生き残りの戦士
前にスライムの森に侵入してきた人間の視点になります。
俺の名はクランク。
”ミリンダの酒場”所属の戦士だ。
魔法は使えないが、ちからと体力には自信がある。
装備は銅の剣と皮の鎧、盾、兜。
平原のスライムやドラキーをソロで狩って生計を立てている。
もう、あんな雑魚どもの攻撃ではダメージは受けないし、何しろコアを売っても大した稼ぎにならない。
そろそろ、平原は卒業するレベルか。
そんな話を酒場でしていたら、マスターが「戦士の募集がある」と教えてくれた。
魔法使いのローズと、僧侶のリリー。
名前も顔も知っているが、パーティを組むのは初めてだ。
俺よりもレベルが一つ程度高いからって、俺を見下しているのは腹立たしいが、まあいいだろう。
僅かな時間の話し合いで、スライムの森に行く事になった。
森の中も平原と変わりなかった。
スライムとドラキーしかいない。
俺にダメージを与えるモンスターはいない。
あの女どもはどんくさい。
俺よりもレベルが高いのならば、ほっといても大丈夫だろう。
俺は一人でモンスターをなぎ倒し、先へ進んだ。
岩場に出てスライムどもを蹴散らしていると、なんとメタルスライムがあらわれた。
生意気にも俺の顔にメラを当て、俺を“のろま”と挑発してきた。
いいだろう、お前は俺の獲物だ。
あの女どもにも譲らん。
俺は夢中で追いかけた。
走って、走って、走った。
微かに見えるメタルスライムの影を追っていたが、追いつけない事を悟った。
仕方がない、あのバカ女どもと合流するか。
しかし、ここはどこだ?
どれだけ走ってきたのか、わからなかった。
夢中でメタルスライムを追って森に入り、自分がどこにいるのかも不明だ。
少しだけ、怖くなってきた。
いや、道に迷ったからだけではない。
なにか、嫌な予感がする。
向こうだ。
あの大きな木の向こうから、微かに音が聞こえる。
俺は木の影から、そっと覗いた。
魔法使いが倒れている。
顔にスライムが張り付いている。
僧侶が近くにいるが、空飛ぶスライムの攻撃を防御している。
助けに行こうと思った。
だけど……
雄たけびを上げて、飛び出そうと思うのに、体が動かない。
動けない。
しかし、その光景から目が離せない。
倒れたままの魔法使い。
僧侶の顔に張り付くスライム。
全てが一瞬の出来事のように思えた。
倒れて動かない二人を、ジワジワと蝕んでいくスライムたち。
体を溶かし、分割して、その透き通った体内に取り込んでいく。
俺の知っているスライムとは違う。
見た目は一緒だが、違う。
「逃げるんだ」
そんな声が、頭の中をグルグルと回っている。
気が付いたら、俺は走っていた。
全力で、街まで走った。




