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英雄之仮面 幻実の本  作者: 中川 はじめ
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7/10

will change the fate of this world !!

「さて、もうそろそろこの話も終わる。……もう語ることはないよ…。」

「強いて言えば、君にはこの話を通して…でなくてもいい。夢を持つことについて考えてほしい。」

彼は本を開き、話の続きをし始めた。

街……いや、もはやセウフィト国全体が混乱の渦にある。

ヴィンセントがこの現実世界で何をしようとしているのかは不明だが、見る限りでは破壊を尽くしているだけのようだ。

セウフィト国の大統領は、この前代未聞の状況に困惑しており、テレビでは記者の質問に曖昧な回答しかできなかった。そんなことは当たり前だろう。なんせ現代武器では歯が立たず、それを上回る魔法系の武器や攻撃を以てしても敵わないのだ。

このまま人類は空想上の人物たちによって滅ぼされるのだろうか。


□ ヴィンセントの襲撃より14日後……


ウィルや、その他の残された人たちは廃墟となってしまった建物を転々としながら、ヴィンセントらから逃れていた。自衛目的の特殊部隊が機能しているところから察するに、どうやら国はまだ抵抗をしてくれているみたいだ。

彼が愛用していた“本”も既にボロボロだ。あとどれくらいもつかも分からない。そんな状態のそれを、彼はただ寂しそうに見つめて撫でる。

廃墟となってしまったビルの壁にもたれかけた背中には、じんわりとその冷たさが伝わってきていた。

ぺたんとお尻を床につけ、休憩時間を満喫する。

「やぁ、何しているんだ?」

そう声をかけてきたのは、以前助けてくれた軍所属の男性だ。

あの時は余裕が無かったが、今聞くと低くて渋く、まぁすなわちは良い声だ。

男の人がつけている防弾チョッキはボロボロで、所々に切傷があった。それに焦げている。右腕の力こぶには白の包帯がぐるぐるに巻かれており、赤色が滲んで見えている。この人のお陰で、ウィルは助かった。

「えっと……。」

ビックリして目が泳いだ。キョドっている彼の隣に、その男は腰かけた。

「随分とぼろっちぃ本だな…? こんなになるまで読んだのか?」

その男は彼の持っていた本を見てそう言った。

「………えへへ…愛着ってやつです…。」

「…フフッ……だろうな…。」

男は笑った。

「俺はシャーディック・マカロフ。君は?」

「ウィル・ハワードです。」

「ウィルくん…か…。 良い名前だな。」

「マカロフさんこそ…。」

「シャーディックで良いぞ?」

「……シャーディックさん…。」

初めて外界の人間と話す。それが嬉しくてつい口角が上がった。

シャーディックは持っていたライフルからマガジンを抜きとり、レバーを引いて中にあった弾丸を取り出した。

「民間人と話すときはこうしろって、うちの隊長がうるさいのさ。」

彼は冗談混じりの言葉を話すような口調でそう言った。

「…でもいざって言う時に大変じゃないですか…? 急に弾丸を込めるなんて……。」

「ああ。全くもってその通りだよ。でもほら。」

シャーディックは振り向き、後ろで見張りをしていた兵士たちをアゴで指した。

「健康な仲間たちが、その“いざ”ってときに備えてくれているんだ。むしろ手負いの…俺みたいなのがこうやって民間人と話して安心させているのさ。」

ウィルにそう話すと、遠くで若者が大声を出した。どうやらその心遣いが、かえってうっとうしいらしい。

「……“人によりけり”って言葉、知ってる?」

それを見たシャーディックは、そんなジョークを言ってウィルを微笑ませた。


翌日の早朝。

ウィルは眠っていたところをシャーディックによって叩き起こされた。

何があったのかを聞いたら、どうやら空間が歪み始めているのだという。

「………空間がって…どういうことですか…!?」

眠気で半開きだった目がパチリと開き、確かに今自分の耳に入った情報を疑った。

急いで外の景色を見に行くと、確かに空が湾曲しているように見えた。それはいつもアーサー姫とやっていた、物語の修正…フェイクエンディングの消滅と同じ光景だ。

「何が起こっているんだ…!?」

シャーディックがライフルに弾を充填して構える。

「……もしかしたら……。」

現実世界に“エンディング”はない。だがそれは、あくまで人の“想像上の話”だ。この世界にもエンディングはある。いや、正確には…人類の終わり…。

「…! 下がれ!」

シャーディックがその場のみんなにそう言った瞬間、天井が爆発して瓦礫が落ちてきた。

ウィルは何とか助かったが、助からなかった人はその下敷きになっている。

初めて見たその光景に、思わず嗚咽した。

瓦礫の向こうでは、発砲音が止めどなく鳴っている。

「くそっ! 誰か助かっている奴は居るか!?」

今まさにそこで戦っている兵士、シャーディックは、銃を撃ちながら生存者の確認をした。ウィルはハッとして彼に返事を返す。

「良かった! 早く逃げろ! “奴ら”だ!」

「でも! シャーディックさんが!」

「大丈夫! 早く行け!」

ウィルは彼を信じて出口を目指して走った。

部屋を出て廊下を走り、階段を降りてまた廊下を走る。そうしてやっと着いた扉の奥には、フェイクキャラクターがさ迷っていた。

ウィルは本を開き、そこから剣を取り出し、そのまま扉を蹴り破って斬りかかる。

案の定、その攻撃は相手に効いていないようだ。

相手は恐らくピノキオだ。鼻をぐんっと伸ばして胸部のど真ん中を突かれた。あまりの苦しみに呼吸が止まり、全身の力が抜けてしまった。

剣が地面に落ちる音がした後、視界がだんだん暗くなっていき、気を失った。


ある程度の時間は稼げただろう。

シャーディックは急いで下に降りることにした。瓦礫の後ろの道以外で地上に戻ることは難しい。彼は正面にいる竜に銃口を向けたままさっさとその陰へ回り込むと、一気に走り出す。3ヶ所の階段を降りて一階に戻ると、そこで目に入ったのは膝から崩れ落ちるウィルの姿だった。

「ウィルくん!!」

スモークグレネードのピンを引き抜き、ウィルの前に投げ込む。狙い通りの場所に落ちると、カシュッと音がして黒い煙が立ち上ぼり始めた。

鼻の長い化け物がウィルを見失っている間に、シャーディックは急いで彼の体を担いでその場を離れようと走る。しかし、もう一体…ケルベロスのように頭が3つに分かれているバケモノがそんな彼の後を追ってきていた。

「くそっ…!!」

ハンドガンを構えて撃つが、被弾しても怯むことなく追ってくる。

「………!」

得体の知れない物との戦いは、彼に恐怖を与えるに充分だった。一体何故、攻撃が効かないのだろう? そんなことは考えても無駄だ。彼はひたすら、気を失ったウィルを運んでできるだけ遠くへと走っていく。


ふと目を覚ますと、辺りは何もない空間にいた。

ウィルは上体を起こしてこの状況を理解しようと試みたが、それは不可能だった。それもそのはずだ。ここは何もない。手がかりになるものも、そうなりそうなものも何一つないのだ。ただ分かるのは、地面が大理石素材であることだけだ。

「ウィルさん。」

後ろから聞こえたのは、聞き覚えのある声だった。振り向くと、そこに立っていた…いや、浮いているのは、ディファーグさんだ。

「……ここは?」

「魔法によって作られた、いわゆる意識の中でございます…。」

「意識の……中……?」

「左様…。」

ディファーグさんの肩には、またあの黄色のねこのぬいぐるみがいた。

「現実の世界は今、ヴィンセントの手によって空想の世界との融合が始まっておられます…。…ゆえに、彼らと対抗するには、想像力や、認知が鍵となります。銃や魔法が効かないと認知してしまえば、その者たちに攻撃は通用しなくなってしまうのです。」

「……でも、最初に魔法を使ったとき通用しなかったような……。」

「本当にそうでしょうか? 『通用しない』と認知させるに充分な“光景”や“出来事”、確かにございませんでしたか……?」

ウィルが思い出そうと頭を働かせ始めると、突然本棚が現れた。

「…え?」

「ここは意識の世界…人の記憶は本となり、この本棚に収められる…と言いましても…あくまでも『あなた様のイメージでは』…の話でございますが…。」

記憶を辿ろうとすると、自然と体が動き始める。そして1つの本棚の前に立つと、そこから一冊の本を取り出した。すると、頭の中からとある光景がよぎった。


___ 。

目の前に広がっているのは、フェイクキャラクターらと警察が戦っている場面だ。

赤ずきん、おおかみ、シンデレラ…今まで戦ってきたそれの他にも、鼻が長くて狂人のような表情をした木の人形…ピノキオや、上半身が2つに分かれ、それぞれが老人と若者になっている男…恐らくその服装からしても浦島太郎等がいた。警察らは牽制魔法や、銃で応戦しているようだが、それでは倒せない。

___ 。


「思い出されましたか…?」

ディファーグの肩にいたねこちゃんは、地面に降りていた。

「攻撃は通用する…そう強くイメージすることが、この事態を打破するための鍵へとなりましょう……。」

ウィルはディファーグにそう言われると、強く頷いて返事をした。

「着いてきて!」

なんと、足下にいたねこちゃんが喋った。その事に驚いていると、ディファーグはクスクスと笑った。

ウィルはそんな彼に一例し、ねこちゃんの後を着いていった。



幻実の本 #7 will change the fate of this world !!

「…また次回、楽しみにしてほしい。」

彼はニコッと笑うと、本を閉じた。

もう暗い。私も部屋を後にした。

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