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視線の先

そこには…

「あのバカ戦士、なんで一人で突っ走っちゃうのよ」

「そうよ、か弱い乙女を守る為にパーティ組んであげてるのに…」

「酒場のマスターも『森に入るなら前衛がいる』とか言ってたけど、ここ弱いスライムとかドラキーしかいないじゃない」


 人間が二人。

 黒いとんがり帽子に木の杖。

 白と青の服に、木のメイス。

 魔法使いと僧侶か。

 おそらく女子なのだろうが、今の俺の目には「人間」としか映らない。


 ゆっくりと歩いてこちらに向かってくる。

 俺たちスライム相手に警戒すらしていない。

 しかし、突然魔法使いは杖を振りかざし「メラ」と唱えた。

 火球を受けた一匹のスライムが、コアになって転がる。


 なんで…なんで…俺たちが何をしたっていうんだ…


 怒りに震えながらも、俺の頭は何故か冷えていく。


 魔法使いはメラしか使えないのか?ギラやイオがあるのか?

 僧侶は回復呪文のホイミは使うだろうが、攻撃呪文はバギがあるかも。

 ニフラムには警戒をしておこう。

 とにかく、固まっているのはまずい。


「みんな、逃げろ!」

 俺がそう言って逃げ出すと、イムオがついてきた。

 そこからは、集まっていたスライムたちは散り散りに逃げ出した。


「待てー逃げるなーざーこー。メラ!」

 振り返るとミルンさんは、逃げる俺たちをかばって火の玉の直撃を食らっていた。

「ミルン!逃げるんだ!こいつらは魔法を使う!」


 俺はもう振り返らないで森の中を走った。

 それから大木の裏に回り、へたり込んだ。

 べちゃっと広がった俺の上で、イムオが同じような姿勢になっている。

「よかった、イムオは無事だったんだな」



 しばらく大木の裏に隠れていると、数匹の仲間が集まってきた感覚がある。

 何故か、仲間といると安心できる。

 俺とイムオ。ミルンさん。ホイミスライム。何故かいるバブルスライム。

 計五スライム。

 遠くで「ざーこ、ざーこ、でてこーい」と言う声が聞こえてくる。


 どうするか


 逃げるか、戦うか。

 しかし、この戦力で…素早さがありそうなミルンさんかホイミスライムを遊軍にして、俺とイムオが前衛…

 現実的ではないか。

 俺もイムオもメラ一発耐えられないかもしれない。

 森の中なら、あるいは……




「あーゴーストだー!」

 人間たちは「あっかんべー」をしているゴーストを見つけたようで、戦いが始まっている。

 ゴーストを巻き込んでしまうが、どのみちあの人間たちは森のモンスターを狩りに来ているのだろう。


「よし、戦おう」


 手短に作戦を伝える。

 ミルンさんとホイミスライムはゴーストを回復してもらう。

 ミルンさんもホイミスライムもある程度魔法に耐えられるというので、危険だが任せよう。

 その隙に、俺とイムオとバブルは別方向から人間に忍び寄って転倒させてからの窒息攻撃を狙う。

 戦士よりも非力な人間なら、出来る可能性は高いはずだ。


 俺たちが作戦を開始しようとすると、ミルンさんが

「最悪私が引き付けます。時間稼ぎは得意ですよ。あなたが皆を連れて逃げるのです」

 そう言っていたミルンさんは、かわいいけど男前だった。


 だが、俺は逃げたくない


「イムオ、あの時の人間を倒したのは覚えているな?顔を狙うんだ」

「イムオ!ボク、イムオ」

 不安だが、やるしかない。

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