12話
昼食は公爵家の食堂でとることになった。
ランバートとアーサーが待っていると、クレアとフローリアが支えあうように入ってきた。
「フロー、随分扱かれたようじゃな。クレアも一緒に座れ」
「わたくしも一緒でございますか?」
「おお、鍛錬の感想も聞きたいからの」
「お爺様の鍛錬の倍はきついです」
「わたくしも……身体中が痛くて……」
「ええ~まだ序の口ですよ」
「「アーサー君(様)の鬼っ!!」」
「だってまだ基礎の準備段階ですよ?」
「「はぁ~」」
「それにしても、アーサー君の組み手は素晴らしかったな。あの流れるような動きは舞をみているようじゃった」
「あれは、ただシロの攻撃を流していただけです。5歳の時にはできましたよ」
とサラリと言った。
「「わたしたちは5歳以下……」」
「身体が慣れてくれば、すぐできるようになりますから、安心してください」
「「がんばりますっ」」
「アーサー君、午後からはフローリアに色々教えてもらってくれ」
「よろしくお願いします」
普段はフローリアが家庭教師から勉強を習っている学習室に場所を移し、まずはアーサーの知識の程度を測るため簡単な質問から始まった。
「アーサー君、文字は読み書きできる?」
「はい、大陸中の言葉なら問題ないです」
「大陸中全部?」
「はい」
驚いた顔で(今度教えてもらおうっと)などと思ったのは内緒である。
「大陸の地理は?」
「国の名前や場所はわかりますが、領地とか領主とかは知らないです」
「この国のことも?」
「ええ、森の名前や森のボスは知ってるんですけど、人間のことは……縄張り争いしたことないですから……」
「アハハ 森の獣とは領地争いなんてしないものね。じゃあ爵位のことは?」
「貴族が支配者ってことは知ってます。森でいうボスのことでしょ?
すべての獣の頂点が『神獣』でこれが王様、森のボスが貴族、森の獣が平民って感じですか?」
「そうね。それで良いと思うわ。
それじゃあ、まず貴族の説明をするわね。
貴族の種類は『公爵』『侯爵』『伯爵』『子爵』『男爵』の5種類で、階級もこの順番よ。
この階級の差は絶対的なもので、上位の貴族に無礼をはたらくことは許されないわ。
殺されても文句言えないってことね。
もちろん理不尽に殺すことは許されないけどね」
「じゃあ、この前の子息をリアが殺しても問題にならないってこと?」
「そう、あの馬鹿息子は公爵家の領民を理不尽に殺そうとしたし、私に無礼を働いたから問題ないわね。
ましてや爵位最下位の男爵家が最高位の公爵家にした振る舞いだから、だれからも咎められないわ」
「怖いですね」
「それから、この国では貴族の数が決められてて公爵4家、侯爵8家、伯爵16家、子爵32家、男爵40家の100家だけなの」
「思ったより少ないですね」
「跡継ぎがいなかったり、罪を犯したりして爵位を返上させられたりした場合だけ新しい貴族ができるわ。
他国のように分家した場合に爵位を授けることはないから貴族は増えないわね」
「じゃあ、長男以外はどうするんですか?」
「当家のように男子がいない貴族に婿養子にいったり、子供のいないところへ養子にいくことが多いわね。
あとは騎士になるとか役人になるとかね」
「爵位によっての違いってあるの?」
「上位貴族と呼ばれるのは伯爵まで、子爵と男爵は下位貴族と呼ばれてるわ。
下位貴族は王から呼ばれない限り王との謁見はできないわ。
公爵家は王族の親戚筋になるから、王位継承権をもってるわ。
大きな違いはそれくらいね」
「領地はどうやって決めるの?」
「これは代々受け継がれているだけだけど、爵位が上になるほど広い領地を与えられてるわ。
貴族の収入は領地での税収がほとんどね。
お父様のように国の役職についていれば国からの報酬もあるけど」
「税収が収入のほとんどだから、バーニング男爵領のように領民が生活できないような税を徴収する人もいるってことですね」
「税の額は国から決められてるの。
所得の4割ってね。
それの半分を国に収めるようになってるの。
バーニング男爵については、お父様配下の者達が証拠集めをやってるから、もうすぐ裁かれるから安心して」
「それで見逃したんですね?」
「アハハ お父様の邪魔しちゃダメだからね。
アーサー君のお陰で公爵家に対する不敬罪まで追加できるわ。
貴族に関してはこれくらいかな?」
「貴族同士は仲が良いんですか?」
「難しい質問ね。
表面的には争ってないけど、派閥はあるわね」
「派閥?」
「お互いの利害で結びついた人々によって形成する集団のことよ」
「よくわかんないなぁ~」
「たとえば政治で力を持った貴族と仲良くなれば、自分も政治で力を借りることができるとか、武力で力を持った貴族と仲良くなれば……とかよ」
「へぇ~、群れ同士のライバル関係?」
「そうそう、そんな感じ。実際はお互いの親族同士を結婚させて仲良くなったり、貢物をして媚を売ったりするみたいね」
「レジアス公爵家も派閥に入ってるの?」
「あははは うちは公爵家だから派閥のボスね」
「それじゃあリアのお婿さんになる人は大変だね」
「私より強くて正義感があって領民に優しくて……」
「リアより強いってだけで充分難しそう……」
クレアがお茶を用意して初めての勉強は終了した。




