End of the world today !?
「いよいよ終わりが近付いている。さぁ、どんなエンディングになるのか、一緒に見ていこう。」
彼はそういって、いつものように本を開いた。
ウィルは今度こそ目を覚ますと、目の前にはボロボロになって倒れているシャーディックが居た。
_ 攻撃は通用すると、強くイメージする _
ウィルは本を自分の魔力を使い、本を召喚させる。
「ウィルくん……!」
シャーディックの微かな声が聞こえた。
彼の後ろには、今からトドメを刺そうとするピノキオがいた。そいつに狙いを定めたウィルは、本を開いて爆発魔法を発動させた。
派手な爆音と少しの衝撃波が辺りに渡る。爆煙から現れたのは、黒焦げでピクピクと微かに動くピノキオの姿だった。
「…! ほんとに効いてる!」
同じく本から剣を取り出し、そいつにトドメとして横一閃に斬ると、真っ二つに別れたピノキオの影が風に吹かれた灰のようにして消えていった。
「なんだって…!? ウィルくん…気絶したら覚醒したのかい…!?」
シャーディックが片腕を押さえながらなんとかウィルの元に来ると、そう言った。
「違うんです! 『あいつらに攻撃は通用する』ってイメージするんです!」
「……?」
当然何を言っているのか把握することは出来ないだろうが、実際に目の前でピノキオを倒すことができた。シャーディックはそんな彼を信じ、ライフルに弾を充填した。
「あいつらは倒せる……あいつらは倒せる……!」
彼は目をつむり、自分に言い聞かせるように何度も呟いた。
そうしていると、後ろからおおかみが襲いかかってきた。先程の爆音につられたのだろう。
素早い動きである程度まで距離を縮めると、ジャンプしてシャーディックを襲う。
「お前らは倒せる!!」
大きな声でそう言って引き金を長押しした。何度も銃口から火が吹かれる。食らったおおかみは空中から脱力して倒れる。体には弾丸に貫かれたことによってできたであろう穴が多数見られた。だが空想のキャラクターなだけあって流血はない。ただ穴の周りにヒビがあるだけだ。
近くまで寄って追い討ちをかけてやろうかと思ったが、それも叶わずに消滅した。
「…なるほど、そういうことだな…!」
シャーディックの表情が晴れた。突破口を教えたウィルの頭をポンポンと撫でると、お礼を言った。
「僕は主犯となる人物を知ってます…! ここを攻めてきたということは、恐らくどこかにいるかもしれないので探してきますね!」
「了解、こちらは仲間と民間人の救出、及びバケモンの退治だな…!」
「お願いします!」
「任せろ! “move”!」
ウィルとシャーディックは背中合わせになり、それぞれが見る方向へと走っていった。ボロボロだが、恐らくシャーディックは大丈夫だ。ウィルは彼を信じて進む。
辺りを見渡してヴィンセントを探す。彼は多くの兵士を引き連れて自身の目の前に現れた。ということは、フェイクキャラクターとの遭遇頻度が高くなればなるほど彼がいる確率が高い。なんせフェイクキャラクター自体に知能はないハズだ。ゆえに、奴らが動くにはヴィンセントの指示が必要不可欠だ。
広範囲に渡って索敵魔法を使用しながら走る。索敵魔法を使うことによって遭遇頻度を見るためだ。倒せばそこに奴らは集まって来るだろうから、可能な限りバレないようにして通過する。
そうして先を急いでいると、次第に遭遇頻度が高くなっていくのが分かった。恐らくこの先、いや、確かにこの先にいる。何故なら、索敵魔法によって陣形が組まれていたことが分かったからだ。
荒廃としたビル街…そのシンボルマークとされる程に存在感がある“セウフィトツリー”に彼はいた。
「ヴィンセント!!」
ウィルの声に気付いた彼は見下すようにして睨んだ。
「どういうつもりだ! こんな騒ぎを起こして!」
「言っただろう…。俺はここに存在する確かな証拠が欲しいんだよ……。俺は空想の世界に生きる奴とは違うんだ…。」
「そんなことのために…!」
「そんなことだと…? フッ…現実世界に住むお前たちには分からないだろうな!」
ヴィンセントの周りに氷のつぶてが現れると、それが鋭利になってウィルを捉えた。
「…来るなら来い…!」
バッと本を開いた瞬間、それが彼をめがけて飛んできた。
「サイクロスト!!」
唱えたのは竜巻魔法で、それはカマイタチを纏っている。つまり、とんでくる氷のつぶてはそのなかで砕け散るのだ。
「邪魔する奴は死ね…!」
ヴィンセントは自身が愛用するレイピアでウィルを襲う。
彼も剣で応戦するが、腐っても王子であるヴィンセントには敵いそうにない。
「素人のキサマとは違う! 俺がキサマなんぞに負けるわけがないだろう!!」
何度も攻撃を仕掛けようとするが、その度にレイピアで弾かれる。立ち回り方も軽やかで、ウィルの斬撃をスルリと避けては打撃を与えてくる。剣の技術の量も質も違うため、分が悪い。
ウィルは本を開き、牽制魔法を発動させて距離をとる。
「ふん…!」
ヴィンセントはすぐに体制を立て直すと、レイピアを払ってから構えをとった。
「そんなものか?」
「まだ…僕には魔法もある!」
衝撃を与えるだけの牽制魔法を3発ほど発動させるが、ヴィンセントはその光の弾をレイピアで砕いた。
だがそれは囮だ。そこに隠されていた電撃魔法が鉄と接触したことにより、身体中に通電し、麻痺させた。
その隙を見て剣を突き出したが、それでも攻撃を避けられた。
「なっ…!?」
「ふん…!」
その上、レイピアを一振りさせて麻痺を回復させたのだ。ウィルは改めてとんでもない奴と戦っていたことを思い知らされた。
「この世界ももう終わりだ…。ここからは俺が統治する世界が始まる…。キサマはそれを見ることなく、ここで俺に殺されるがな…!」
ヴィンセントはそう言って牽制魔法を放った。ウィルはモロでそれを喰らってしまい、膝から崩れそうになる。
「俺の邪魔をした罰だ。この世で最も過酷な死を与えてやろう。」
精練された魔法技のようで、立ち上がることも出来ない。彼の持つレイピアの先がウィルを捉えた。
「死ぬがいい。」
ヴィンセントはニヤっと笑ってそう言った。
防衛軍はシャーディックの情報を上手く活用してフェイクキャラクターたちを駆逐していた。しかしそれでも強力であることには変わりはない。
「何故こんなにバケモンが…!?」
ライフルを撃ち続けながらシャーディックは言った。だが考える時間がないのも確かだ。可能な限りヘッドショットを狙っていくが、それが通用しない奴もチラホラいる。その度に苦戦を強いられてしまう。
「くそっ!」
一人で辺りの民間人を救出していたシャーディックは、ついに弾丸が尽きてしまった。
「………!」
空になったライフルはもはや使い物にならない。頼れるのは45経口のピストルだけだ。それもできるだけ節約しなければならない。ライフルを棄てて先を急ぐが、運悪く複数のフェイクキャラクターに囲まれてしまった。
ここで自身の最期を悟った彼は、決死の覚悟で銃を構えた。
「ウィルくん……みんな……すまない…!」
そう言った瞬間、フェイクキャラクターが次々と消滅した。
「オラァァァァァァァ!!くらいやがれええええ!!」
空を浮かぶ巨大な船、そしてその穂先に大柄の男が突っ立っていた。恐らくはそこからの攻撃だろう。一体あれは……?
「暴れてやれ、お前らァ!!」
大柄の男が大声でそう言うと、船から数えきれない程の船員たちがロープを使って降りてきた。
大柄の男…彼の名は“キャプテンねこちゃん”。
そう、彼はグロアが創ったキャラの一人であり、ねこちゃんの仲間だ。
「キッド!行くぞ!!」
キャプテンがそう言うと、半透明の人影が現れた。
『yes,sir!』
□ 一方…
「パンダソードパニッシャァァァァア!!」
技名を叫んでフェイクキャラクターを蹴散らす白黒のぬいぐるみ…“パンダねこちゃん“だ。
ある程度片付けると、やれやれと首を横に振ってたけのこを丸かじりした。
背後から取りこぼしの敵が襲ってきたが、真っ直ぐに飛んできたクナイが頭蓋に刺さり、すぐに消滅した。
「シノビねこちゃんさー、怖すぎるよー。」
呑気にたけのこをボリボリと頬張る彼の目の前には、“シノビねこちゃん”と呼ばれたとおり、忍者のように顔を隠した者がいた。
「ふん…。」
彼はすぐにその場を去り、民間人の救出にあたった。
「死ぬがいい。」
ヴィンセントはニヤっと笑ってそう言った。
しかし、どこからか飛んできた剣が彼の手からレイピアを離した。
「なにッ!?」
地面に突き刺さった剣を、持ち主と思われる者が引き抜き、ヴィンセントの首元にその先を向けた。
「待たせたね、ウィルくん!」
金髪で猫耳の生えた中柄の者…何故か分からないが、ウィルは彼がねこちゃんだと分かった。
「助けに来たよ!」
幻実の本 #8 End of the world today !?
「ぬいぐるみが人になる…面白いよねぇ…!」
「僕も彼らとはしょっちゅう会ってるんだよ! たくさん面白い仲間たちがいてね…!」
彼はそう言ってねこちゃんたちの話を続けた。
「…………さて…次回とそのつぎで終わりだね…! 僕の話に付き合ってくれてありがとう!」
爽やかに笑むと、本をそっと閉じ、それを本棚にしまった。




