6話
帰りの馬車の中で、アーサーから精霊との付き合い方を教わり嬉々として屋敷に帰った。
夕食までの間、アーサーの部屋で精霊を呼び出し、色々話しをしたり精霊術の基礎を教わったりして過ごした。
ロバート抜きの夕食の時、ふと気になっていたことをフローリアに尋ねた。
「そういえば、リアは友達いないの?」
「子供の頃から武術ばっかりだったから、友達はクレアだけね」
「他の貴族のご令嬢とかご子息とかは?」
「晩餐会で会うくらいで、普段が交流がないわ」
「姫様は普通に接するのですが、相手が媚を売ってきたりして大変なんです」
「そうそう、私と結婚すれば公爵家を継げるから、そういう目でしか見てくれないわ」
「あはははは 身分があるのも大変なんだね」
「そういうアーサー君だって身分がバレたら大変よ。なんたって王子様なんだから」
「そういうのは嫌だな~」
「アーサー君も友達作れないかもね」
「リアやクレアさんがいてくれるでしょ。
他にも沢山の仲間や友達に支えられてるからね」
「シロやウンディーネさん達のこと?」
「それ以外にもランバートさんやロバートさんに騎士団の人達、みんなが助けてくれるよ」
「私達が助けられてばかりだと思うよ」
「リア達と出会えて、僕にも守りたいものができたんだ。漠然としてた思いが具体的になった気がするんだ」
「私も及ばずながらお手伝いします」
「わたくしも、ただ守られてるよりはお手伝いさせていただきます」
「ありがとう。頼りにしてるよ」
「「はい」」
「話は変わるけど、昨夜伯父上が結婚するぞっって帰って行ったけど、お相手は誰なんだろう?」
「陛下が?もしかしてローズ姉さんのことかしら?」
「ローズさん?」
「私の従姉でシュベルト伯爵家の長女よ。前々から噂はあったから」
「そうなんだ~、上手くいけばいいね」
「そうね、私も応援しなくっちゃ」
食事の後、それぞれ部屋に帰って行った。
アーサーが部屋に帰ると、ソファーに二人の男女が座っていた。
金髪に金の瞳の男性がアーサーに声をかけた。
「アーサー、久しぶりだな」
「お義父様、お義母様、おひさしぶりです」
「坊や、元気そうね」
と優しい笑みを零した。
「アーサー、あの『黒い靄』のことじゃが、やはり『混沌』の残滓のようじゃ」
「この世界が作られる前の『混沌』のことですか?」
「そうじゃ。創造神様が世界をつくったおりに、見逃してしまったのじゃろうな」
「それがどうして今頃でてきたのでしょうか?」
「ただの濃い魔力だったものが、人間の欲望を吸収して意思を持つようになったのじゃろう。人間ほど欲望の強い生き物はおらんからな」
「それで、人間を操って戦を巻き起こし、混沌とした世界へ?」
「人間同士が争えば、自然が壊され他の生き物達も生きていけなくなる。
そうなれば世界の理を乱す者として、ワシが人間を滅ぼさねばならなくなるからな」
「坊や、神が人間を滅ぼすとき、どうすると思う?」
「大地震や洪水などでしょうか?」
「そうなると滅びるのは人間だけじゃないわね」
「でも、お義母様、何も生き物がいなくなっても、『混沌』には戻らないんじゃないでしょうか?」
「何も生き物がいなくなってしまえば、我々神も必要なくなるでしょ。
神すらもいなくなった世界を『混沌』に変えるのは時間がかかっても容易いことなのよ」
「そうですね、ただ破壊して混ぜ合わせていけば良いだけですものね。
それではお義父様もお義母様も手伝っていただけるのですか?」
「アーサー、今の段階では無理じゃ。
今は人間の間だけの問題じゃからの。
『黒い靄』仮に『澱』と呼ぶが、こやつらが直接人間や他の生き物を攻撃するならば、我等も介入できるが、いまのところ直接手をくだしているのは人間じゃ。
種族内の問題に神は手をくだすことはできんのじゃ。
神は理を作り出すが、理に縛られる」
「それでは『澱』と同じように間接的になら、お手伝いいただけるんじゃないですか?」
「そういうことじゃ」
神は2本のレイピアを取り出した。
「アーサーがノームに頼んだものに、ワシが手を加えたものじゃ。
このレイピアから魔術を発動させれば『神気』を含ませることができるようにしておる。
これなら精霊と離れておっても戦うことは可能じゃ。
柄には精霊石を2つ埋め込んであるから、いつも精霊を身近におくこともできるぞ」
「ありがとうございます」
「坊やの可愛い彼女を守る為ですもの、なんでもないことよ」
「作ったのワシなんじゃが……」
「それから、お願いがあるんですけど……」
「なに?」
「伯父上がご結婚されるらしいんですが、大神殿が例の偽神託で邪魔をしそうなんです」
「あら、それなら紋章でやっつけるんじゃなかったの?」
「あははは それとは別に、僕のダガーのように神の紋章の入ったものを贈れないかと」
「坊やからの贈り物としてならいいわよ」
とアーサーのダガーよりは小ぶりな短剣を2振りとりだした。
「1本は『知の神』の紋章、もう1本は私の紋章よ。
結界を張るくらいしか力はないけど、身に危険が迫ったら勝手に結界を張ってくれるわ」
「ありがとうございます。これで両親のような事態は防げますね」
「そうね。なにか不安があったの?」
「どうも大神殿が気になってるんです。もしかしたら『澱』の巣なのかもと……」
「それはあるかもしれんな。
人が祈りには純粋なものだけでなく欲望もあるからな。
特に貴族などの欲望の強い人間が集まる場所なら可能性は高いな」
「坊や、気をつけるのよ。私達に世界を破滅させないでね」
「はい、全力をつくします」
「それと、はやく孫の顔みせてね。うふふ」
笑い声とともに2人は姿を消した。
「孫って……」




