生き残った魔法使い
スライムのサブたちの元から離脱した魔法使いの報告からです
「報告は以上。報酬を。仲間を生き返らせに教会にいかなければならない」
王城の一角。
兵士詰め所で魔法使いの報告を聞いていた師団長は、無言で金貨袋を魔法使いに差し出した。
魔法使いが立ち去った後、私は師団長に問うた。
「師団長、あの話を信じるのですか?本当に魔王軍の残党がいると?」
「グエン隊長。他の隊長に招集を掛けよ。その時に皆で吟味しよう」
そうして、私たちは軍議に入った。
円卓に集まったのは八名。
私を含む、部隊長六名と師団長、それと書記官。
「皆、集まったな。書記官、先ほどの件を手短に説明してくれたまえ」
「はっ。では、清聴願います」
あの魔法使いの報告は端的にこんな感じだ。
「指示通り、スライムの森に行くと、大量のスライムが組織だって動いている」
「指揮官のメタルスライムを捕縛しようと追跡した所、落石の罠に遭いパーティ半壊」
「生き残った武道家と魔法使いは追撃を試みると『キラーマシン』が出現」
「おそらく、キラーマシンに守護された『魔王軍の幹部』が潜んでいる」
先ほどの魔法使いは、この王都所属の冒険者だ。
彼らの力量を評価した軍部が、彼らに「偵察」兼「可能なら制圧」を過去にも数度依頼している。
今回も、辺境の街から王都へ来た「救援依頼」を彼らに委任したのだ。
私自身も直接手合わせした事もあり、実力は本物だ。
そして、生き残って戻ったのは、あの魔法使い一人だった。
にわかには信じられない内容だが、嘘をついても彼らにメリットはない。
「諸君の率直な意見を聞きたい」
師団長の言葉に、順番に皆答えていく。
概ね、私と同じ「組織的なスライム」や「森でキラーマシンの出現」の「信憑性」を疑う声が多い。
しかし、魔王軍の残党はいる。
噂だけでなく、実際に討伐隊を出して戦果を上げた事もあった。
そして、あの冒険者パーティは信頼できるという意見も多い。
「うむ」
全員の意見を聞いた師団長は、数分考えてから
「半分の隊に、現地に向かってもらおうと思う。組織的に動くスライムなど聞いたことがない。魔王軍にしろ、何にしろ、背後に何かいるであろう。人類の敵が」
そうして、私たちの部隊も「スライムの森」へ赴くことになった。
師団長の右腕である私が総大将として、我がグエン隊を含めた、総勢百五十名からなる兵団は、王都を出立した。
・罠がある
・弱者であるスライムに混ざり、強敵の出現
以上の二点を踏まえ、森に進入した際には、単独行動を禁じた。
常に数的優位に戦い、逃げる相手には警戒し、深追いをしない。
予想外の強敵の出現を警戒し、連携、連絡を密に行う。
以前、勇者が魔王討伐に向かってから、魔物が街や村を襲う事はなくなった。
魔王を倒したのかは定かではないが、勇者は帰還していない。
そうした状況から「勇者と魔王は差し違えた」のではないか、と言われている。
地域によっては、魔物の脅威は残っている。
そして、魔王軍の残党が実際に潜んでいる。
辺境では、野生動物もモンスターも多い。
犠牲はゼロにはできない。
しかし、魔王軍残党の芽を摘む事が出来れば、人類の生存率は上がるはずだ。
我々「兵士」の役目は、昔からそうやって「人類を守る」ことだ。
そうして、人類を守り、我々自身を守る為に、十分に警戒して森へ進入した。
警戒しすぎて、損することはない。
ないのだが…
本当にこの森に、強敵などいるのか?
出てくるのは、弱いスライムしかいない。
実際に、落とし穴などもあるにはあったが、事前にわかっていれば脅威ではない。
報告に上がっているのは
「低位スライム数種、ドラキー、ゴースト、おおきづち、いっかくうさぎ、いたずらもぐら」
数はそれなりだが、上位種や亜種などもいない。
キラーマシンやドラゴンなどの強敵が出てくることはなかった。
三日間、調査とモンスター討伐を行った。
他の隊長との話し合いの結果
「ここに強敵はいない」
との結論に達した。
回収したコアの数も数百になっている。
四日目の朝、帰路に就いた。




