Ⅶ◆王宮到着
すっごく久々です(汗)
読んでくださる方が一人でも居てくれたら幸いです。
よろしくお願いします。
浮遊感を感じ、目を開けると、デジャブな光景。
真上にジークの顔 肩越しにはフィルメス…またもやお姫様抱っこですか。
どうやら、うっかり眠ってしまったらしい。
結構図太い神経してたんだなぁ、私。知らない土地、初対面の男の人の腕の中で安心して爆睡とか…どんだけ。
周りを見渡せば、ついさっきまで乗っていた黒馬が手綱を引かれて厩へ連れていかれているのが見えた。
他にも見覚えのある人達何人かがこちらにちらちら視線を送っていて、何か言いたげにしているのに気が付いて、恥ずかしいというより、居たたまれない気持ちになった。
すぐさま降ろしてもらおうと声を出そうとしたところで、私は硬直した。
ここはどこだ?はい、城です。
すでに敷地内に入ってしまっているために、見上げたところで目の前の建物の外観をすべて把握することは出来ないが、もう、大きさとか蔦も這っていない白い壁とかそんな目に見えるモノではなく、なんかこう…威圧感とか雰囲気?分かります。
あー…、やばい、やばいぞぉ。
不覚にも、移動中眠ってしまったために、身の振り方を何も考えてない。
もういっそのこと、流れに身を任せてしまおうかなぁ…
ジークは全く私のことを降ろす気はないようだし。
フィルメス、目で訴えたところであなたは助けてくれないのでしょうね。はぁ。
意識をあさっての方向へ飛ばしている間に、あれよあれよと裏口っていうか埃なんかを払う屋根だけがあるスペースを抜けて、あっという間に入城してしまったようだ。
すれ違う兵士さんや下働きらしき人達が、ぎょっとしたように廊下の端で固まっている。
そりゃね、裸足の女を抱えた傷だらけ泥だらけの宮廷騎士?が現れたら驚くよね。
加えて、抱えられた女は白Tにグレーのジャージ。ここでは非常に浮いている。
途中、上質そうな衣装を纏ったオジサマ集団ともすれ違ったけど、誰も声をかけてこなかった。
地位のあるの人たちに見えたんだけどな。
城内の風紀を著しく乱しているであろう私たちを咎めるでもなく、目を凝らすまでもなく大怪我の二人を気遣うでもなく。
ただ、ビビってる。
皆、二人の姿や、私のTシャツにべったりついてるジークの血が怖かったのかな?
それは申し訳ないなと思う一方で、良かったなとも思った。
こんな状況でもなきゃ、いかにも不審人物な私がこんな所に入れるはずもないから。
望んで来たわけではないけれど、他に行くあてもない以上、ジーク達についていくのが今の時点で一番安全そうな選択なのではないだろうか。
助けた云々が彼らの勘違いだったとしても、早々手荒な真似はしないだろうし。
入り組んだ王宮(暫定)内をどのくらい進んだだろうか。
ジークがとある扉の前で止まった。
引き戸だったその扉を勢い良く足で開いた。
フィルメスに開けてもらえばいいのに…
部屋に入ると、微かに消毒液の匂い。医務室のようだ。
誰もいなかったけれど、ジークは別段気にした風もなくベットに近づくと、私をそっとそこに降ろした。
「あ、ありがとうございます。」
やっと腰を落ち着けて、ふぅっと息を吐くと、今度はおもむろに足を持ち上げられた。
な、なんっ!
ジークはベットの脇で片膝をついて、じっくりと私の足の裏を検分している。
「傷はたいしたことないようだが、痛むか?」
口調は平淡だが、とても心配くれているように感じられた。
ジークは覗き込むように私の顔を見てくるので、碧の瞳に私が映っている。
な、なんか照れるな。
なんとなく気まずくて顔を逸らすと、ジークがベットに手をつき、おもむろに顔を近付けてくる。
そんな近づいて確認しなくても、足の裏をちょっと切った以外は無傷ですよー?
ジークのつくる影が顔を覆ったその時。
おほんっ!
「なんのために此処まで連れて来たの?感心しないな。」
フィルメスが呆れたようにこちらを見ていた。
ジークはそれに返事はせずベットから離れると、フィルメスがいつの間にか手にしていたガーゼと茶色い瓶をひったくった。
それから再びベット脇にくると、瓶の中身を染み込ませたガーゼで私の足の裏を丁寧に拭ってくれた。
こんなことしてもらっちゃって申し訳ないなと思いつつ(どうせ離してくれないから、もう抵抗とかしないよ?)
ひんやりして気持ちいーなんてのほほんして、はっとした。
「二人とも大怪我ッ!!」
そうだ、そうだったっ
おいおい、こんなことしてる場合じゃないよ!
二人がピンピン動いているからうっかりしてたけど、早急に治療しなきゃでしょ!?
ジークさん、私のことなんか放っておいて、まず自分のこと心配しようか!
内心アワアワしつつ、取りあえず足を離してもらおうと必死になって足を引き寄せる。
「離してください!
私は大丈夫ですからっ!あなたの方がよっぽど大丈夫じゃないですって!
今は、きっとまだ興奮してるから痛みに鈍くなっているだけなんですよ。
失血だってたくさん…」
「問題ない。傷口も塞がっている。」
「今は血がでてなくたって、そんなの!
いつまたパックリ傷口が開くか分からないじゃない!」
「まぁ、そん…」
「フィルメスさんもですよ!
つっ立ってないで、ベットに横になってください! 」
さぁ、早くっ!!
と、やや興奮して大の男二人を怒鳴りつけていると、バタバタと数人分の足音が聞こえてきて、ばあんっ!!と扉が開いた。
「おぉ、お怪我を……っ」
白衣のを着ているので医師のようだが、全員走ってきたようで、息も絶え絶え。
言葉をうまく紡げないようだ。
その様を見ていたフィルメスが、片手を頭に乗せて苦笑いする。
「せっかく迎えに行ってくれたのに悪かったね。
すれ違ってしまったようだ。」
「いっいえ!
それよりも、早速治療を。
現地では、手当てもせずにこちらへ戻られたとの事。
いくら貴方様がたでも、それほどまでの怪我では見過ごせません。
さぁ、こちらに。」
復活した医師たちが、手早く寝台と器具の準備を整え、二人を促す。
さすがに医師には逆らえないのか、ジークも手を離して、大人しく指示にしたがった。
うん、よしよし。これでひとまず安心だ。
あ、お気遣いなく。
私は部外者ですから。
…っあ