CASINO☆
舞台は変わって…
「もうすぐ次のレースの締め切りだよ!」
おっちゃんの声がレース場のスタート地点の俺の元まで響く。
さて、次はどうしようかな。
マジメに走ろうか、手を抜いて流すか。
ここは、とある街のカジノ。
俺はスライムレースに参加している。
カジノの中にある、直線のコースを計五匹のスライムで競争する。
そして、一着二着を連番で当てさせる博打の出場選手だ。
なんでこんな所にいるのか、俺にもよくわからない。
自分の名前も、わからない。
しかし、まわりには俺と同じスライムがたくさんいる。
みんなで「きゃっきゃ」して走るのは、たのしかった。
何より仲間がいると安心できる。
「きょうもまけないぞー」
「ボクだって」
「もうはしるのつかれちゃった」
毎日、スライム同士でこんな会話をしながら、そこそこ楽しい毎日を送っていた。
「ほら、今日もご苦労さん」
いつものおっちゃんが来て、俺たちスライムに食事をくれる。
野菜のクズや、肉がちょっとだけついた骨とか、人間の残飯らしいものが大半だ。
それでも、みんなでワイワイと食べる食事は楽しかった。
そうだ、楽しかったんだ。
あの時までは
カジノは深夜でも早朝でも開いている。二十四時間開いている。
俺たちは交代で、カジノの建物の裏手にある控室に移動した。
室内の広い檻の中で、みんなで休憩したり、食事を摂ったりしていた。
そして、たまに来る覆面の人間が「差し入れ」と称して、謎の肉をくれた。
その日も、その覆面が来た。
血の匂いを漂わせながら、勝手口から来た覆面は「人間の死体」を担いできた。
そして、檻の鍵を開けて死体を投げ込んだ。
「今日もちゃんと残さないで食ってくれよ」
そう言い残して、覆面は立ち去った。
俺は何も考えず、いつもの食事だと思っていた。
「おまえ、あたま、いいな」
隣で同じように食事をしているスライムにそう言われた。
そうだ、人間の頭はいいものだ。
俺たちのコアに相当する。
俺、なんでそんな事を知っているんだ?
今ここには、俺と同じ青いスライムしかいない。
人間の、おなかの上にいるスライムが、人間の血管を溶かしたのか、血が吹きあがった。
「うわ、目にはいったーきゃっきゃ」
「あははーまっかっか」
真っ赤に染まったスライムも、他のスライムも楽しそうだ。
隣には、怪我をした時に備えて青いホイミスライムがいた。
ホイミスライムも、人間を捕食していた。
赤く染まったスライムと、ホイミスライムを見て、思い出した。思い出してしまった。
赤いベホマスライムのミルンさんを。
そうだ、なんで忘れていたんだ?
人間の頭を吸収したからか。
俺の思考は、記憶は徐々にクリアになっていく。




