助けたスライム
巨人(人間)を倒し、助けた(助かった?)スライムと共に行動することに
俺は先ほど助けたスライムと共に、森に入っていった。
このスライムに色々と質問したが
「わからない。おまえ、たすかった」
との答えだった。
そして、名前を聞いても
「なまえ、ない。おまえ、ある?」
名前という単語自体は知っているようだが、名前はないらしい。
そして、俺も思い出せない。
頭の中のモヤの向こうだ。
なんでスライムになっているのか
名前はなんだったのか
どうすればいいのか
疑問は尽きないが、何故か
「まあ、とりあえず生きていればいいか。仲間もいるし」
といった感覚が大きい。
深く考えようとしても、スライムの脳がそれを拒んでいる気もする。
「先ほど助けたスライム」と言うのも言いにくいので、「スライム」の後ろの文字「イム」から「イムオ」と仮の名前をつけておこう。ちなみに「スラ」が苗字だ。仮だが。
「もり、かえる」
イムオがそう言って森を目指してポヨンポヨン移動し始めた。
人間も喰ったし、帰ろう。
帰るってどこへだ?
あれ?
手足が無いのに、どうやって移動するんだ?
次々と疑問が沸くが、「まあ、いっか」とイムオについて行く。
体は心配しなくても動いてくれた。
ぽよんぽよん移動だけど。
「イムオ、どこに行くんだ?」
「ぼく、イムオ!イムオ!」
嬉しいのか、また体当たりをして跳ねている。
人間を喰った後だからか、さっきよりも力強い。
俺も一緒に、喜びのその場ぽよんぽよんを数回してから、再度問う。
「で、イムオよ。すみかがあるのか?」
「イムオ、おうち、かえる」
とりあえず、ついて行けば何とかなりそうだ。
森に入って体感一時間くらいか。
かなり深い森だ。
木々の枝葉が重なり太陽は見えない。
時刻は昼間だろうが、見上げても無数の木の枝と生い茂る葉で暗い。
だけど、俺の目は良く見えている。
そして、この先に何体かの「仲間」がいるのがわかる。
世界の謎や自分の記憶よりも、今は“スライムの仲間”のほうが安心感をくれた。
安堵感がこみ上げてくる。
若干森が開けた。
足元は「泥」のようだ。
足は無いけど。
湿った土や泥の上は心地良かった。
「ただいま!」
イムオが大きな声で、そう言うと、藪から十数体のスライムが出てきた。
青だけではなく、茶色のブチや赤いものもいる。
そして、ふわりと浮かび上がる青いスライムには黄色い触手が生えている。
「おお!ブチにベスにホイミだ!」
テンションが上がって声を出しそうになるのを、なんとか耐えた。
「ぼく、イムオ!なまえ!なまえ!」
イムオはピョンピョンと跳ねまわって、周りのスライムに体当たりしている。
「おかえり」
「あら、なまえ?」
「おまえ、イムオ」
「にんげんのにおい」
「もうひとり、どうした」
なんだか俺が思っていたよりも、スライムは自由な生き方をしているみたい。
会話になっておらず、皆が思い思いを口に出している。
しかし、思っていたよりも仲間が多くて安心できた。
これはきっと、スライムの習性なのだろう。
群れる訳ではないが、仲間がいると安心できる。
そう思っていると、イムオが上空に浮いている!?
若干苦しそうに「ぐぎぎ」と声を上げた。
「なんだ?おい、イムオ!大丈夫か?」
俺は咄嗟にイムオに駆け寄る。
「あなたは流れのスライム?彼に名前をつけたのはあなた?」
周りのスライムたちに慌てた様子は無い。
敵ではないのか?
声は上から聞こえる。
俺は身構えながら、ゆっくりと上を見上げる。
中空に浮かぶ赤いスライム。
その下から、半透明の無数の触手がイムオを掴んでいた。
「ベホマスライム!?そんな上位種までここにはいるのか!」
俺は驚愕から、叫んでしまった。
ベホマスライムに連れられて、湿地を抜けた池の中の孤島に来た。
いや、触手に捕縛されて連行されたような感じだ。
しかし、嫌な感じはしなかった。
湿地の一部はピンクや緑の鮮やかな土地があり、見るからに「毒ですよ」と言わんばかりの色合いの植物も茂っていた。
その中に、緑色のゼリー状の生き物が数体蠢いているのが見えた。
きっと「バブル」だろう。
「さて、あなたは何者ですか?触れた感じはスライムのようですが」
孤島に隔離された時、俺は安心していた。
同じスライム仲間だし、ここは安全な場所だと。
しかし、今、俺を問いただしているベホマスライムは構えている。
宙に浮かび、二本の長い触手を振り上げている。
明らかに戦闘態勢だ。
ただのスライムの俺が戦っても勝ち目はないだろう。
こうなっては仕方がない!
奥の手を使う!
「ピギー!ボク、悪いスライムじゃないよ!」
……
……
ベホマスライムは構えを解かない。
この奥義は人間にしか通用しないのかもしれない。
ベホマスライムの触手が動いた。
素早さ的に、躱せないか……
ベホマスライムは二本の触手を自身の顔の前でクロスさせて
「ぷっ、何の真似ですか、それは」
なにか、ツボに入ったようで、ケタケタ笑い出しています。
俺も助かったからか、体が勝手にポヨンポヨンと跳ねてしまっていた。




