15話
アーサーが城に来て7日が過ぎた頃、フローリアとクレアでロレンツォの町を案内してもらうことになった。
コンコン
「アーサー君、用意できた?」
「いつでも行けるよ」
「あら、そんな格好で行くの?」
アーサーは城に来た時に来ていた狩人姿だった。
「このほうが動きやすいからね」
実は、外出の知らせを聞き侍女さん達が着せ替えを始めようとしたのだが、面倒だったのでこの姿にしたのだ。
大通りを歩き露店を見たり、買い食いを楽しみつつ町を散策していた。
その間も周囲の店や歩いてる人達から「ひめさま~」と声をかけられフローリアも笑顔で対応していた。
「そういえばアーサー君の武器って、そのダガーだけなの?」
「一応ひととおりの武器は使えるよ」
「じゃあ武器屋に行ってみない?」
「面白そうですね」
3人は公爵家ご用達の武器屋に向かった。
武器屋の前でウロウロしている見知った顔をみてアーサーは声をかけた。
「ダンクルさん、何してんの?」
「あっ、これはアーサー様、姫様、クレア様」
「アーサー様はやめてよ。いつも通り小僧でいいですよ」
「いや~ 前から使ってた剣にヒビが入っちゃって新しいのが欲しいなと思ってるんだけど、高そうだな~と」
「ダンクル?この前衛士隊に入った人だったっけ?」
「そうです。そのダンクルです、姫様」
「私達もここにひやかしに来ただけだから、一緒に入りましょうよ」
「よろしいのですか?」
「ダンクルさん、姫様がご一緒だったら安くしてもらえますわよ」
「あはははは そういうことだから、ダンクルさんも一緒に行こう」
アーサーはダンクルの手を引っ張って中に入っていった。
店主らしき人が出てきてフローリアに挨拶をした。
「姫様、いらっしゃいませ。本日は何かお探しで?」
「適当に見せてもらうわ」
「ごゆるりとお探しくださいませ」
「ダンクルさん、今まで使ってた剣見せてくれる?」
「これなんだが……」
「うひゃ~ 根元にヒビがはいっちゃてるね」
「そうなんだ。昨日鍛錬の時に受け損なって変な止め方したらこの通りさ」
「この剣じゃダンクルさんには軽くない?」
「そうなんだが、買った時は金がなくてな」
フローリアとクレアは陳列棚を見て指差した。
「あれなんかどう?」
店員が慌てて近寄ってきて、陳列棚から剣を取り近くに持ってきた。
「ダンクル、広いところで振ってみなさい」
「はい、姫様」
ブンブンと大きな音をたて振り回してみた。
「どう?」
「もう少し重いほうが……」
アーサーは陳列棚の上に飾ってある大剣を見て店員に取ってもらった。
「ダンクルさん、これは?」
受け取ったダンクルはズッシリとした手ごたえを感じ笑顔になった。
「少し振ってみてもいいかな?」
と店員に尋ね振りはじめた。
しばらく振ったあとで満足そうな顔をして店員に聞いた。
「これいくらするんですか?」
「白金貨2枚です」
「うへぇ~~~~~ とてもじゃないが手がでねえ」
「店員さん、店主に安くするよう言ってきてくださいませんか?」
「ちょっと聞いてきます」
「僕も一緒に行って頼んでくるよ」
とアーサーは店員の後を追った。
「騎士団にも衛士隊にも大剣使いはいないから、買えれば面白いわね」
「姫様、面白いのはいいんですが、我々の給金では……」
「あははは それもそうよね」
「やっぱり普通の剣で我慢するしかないかな」
「金貨2~3枚だったら私の小遣いで出してあげられるけど……」
「いえいえ、姫様にそんなことしてもらったら、みんなから袋叩きにされますよ」
アーサーが先ほどの大剣と普通の剣を持って帰ってきた。
「ダンクルさん、これ」
2本の剣を差し出した。
「?」
「僕からの入隊祝いだよ」
「そ・そんな……小僧にそんなことしてもらっちゃ……」
「あははは 気にしないでよ」
「アーサー君、そんな大金持ってたの?」
「うん、白金貨200枚と魔力石たくさん持ってるよ」
全員が目を丸くした。
「アーサー様、でも何故普通の剣も?」
「それはおまけなんだって」
「おまけ?」
「それに大剣と剣の2刀使いなんて面白いなって」
「小僧……いや……アーサー様、大事に使わせてもらうよ」
「ダンクル、よかったわね」
「姫様、精一杯精進して強くなってみせます」
後にダンクルは『双剣の狂獣』という二つ名で大陸中に武名を轟かせることになるのである。
何度も頭を下げながら出て行くダンクルを見送った後
「アーサー様は剣をお持ちにならないのですか?」
とクレアはたずねた。
「一応持ってるけど狩りには使わなかったね」
「どうしてですか?」
「森って木が沢山あるでしょ?だから長い武器は使い辛いんだ」
「アーサー君、どうやって狩りしてたの?」
「素手」
「アーサー様の強さを知ってるから納得できますけど、普通は無理ですわね」
「そうね~ アーサー君なら納得できるわね」
「でも、姫様のお傍にいるときは見せかけでも剣を持っていただきたいですわ」
「なんで?」
「世の中には剣を見ただけで近寄らない悪人も多いからです」
「そんなもんなのかな?」
と言いながら何も無い空間から1本の長剣を取り出した。
黄金の鞘には立派な装飾が施され、黄金の柄には魔力石と精霊石がはめ込まれていた。
店主が駆け寄ってきて
「少しお見せいただけますか?」
とアーサーに問いかけた。
「うん、いいよ」
店主は鞘から剣を抜き刀身をみて不思議そうな顔をした。
「この剣の材質はみたことがありません」
フローリアとクレアも首をかしげた。
「この剣は芯にミスリル、外側はオリハルコンだよ」
「ミスリル?オリハルコン?それって神話時代の伝説の?」
「珍しいの?」
「このような物を何処で手に入れられたのですか?是非教えてください」
「貰ったんだけど」
「貰った?こんな凄い物を?」
「うん、地の精霊王がくれたよ」
「精霊王?」
「ノームって名前なんだけど、僕の友達だよ。
この剣なら剣技でも魔術でも使えるからってくれたんだ」
「この鞘と柄も金ではありませんな」
「それは神龍の鱗だって聞いてるよ」
「……」
全員唖然として声もでなかった。




