駆け出しパーティ 後編
三人組の盗賊トム視点です。
いつもの草原から、森に入っても、特別な事は無く順調だった。
出会ったスライムとドラキーをいつも通りの作戦で倒した。
ゴーストはメラ一発で倒せなかったが、ガジと俺の攻撃でダメージを受けずに倒せた。
「私、メラを一日十回まで使えるようになった」
出発前にライムがそう言っていた。
少しずつだけど、俺たちは強くなっている。
はじめて入る森で恐怖もあったが、モンスターを倒して強さを実感すると「嬉しさ」や「楽しさ」が強くなっていた。
「トム、案外楽な依頼なのかもね。帰ったら、ちょっと西の洞窟も行ってみる?」
体は大きいが、気弱なガジがそんな事を言っていた。
こいつも自信がついてきたのだろう。
五十ゴールドは何に使おうかな。
おっと、しっかりコアを回収しておかないと。
それから少し森の深い場所へ向かう。
おかしい。
風が止んだ。
モンスターも現れなくなった。
俺が「くちぶえ」を吹いても、何かが出てくる気配はない。
しかし、俺の勘は「周囲にモンスターがいる」と告げている。
「二人とも、油断するな!一気に数匹のモンスターがくるかもしれない」
警戒していたが、モンスターは現れない。
森が静かすぎる。
「あ!向こうに空飛ぶスライム!」
ガジの指さす方向に、黄色い触手を生やした青いスライムがいた。
「あれはホイミスライムだね。今の私たちなら倒せる!」
ホイミスライムの名前は聞いたことがあった。
ホイミは厄介だが、攻撃は大した事ない。
あいつはまだ倒してないな。
追加報酬があるかもしれない。
俺たちは、ホイミスライムに向かう。
ホイミスライムは、背中を見せてフワフワと飛んでいく。
俺たちは走って追いかける。
「背中に先制攻撃が出来る!」
そう思っていると、ホイミスライムは突然止まり、こちらを振り向いた。
俺とガジは早足で近付いて、攻撃をしようとした。
おっと!?
俺は危険を感じて、咄嗟に横に飛んだ。
落ち葉だらけの地面に見えるが、落とし穴だ。
「うわー」
俺の後ろをついてきていたガジは、勢いよく落とし穴に落ちてしまった。
「大丈夫か、ガジ!」
俺は穴の縁から中を覗く。
深いな。
大柄なガジの身長と同じくらいの深さだ。
そこには緑色の液体があるように見える。
この匂いは毒だ。
「ガジ、早く上がれ!手を貸す」
穴の縁に寝そべり、ガジに向かって手を伸ばす。
そんな俺の顔に黄色い触手が伸びてきて、頬をペチリと叩いた。
くそっ
邪魔をするな!
「ライム!こいつにメラを…」
ドンドンという腹に響く音。
背後から。
「キャー」
ライムの悲鳴。
バキバキという音と共に大きな木がライムめがけて倒れてきた。
ちらっと「おおきづち」のような姿が、見えた。
その倒木は、このままだと俺も巻き込む。
俺は地面を転がり、倒木を躱した。
「いったい、何が…」
周囲を確認しようとする俺の顔に、木の上から何かが落ちて来て張り付いた。
顔に張り付いた何かをはがそうと手を伸ばすが、その手にも違う何かが張り付いている。
透き通った青いスライムが、俺の顔や体中に張り付いている!
そして、木の枝の上に何体ものスライムがいる。
透けた体を通して見た向こう側。
倒れたライムに四方八方から群がってくる無数の赤や青のスライム。
やめろ!
そう思うが、息が苦しい。
誰か、誰か助け……




