見たことない剣を持ってるな?」
「さっきアーサー君からもらったのよ」
「見せてもらえるかな?」
フローリアは、「はいっ」と差し出した。
すばらしく綺麗な外見に似合わず、異常に重く両手で支えるのがやっとであった。
「こんな重いもの使えるのか?」
「重い?私にはとても扱いやすい重さですよ?」
「このレイピアは神が認めた者以外使えません」
とアーサーは苦笑して言った。
「そうか神剣ということだね」
「ロバートさん、少しお願いがあるんですけど……」
「なんだい?」
「伯父上に会いに行けませんか?」
「会わせることは問題ないが、城内でその姿を見られたら問題になるかもしれんな」
「お父様、魔術士みたいにフードを頭からかぶせれば?」
「おおっ、それなら良いかもしれんな。今日の昼からでも良いかな?」
「はい、お願いします」
午前中いつもの鍛錬を終えたアーサーは、フードを目深に被った怪しい格好で王城の中を歩いていた。
衛兵に守られた扉の前で、衛兵に声をかけた。
「陛下にお客様をお連れした」
コンコン
「誰だ」
「ロバートです。お客様をお連れいたしました」
「入れ」
衛兵が扉を開け、中に入った。
お茶が用意されメイドが立ち去るときに、しばらく部屋に誰も近づかないように伝えた。
メイドが退出したのを確認してアーサーはフードを取った。
「アーサー、よく来てくれたな」
「お忙しいところ申し訳ございません」
「他人行儀な話し方すんなよ、叔父と甥じゃないか」
「今日は伯父上にお渡ししたいものがあって参りました」
「なんだ?」
「僕から伯父上への結婚祝いです」
と懐から2本の短剣を差し出した。
「結婚祝いとは、気が早いな」
といいながら短剣を手に取り眺めていた。
「おそらく大神殿が伯父上の結婚に否を唱えるのは、政治的なものではないかと思ったんです」
「どういうことだ?」
「お相手はシュベルト伯爵家のローズ様でしょ?」
「よく知ってるな。それも神の加護なのか?」
「はい、といいたいところですが、フローリアとクレアが教えてくれました」
「さすがに女子はそういう話には敏感だな」
「シュベルト伯爵家はレジアス公爵家の親戚でしょ。これ以上王家との縁を強められては困る者共が大神殿に依頼したのではないかと考えたのです」
「ありそうなことだな」
「その短剣には、それぞれ『知の神』『生命の女神』の紋章が刻まれています。神から授かったとすればどうなると思います?」
「誰も否とはいえんな。しかし、そんな嘘は……」
「嘘ではございませんよ。その短剣は神から授かったものです」
「本物なのか?」
国王は目を見開き、短剣を抜いて紋章をみつめた。
「その短剣は、身に着けた者に危険がせまれば結界を張って守ってくれます。
父上や母上のようにならないようにと神が授けてくれました」
「そのような大事なものを俺が貰って良いのか?アーサーが持っていたほうが良いのではないか?」
「僕はすでに持ってますよ」
と腰のダガーを見せた。
「それなら、この短剣を授かったことも一緒に発表すれば、一切の横槍も入らぬな」
「陛下、大神殿としても祝辞を述べる以外ないですね」
「よしっ、すぐにでも発表するぞっ。すぐにローズを呼びだせ。発表じゃぁぁぁ」
「陛下、舞い上がりすぎです」
「なにを言っておる、何年も待たせてしまったんじゃぞっ。可愛い甥っ子に祝いまで貰って直ぐに行動せねば男じゃないわいっ」
すぐにシュベルト伯爵とローズ姫が呼び出され、「今すぐ婚約発表するぞっ」と鼻息の荒い国王を呆然として見ていた。




