マスターのひとりごと
街の酒場の一場面
「おかしいな。例の三人が森に向かってもう十日」
マスターは掲示板の前でつぶやいた。
「だからやめておけって言ったんだ」
カウンターに座る戦士クランクが、その独り言に返事をする。
その顔色は悪い。
マスターは一度「はあ」と溜息をついた。
「仕方ない。王城に兵士の派遣を依頼するか…しかし、スライム相手に動いてくれるかどうか」
静まり返った酒場は、ざわめき立つ。
「スライムの森に、軍隊?たかがスライムだぞ」
「まあマスターが依頼料を出すならいいんじゃね?」
「バン」と両手でカウンターテーブルを叩いてクランクは立ち上がり、酔っぱらいたちを見る。
「おまえたちのせいで三人の若者が帰ってこない!アンタらは西の洞窟に行けるんだろ?探しに行ってこいよ!」
「なんだとてめえ。ケンカ売ってんのか!」
「おお、いいぞ!やれー」
騒ぎ立てる客。
マスターは静かに告げる。
「はあ…ケンカは外でやってくれ。それと、煽ってるやつらは店が壊れたら弁償の請求書回すからな」
静まる酒場。
「しかし、あんたたち二人なら大丈夫だろ。森をさっと見て、報告してもらえれば報酬は払うよ」
マスターの言葉を聞いて顔を見合わせた酔っぱらいの一人が、
「西の洞窟で『わらいぶくろ』一匹倒せば百ゴールドだ。割に合わねえぜ」
と言ったが、もう一人が
「ああ、もうわかったよ。じゃあ明日見に行ってくる。すぐ帰ってくるから報酬用意しといてくれよ」
そう言って出ていった。
しかし、何日経っても彼らは帰ってこない。
「おかしい。本当にスライムの森に強いモンスターが現れたのか?まさか、噂の魔王軍残党でもいるってのか…」
マスターはカウンターで俯いている戦士クランクをちらりと見た。
「行方不明の冒険者として捜索依頼を出すか。四人パーティ、且つある程度の実力なんて考えると難しいな…兵士の派遣の件で一度町長と話してみよう」




