寝て起きた
某国民的RPG
そんな世界のスライム
「大きな木に囲まれたはらっぱだな」
最初の感想。
その時は、特に何も疑問なんてなかった。
寝てたみたいで、目が覚めた。
軽く伸びをする。
草の上で寝てしまったみたいだ。
周りを見渡す。
巨大な木々が鬱蒼と茂った森の中。
自分がいる辺りだけ、木々が少なく、緑の草がたくさん茂っている。
「さて、今日はどうしようかな」
特に目的もなく、移動を始める。
正直、この時は何も考えてなどいなかった。
仲間の気配がする。
森の先か?
助けを呼んでいる?
理由は無い。
直感がそう言っている。
俺は急いで向かう。
仲間
助けないと
それだけが、俺の体を突き動かしていた。
森を抜ける。
これは!?
朝日に照らされた巨人がこん棒を構えている!
狙いは青く丸い物体が二つ。
あれはスライム?スライムではないか!
巨人の木で出来たこん棒が振り下ろされた。
一体のスライムは体に力を入れて踏ん張っている。
しかし、巨人の一撃を受けた青い体は四方に飛び散り、絶命した。
なんだ?
俺の体の中心から湧き上がるこの気持ちは?
怒り?
悲しみ?
恐怖?
巨人は強い。
逃げた方がいい。
だが、“仲間”をやられて、逃げるのか?
もう一匹のスライムは、果敢に巨人に体当たりをした。
こん棒を振りぬいた巨人の背中は隙だらけだ。
巨人の腹めがけてジャンプしたが、こん棒で防がれた。
いきり立った巨人は、スライムを蹴り飛ばした。
そして、またこん棒を振りかぶる。
いけない!
このままでは、あのスライムも巨人にやられてしまう。
俺は後先を考えずに、巨人に向かって走った。
勢いをつけた俺の体当たりで、巨人はバランスを崩した。
「おい、今のうちに逃げよう!」
俺は咄嗟にスライムに話しかけた。
しかし、転がっていたスライムは、ジャンプ一番、巨人の顔に体当たりをした。
巨人は鼻から血を流している。
やれるのか?
しかし、“俺たち”のこの体ならば、体当たりよりも……
ジャンプしても届かなさそうだ。
俺は巨人の足元に向かって走る。
「おい!足を狙って転ばせてくれ!」
返事は無い。
だが、俺は巨人の足元へ転がり、足首めがけて体当たりをする。
当たった。
しかし、巨人は僅かにふらついただけで倒れない。
ふらつく足元で、数歩下がってこん棒を振り上げ……られなかった。
巨人の後方に回ったスライムにつまずいた巨人は転倒した。
俺は咄嗟に巨人の顔に張り付く。
口と鼻をふさげば、勝てる!
直感に従ったが、巨人の手が俺を引きはがそうと伸びてきた。
まずいな。
もっと「ぺた」っとくっつくはずだったのに、粘着が弱くて引きはがされる。
「おい、アンタ。俺を押さえつけてくれ!はやく!」
巨人に踏まれて悶えていたスライムは、俺の上に飛び乗った。
二人がかりで、巨人の手を跳ねのけて、巨人の顔をふさぎ数分。
巨人は動かなくなった。
「やった!勝ったぞ!」
巨人の顔から降りた俺に、スライムは体当たりをしてきた。
「痛いな!何をするんだ!」
「おまえ、つよい、すごい」
ああ、嬉しそうに跳ねまわってる。
そうか、喜んでもらえたのなら、良しとしよう。
俺も嬉しくなって、一緒にしばらくポヨンポヨンと跳ねた。
「ああ、でも……友達がやられちゃったな」
「トモダチ、コア、おまえ、喰う」
「え、でも、俺が貰っていいのか?」
「いい。にんげん、ちょっともらう」
俺は何故か知っていた。
魔物は死ぬと「コア」とか「核」と呼ばれる「玉」になってしまう。
それを他の魔物が食らう・吸収する事で、能力が僅かに上がる。
「じゃあ、コアは貰おう。人間は半分こにしよう」
「にんげんのあたま、おまえの」
そうして、俺は「スライムのコア」と「人間の脳」を喰った。
そう、「巨人」だと思っていたのは「人間」
俺は、俺の体は小さな「スライム」になっていた。
人間を喰ったからなのか、コアを吸収したからなのかわからないが、俺は色々思い出してきた。
俺は、今倒した「人間」だった。
何故か、「スライム」になっている。
さっきまでよりも思考は鮮明だ。
記憶もモヤに包まれているような感覚だが、ある。
…
…
推定、俺は日本人の男子。きっと男。
浮かんだ一人称が「俺」だったからだ。
年齢は…わからない。
倉庫のような場所で、何かをするのが仕事だったようだ。
そして、家に帰って「ゲーム実況」の動画を見ていた。
いや、何か違う。
動画を「作っていた?」
国民的なゲームを、何か制限を設けてやっていたような気がする。
この辺りは、何故かよく思い出してきた。
「初期装備で、どこまで行けるのか」とか、「最弱のモンスターを仲間にして、そのモンスターだけでクリアを目指す」
そんな「縛りプレイ」動画を作成して、動画サイトにアップしていた。
あの日も、仕事から帰って、一人でカップラーメンを食べながらゲームをしていたんだ。
そして寝落ちした。
薄れる記憶の中で「明日は休みだし、寝てしまおう」そう考えていたんだ。
「アナタは誰の味方ですか?」
そんな声が聞こえた。
「ええ?電話?主任かな」
俺は寝ぼけていた。
「いや、今日は休みだったハズですよ。シフト確認してください」
……
しばしの沈黙。
俺は目を開いているのか、閉じているのかわからなかったが、目の前は真っ白だ。
電話は切れたみたいだし、もう少し寝よう。
「言っている意味がわかりません。望みを言いなさい」
「あれ、夢かな?望み?んーと、最弱のスライムで!」
なんか、変な夢だったなー。
明日はゲームの続きと、動画編集しなきゃ。
少ないけど、見てくれる人もいるし、がんばらないと…




